『えがおの劇場』について今一度考える

2023年6月1日

可児市文化創造センター館長 篭橋義朗

 昨年、2022年4月号の館長エッセイで「えがおの劇場」について書きました。そのなかで「人それぞれが喜びや悲しみを抱いて生きていく中でそれらを乗り越えた後の微笑み、悲劇や悲しい音楽を鑑賞して涙を流し、癒された後の微笑みを浮かべられるようにアーラは寄り添っていきたいと思います。そのイメージを『えがおの劇場』としたいと思います」と申し上げました。今もその想いに変わりありませんが、今コロナ禍というトンネルを抜け、感染症対策も緩和されたことを考えると一層その思いを強く感じます。そして一日でも早く穏やかで温かい風が吹く住みよい可児市になるようなきっかけをアーラから発信したいと思います。アーラではそのような風を吹かせるためのたくさんのプログラムを展開して、生の音楽や演劇に触れてもらいたいと思います。


 そんな折、「AI(人工知能)で論文が書ける、ラブレターが書ける、俳句や短歌が詠める、そんな時代が来た」という報道がありました。たしかにコンピューターに過去の人間の膨大な言葉の蓄積を覚えさせれば、その言葉の組み合わせでよい文章が書けるのかもしれませんが、そんな文章に私たちは心を動かされるのでしょうか。味気なく情けない気持ちになるのではないでしょうか。そのように考える旧来型の人間としては、これからAIが発達して人間の思考を代弁することが日常となったとしても、心や感情をもつ生きた人間だからこそ創れる文化を育てていかなければならないと思っています。


 私が掛け声をかけているだけではなかなか動いていきません。そこで先月号から館長エッセイを隔月にして、「劇場から地域を元気に―劇場の『えがお』人」というコーナーを新しく始めました。今後、私に代わって、アーラ職員の事業に取り組む思いや、共に盛り上げてくださっている市民の『えがお』人をご紹介していきます。アーラの事業を市民の目線から語っていただく貴重なコーナーですので、アーラで今何が起きていて、どんなひろがりを見せているのか、リアルな言葉でお伝えできると思っています。ぜひこちらもご覧ください。