連載 館長 vs 局長	「公共劇場」へ舵を切る その理念と経営の実際

第四十二回 事務局長のひとりごと(9)~公益財団法人化3年度目を迎えて~

可児市文化創造センターala 事務局長 桜井孝治

2014年が幕開けとなりました。本年もよろしくお願いします。
今年の仕事始めは1月5日、この日は毎年恒例となっています“ニューイヤーコンサート”の公演日でもありました。このコンサート、昨年は年始休暇明け2日目の開催でしたが、それでも慌ただしかった記憶が残っています。今年はそれよりもタイトな当日スケジュールです。これからの1年を象徴しているというか暗示しています。私も来館される市民の方に新年のご挨拶をしながらも、舞台準備や事務所の様子が気になります。イメージとしては池の水辺を鳥が優雅に進んでいるように見えるけれども、水面下では足の水掻きがフル稼働といったところでしょうか。
今年最初の公演は、新日本フィルハーモニー交響楽団にソプラノの安井陽子さんを迎え、広上淳一さんが指揮を執りました。広上さんはこれまで私が観た指揮者とはまた別のタイプであり、終始柔和な表情で、時にはご自分も指揮台の上でステップを踏みながら進めていきます。安井さんの素敵な歌声と笑顔も相まって、聴いているこちらも肩肘張らずに楽しめます。コンサートの最後は定番の2曲で満足度が一気に高まり、来場された方は大きな手拍子で少しヒリヒリした手を擦りながら会場を後にされました。

さて、当財団にも大きな影響を及ぼした公益法人制度改革については、行政委託型の公益法人を含めて、民法のみを拠りどころとして定められていた従来の制度を抜本的に見直すことにありました。公益性の判断も不明確である当時の状況を含め、民間が担う公益を支えるための仕組みの改革が進められてきたものです。平成18年に「公益法人制度改革関連三法案」が成立しました。法案の柱は法人格取得と公益認定の判断を分離し、準則主義による非営利法人の登記での設立、主務官庁からの独立と民間有識者からなる合議制機関による公益認定、既存の公益法人の移行・解散などです。
新制度は平成20年12月から施行され、当財団を含む全国約25,000の公益法人は新制度の下でまずは「特例民法法人」と位置付けられ、従来と同様の性格を有する団体として存続できるとし、5年間という移行期間中に次のいずれかを選択し必要な手続きを取ることとしました。

1つ目の選択肢は「新公益法人への移行“認定”申請」です。特例民法法人のうち、公益認定法の要件を満たす、つまり公益のための事業を実施していると客観的に判断された法人は、「公益社団法人」「公益財団法人」を名乗ることができ、寄附税制や法人税制面で従来の公益法人よりも手厚い優遇措置を受けられます。もう1つの選択肢は「一般法人への移行“認可”申請」です。新制度では公益法人を選択しない場合は「一般社団法人」「一般財団法人」となり、従来の公益法人よりも民間営利法人的な性格を有し、税制面での優遇措置は限定的ですが、法人の創意工夫により公益的な事業のみならず自主的で柔軟な事業の展開が可能となります。
「社団」と「財団」の違いについては、人の集合に対して法人格を付与する形態を取るのか、財産に対するものかの違いです。財団法人の場合財産自体に法人格はありますが、財産が自分で契約をすることはできないので理事を定めて財産を代理するという形をとります。公益法人あるいは一般法人のいずれの要件も満たさない法人や、移行期間を経過した法人は、解散することとなります。その5年間の移行期間が昨年11月末をもって終了したところであります。
内閣府の速報値では全国で24,317あった旧公益法人のうち、新たな制度への移行申請を行ったのは85.3%にあたる20,736法人、残りの3,581法人は解散・合併の道を選んでいます。移行申請したうち9,054法人が新公益法人を選択し、残りの11,682法人が一般法人となっています。

旧制度の適用を受けていた公益法人にとっては、その目的・事業・組織形態・財務状況を見直す良い機会となりました。アーラの指定管理を受けている可児市文化芸術振興財団は、平成23年6月に公益財団法人となり、現在3年度目に入っています。昨年10月には運営組織及び事業活動の状況について、法に基づき公益認定後初めて県の立入検査を受けるという節目を迎えましたので、今回は公益法人制度改革に伴う対応について少し整理していきます。

