Special 鼓童「いのちもやして」 池永レオ遼太郎&米山水木 インタビュー

太鼓芸能集団「鼓童」が アーラに再降臨! 「いのちもやして」日本ツアー

佐渡島を拠点に、太鼓と共に世界を旅する「鼓童」が2016年 月「ワン・アース・ツアー~螺旋」以来、7年振りにアーラのステージに登場。今回の「いのちもやして」公演の演出を手掛ける【池永レオ遼太郎】(1990年生)とクライマックスの大太鼓奏者を女性で初めて務める【米山水木】(1994年生)にお話を伺った。

-可児市での公演は、当時芸術監督だった坂東玉三郎さんが演出を手掛けられた「螺旋(らせん)」以来になります。あの時、池永さんもメンバーのひとりとしてアーラの舞台に出演されたとか。

池永 あれは創立35周年を迎えて(二重らせん構造の)DNAを受け継ぐように、過去から未来へと螺旋を描きながら進化する「鼓童」をテーマに、これまでに演奏してきた曲の数々を辿るという特別な公演でした。当時は新人でとにかくがむしゃらに殆ど全ての演目に出させていただいて、すごく勉強になった記憶があります。

-そんな池永さんが、今回は演出を担当する立場で戻って来られるのですね!

池永 責任重大ですが、自分としては、一方的に考えを演者に押しつけていくのではなく、お互いの対話を大切にみんなで一緒にひとつの舞台を作り上げたい。それと玉三郎さんのように固定観念を思い切って打ち破るような、チャレンジ精神を常に持ち続けたいと思っています。

-本公演の「いのちもやして」というテーマについて教えて下さい。

池永 やるからには自分らしい、自分にしかできないようなメッセージ性を持たせた作品にしたいと思って題材を探していて、改めて私たちが太鼓を叩く意味について考えてみたんです。もちろん、伝統的な音楽芸能に可能性を見いだして再創造を試みるとか、太鼓で世界中を旅していろんなアーティストとのコラボで「ワン・アース(ひとつの地球)」の文化を響き合わせる…といった芸術的探究という目的もありますが、特に近年はパンデミックや戦争の前で音楽の無力さを思い知らされて、音楽家であることを自問自答することもあって、壁にぶつかったり悩んだり不安に苛まれながら太鼓と向き合うことも多かった気がします。それでもバチを握り続けることをやめなかったのは、やはり太鼓を叩くのが純粋に楽しくて、そこからポジティヴなエネルギーを感じる事ができたから。2021年春、ヨーロッパツアー中にロシア公演がなくなって、バルト三国のエストニアに滞在していた時でした。ウクライナからの戦禍の避難民の皆さんを前に演奏する機会があって、結果的にかなり喜んでもらえたんですね。それでこの先どんな世の中になっても、もしも僕たちが太鼓を叩く事で誰かの希望の灯火になれるのだったら、本当に生命をかけてもやる価値があると実感したことを想い出して。とにかく音楽の力を信じて愚直なまでバカ正直に、明日のために叩き続けるような太鼓を舞台で表現できたらいいなと思ったのです。

-公演チラシなどで目にする、大太鼓を叩く米山さんをセンターに据えたヴィジュアル・イメージがとてもカッコイイです。ズバリ、大太鼓奏者に抜擢された感想は?

米山 鼓童の伝統として、最後は「締め込み」姿の男性が大太鼓を叩いてから屋台囃子でフィナーレという流れが常套で、私自身もいつもそこに感動していましたし、大太鼓奏者と言えば、藤本𠮷利、齊藤栄一、見留知弘、中込健太…と錚々たる面々が名を連ねるいわば花形。できれば”女性が”という言葉は使いたくないけれど、これまでに女性が叩いた先例はなかった。だから今回、遼太郎から「やってみないか?」と依頼された時は正直驚いたし、自分に務まるかなという戸惑いもありました。でも2018年の住吉佑太演出「巡 -MEGURU-」公演の時も、男性的な三宅太鼓のスタイルで打つ演目に抜擢されて、女性的な見せ方を研究できたので、今回も筋肉的な力強さだけでなく、女性ならではのしなやかで凜とした強さや美しさが表現できたらと思っています。それにそもそも私、鼓童に入団した時からパワー系の太鼓をがんがんやりたいっていう野望を持っていたのです(笑)

池永 単純に彼女の叩く大太鼓が見てみたいと思ったんです。アメリカ生まれの自分から見ると、日本の伝統芸能の世界ってまだまだ男性優位で女性に対して開かれてない部分があるのを感じて、そういうのをぶっ壊したくて、でもだからといって女性なら誰でもいいというわけではなく、水木なら適任だしそれをやってくれると確信しています。

-米山さんに大いに期待しています。どんなアプローチで挑みますか?

米山 技術を磨くのも大切ですが、やっぱり先ずは体力。10分くらい全力で打ち続けられるような身体づくりを目指します。後は大太鼓奏者に相応しい”オーラ”をどのように身につけていくかが課題ですね。歴代の先輩たちのような、あの”背中で語る”凄みに負けないようにしっかりと励みたいと思います。

-大太鼓は今回もクライマックスに登場しますよね?

池永 内容についてはこれから具体的に詰めていくのですが、少なくともこれまでの男性奏者とは違うお題目にしたい。最後に彼女が大太鼓を打つ必然性が感じられるような流れを考えたいと思います。みんながそれぞれ持っていた葛藤や迷いがすべてそぎ落とされて、純粋な気持ちで太鼓と向き合う象徴のような存在になるような。

米山 女性の大太鼓奏者が最後を飾ることに対して、もしかしたら賛否もあるかと思いますが、何を言われたとしても私は太鼓を叩くのが大好きで、これが私の生き方だって胸を張れます。このパフォーマンスを通して皆さんに元気を与えることができたら嬉しい。そのために「いのちもやして」頑張ります!

取材/東端哲也 協力/フリーペーパーMEG

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