日英国際交流事業「To see you, at last」プロジェクト 2019

先行きが見えない社会に不安や孤独を抱えている若者たちが多く存在しているのは、日本だけでなくイギリスも同じ

これは日英の若者について話していた時、英国リーズ・プレイハウス(LP)のアレックス・フェリスさんが言った言葉です。アーラとリーズ・プレイハウスは2015年に劇場提携を結んで以来、日英共同制作公演を目指し、多くの意見交換を行ってきました。そんな中から、日英の若者たちが自身を取り巻く環境に目を向け、演劇を通じて自分たちの居場所や希望を見出す、「To See You, At Lastプロジェクト」が生まれました。

これは、日英それぞれの国でさまざまな家庭環境にある若者を集め、自国で小品を創作発表し、その後、二つの小品を組み合わせて一つの作品とし、東京、可児で上演するというものです。

本プロジェクトを実施するにあたって、日本チームは豊島子どもWAKUWAKUネットワーク理事長の栗林知絵子さんに協力を求めました。栗林さんは子ども食堂を全国に広め、子ども達の居場所づくりの先駆者として知られる方。栗林さんらに若者たちを影で支えてもらうことで、若者たちが参加できる環境を整え、都内在住の中高生を中心とした6人の若者たちが集まりました。

日本チームの演出は戯曲作りにも定評のある藤井ごうさんに依頼し、作品作りが始まりました。<嬉しい>と<悲しい>をテーマに、若者たちの等身大の言葉がそのまま戯曲に取り入れられ、それを自分たちで表現していく。その楽しさに若者たちはどんどん演劇にのめり込んで行きました。ラジオDJが進行し、“日常あるある”をテンポよく見せたかと思えば、緊張の面持ちでの独白があったりと、会場が思わず笑いそして涙する作品となりました。

一方の英国チームはオーディションにより8人の若者たちが選ばれました。英国チームの演出はこの企画を立ち上げたLPのアレックスさん。若者たちと<出会い>をテーマに、日常のふとした出会いや、友情 愛情の出会い、想定外の出会いなど、心臓の鼓動がリズム化したようなBGMを効果的に駆使した動きのある作品を作り上げました。

そんな作品を携えて、いよいよ英国チームが来日。日英両チームが東京で遂に初対面を果たしました。それはまさにTo See You, At Last<やっと出会えたね>という瞬間。日英の出演者たちは、思春期の若者たちだけに嬉しいけれど、恥ずかしいといった、どこかぎこちない合同稽古の初日。しかし、翌日から本格的な稽古が始まるとみるみる互いの距離感が縮まっていきました。

演劇とは相手とのコミュニケーションで作り上げる共感の芸術。日英の出演者は互いの言葉が通じない分、身振り手振りで何とか相手に思いを伝えようと必死になります。相手側も何とかその思いを理解しようと必死です。<伝える思い>と<理解する思い>その強さに比例して、互いの結びつきも強くなっていきます。それはまるで、自分たちの言葉が通じないからこそ、自分たちで新しい言葉を作っているような、そうやって自分たちにしかできない表現を生み出しながら合同作品が作られていきました。そして、東京での公演、可児での公演を成し遂げ、彼らは強い絆で結ばれていきました。

「ひとりぼっちの私は、私たちになった」

物語のラストに出演者全員で言うセリフ。これは出演者のこれまでを象徴する言葉であり、彼らの未来に向けた希望の言葉でもあります。終演後、ステージ上で涙を流しながら抱き合う彼らに客席からは称賛の拍手が鳴りやみませんでした。この公演が終われば、もう二度と会えないかもしれない。しかし、彼らはもう一人ではない、日本と英国遠く離れていても心でつながった仲間。そんな彼らの姿が、このプロジェクトの最大の成果です。誰かと出会い、つながり、誰かと支え合うことで、人は大きく強く成れることをこのプロジェクトを通して彼らが教えてくれました。

稽古日程
日本チーム 6/6~8/1(計11回) 日英合同稽古  8/3~11(計8回)
公演・会場・集客数
① 日本チームのみ 6/22 ファミリーアーツ・スタジオ 34人
② 合同 8/10 あうるすぽっと3階会議室 75人
③ 8/12(可児) ala・演劇ロフト 82人
講師・演出 アレックス・フェリス、藤井ごう
主催 ala 、LEEDS PLAYHOUSE
共催 あうるすぽっと(公益財団法人としま未来文化財団)
協力 NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク

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