Special ニューイヤー・コンサート2023 指揮者 角田鋼亮インタビュー

ワルツ&ポルカだけじゃない、 名作映画の楽曲を贅沢に 盛り込んだプログラムで 新年を祝う!

2023年の幕開けも名曲と共にスタート。今回は近年活躍めざましい若手指揮者の角田鋼亮がアーラに登場。定番のJ・シュトラウス作品に加えて、映画音楽の巨匠J・ウィリアムズやジブリでお馴染み久石譲の作品と共に新年をお祝いします。

-東京藝術大学とベルリン音楽大学で研鑽を積まれたとのことですが、もともと愛知県のご出身なのですね!

生まれて間もなく父親の転勤で東京に住むことになったのですが、小学校3年のときにはこちらに戻って来て、それから高校まで多感な時期を愛知で過ごしました。2019年からはセントラル愛知交響楽団の常任指揮者としてまたお世話になっています。

-子どもの頃に、小澤征爾さんと出会ったのが初めてのオーケストラ体験だったとか?

小澤さんが子どもたちを招待した演奏会に母が応募したら当選して、オーケストラが新日本フィルだったかどうかは定かではないのですが、ヴィヴァルディ《四季》の「夏」を聴いたのを憶えています。誰かが「蚊が飛んでいる様子みたい」って感想を言ったのを聞いた小澤さんが「それ面白いね、じゃあ今度は本当に蚊が飛んでるみたいにやってみようか」って音色を変えて演奏してくれたのが面白くて音楽って凄いなと思い、それからオーケストラに興味を持つようになりました。

-これまで沢山のオーケストラを指揮されていますが、ずばり新日本フィルの魅力は?

とても純度の高い室内楽の延長のようなオーケストラでアンサンブルが美しい。個々のプレイヤーに個性がありつつ、集結力や一体感にも優れている。古典を積極的にとりあげていた伝統があって、それがベースになっているのも強みで、大編成の時に活かされていると思います。何より、楽団の雰囲気がいい、皆さんクリエイティヴですし。ニューイヤー・コンサートを三重県文化会館で一緒にやった時も、祝祭的なムードでみんな自然と笑顔になって自分も純粋に楽しめました。

-さて、ニューイヤー・コンサートといえばヨハン・シュトラウス2世のワルツやポルカが定番ですが…

シュトラウス・ファミリーは指揮者としてのセンスが問われるので実は一番、難しい作曲家かもしれません。優雅さだけでなく、しっかりとしたリズム感やテンポ感が求められる…やはりダンス・ミュージックですから。もちろん軽く雰囲気だけでは取り扱えないし、ウィーン・フィルによる恒例のコンサート中継を始めとして、世界中のオーケストラや指揮者と比較される、モーツァルトなどと同じく指揮者を判断する試金石のような音楽です。しかも沢山の作品があって、ワルツはワルツらしく、ポルカはポルカらしく、同じポルカでも例えば今回演奏予定の〈トリッチ・トラッチ・ポルカ〉のようにご婦人の賑やかなお喋りを表現(※トリッチ・トラッチは日本語のペチャクチャに近い意味)していたり、と様々なエピソードがあって、それらをしっかり聴衆に伝えられるかが大切になってきます。

-加えて今回は前半のジョン・ウィリアムズ作品も目玉ですね。今や映画音楽シーンにとどまらず、ベルリン・フィルもウィーン・フィルもこぞってとりあげる、王道クラシックの作曲家ではないでしょうか。

自分も映画音楽を扱う感覚では指揮しないですね。とにかくJ・ウィリアムズが大好きなんです。彼の優れた表現力にいつも圧倒されます。宇宙や恐竜から草や土の匂い、初めて恋した時に感じるときめきまで、幅広い現象や感情を描き出すあの素晴らしさ。

-スピルバーグ監督との黄金コンビも圧巻ですね。

スピルバーグ映画も好きです。SFや娯楽大作から歴史的、社会的なヒューマン・ドラマまでテーマも壮大。例えば『ジュラシック・パーク』も単なるパニック映画ではなく、神の領域に手を染めるテクノロジーなど行き過ぎた人類へ警鐘を鳴らすメッセージが込められていたりするので見応えがある。そのあたりの熱い スピルバーグ愛 や ウィリアムズ愛 は、演奏の合間のトークでぜひ語りたいと思っています。

-『スター・ウォーズ』のテーマも楽しみです。

ワグネリアン(※ワーグナーのオペラ大好き)の自分としては、あの壮大な物語は《ニーベルングの指環》に重ね合わせられる。ライトモチーフ(特定の人物や状況などと結びつけられ、繰り返し使われる短い主題や動機)の使い方など音楽面でもワーグナー的ですし。

-おまけに、前半には日本が誇る久石譲の作品もあります。

久石さんといえば特に新日本フィルとの結びつきが強いので、逆に自分が楽団の皆さんに教えられることも多いのではないでしょうか。『となりのトトロ』は世代を超えて人気のある作品なので、今回のニューイヤー・コンサートはこれまであまりクラシックの演奏会に足を運んだことのない人にも興味を持ってもらえそうですね。そういう意味で入門編としてもぴったりのプログラムです。

-ワルツやポルカなど伝統的な部分はしっかりと守りつつ、若い人やファミリー層にもクラシックやオーケストラ・サウンドの魅力に触れる素敵なきっかけになりそうです。

映画音楽をフル・オーケストラで演奏するとこうなるんだ! とか、あの音ってこんな楽器が出しているんだ!とか、きっといろんな発見ができるはず。年の初めからお祝い気分たっぷりにお届けするコンサート。アーラで皆さんをお待ちしています。

取材/東端哲也 撮影/中野建太 協力/フリーペーパーMEG

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