これまでの公益法人制度では、設立時に主務官庁による“許可”が必要となっていました。当財団についていえば、岐阜県教育委員会が設立許可から各種報告までの窓口となります。旧制度においては具体的な法的根拠はなく、明治29年に制定された民法のみがその拠りどころとなります。民法制定以来110余年にわたり抜本的な見直しはされず、近年に至るまで時代の変化に対応しきれたとは言い難い状況です。公益性の判断についても統一された基準がなく主務官庁が類似法人を独自に設立し、官庁ごとに異なる監督・運営指導をしてきたことで現場の混乱を招くことにも繋がります。
国においては、このような旧制度の問題点をふまえたうえで、民間非営利活動を促進するための方策を講ずる必要があるとの認識に立ち、ようやく制度の抜本的改革に取り組むこととなります。

新しい公益法人に認定される基準として示されたもののうち、特徴的なものは次の事項です。「公益目的事業比率が50%以上であると見込まれること」「収支相償であると見込まれること」そのためには個々の事業について予算段階で公益目的事業の可否判定をし、事業に係る収入が費用を超えない見通しを立てることが必要となります。公益法人に認定された後も、毎年度ごとに公益認定基準を満たしていることが求められ、合議制機関による報告徴収及び立入検査の実施等があります。実績報告において比率が50%を下回る状態が継続し、是正が見込まれない場合は、公益認定が取り消され一般法人となってしまいます。

内部統治(ガバナンス)変更への対応としては、公益でも一般でも「寄附行為」を「定款」に変更するのは必須となり、内容も新制度に合わせて改正する必要があります。理事会・評議員会は法定機関となり、法人運営に対し大きな責任を持つことになるため、今まで以上に慎重な人選が必要となってきます。なお理事会・評議員会とも、書面による表決や委任状による代理出席は認められていません。評議員会は従来の“理事会の諮問機関”という位置付けから大幅変更となり、最高意思決定機関となります。当財団の評議員会においてもこの改正点は重要な事項として徹底しています。理事会が評議員を選解任することはできません。理事会の役割は、評議員会の決定に基づき法人を代表して実際の運営に当たる執行機関となります。

会計処理については、今回の制度改革に伴い平成20年の内閣府公益認定等委員会による、いわゆる“新公益法人会計基準”に対応するよう、財務規程の改正や会計処理方式の見直しが必要となります。会計区分は旧制度の1区分から、公益目的事業会計・収益事業会計・管理費会計の最低3会計に分割する必要が出てきます。
例えば貸館として施設を使う場合、絵本の展示会のみに使用する場合は公益事業、会社説明会として使用する場合は収益事業というように、受付や使用許可の時点での判定が必要です。財団職員の人件費も、担当する事業に公益事業と収益事業がある場合は、事業費で按分計算して配賦することになります。同様に光熱水費等、これまでは管理受託事業費や総務管理費として一括していた経費についても、必要に応じて各事業に分ける必要が出てきます。大変な作業ですが実施する全ての事業について、公益目的か収益目的かを個々に判別しておく必要があります。

当財団については、新制度の目指すところと大きく改革される法制・税制・会計制度の概要を検討し「公益財団法人」を選択しました。可児市文化芸術振興財団が設立された目的は「市民の生活文化、芸術文化の振興と交流・発展を目指した諸事業を行うとともに、文化・芸術に関する教育普及活動」を行うことで「可児市の目指す“文化のまちづくり”に寄与すること」です。実際に行っている事業内容から判断しても、教育・福祉・多文化共生といった他分野との連携等により、文化芸術を通したまちづくりの促進を意図するものがその過半を占め、公益目的の法人と認められることは明らかであり、この種別を選択することは自然なことでした。
一方、移行時の潮流としては、制度内容が明らかになるにつれ「公益法人」よりも「一般法人」を選択する傾向が強まっていました。その理由としては公益認定の要件が厳しいものであることが徐々に明らかになってきたこと、一旦認定された後も毎年実施状況報告をする必要があり、報告の結果によっては取消される場合があること、認定取消となった場合は事業実施のための財産を失い、法人が解散することにも繋がりかねないこと等が考えられ、これらを避けたためと思われます。

このような状況の中で、当財団は困難を承知の上であえて「公益財団法人」の資格を得ました。公益認定を受けることにより社会的信用が獲得でき、公益という冠名称を独占的に使用することの意義は大きいと判断したからです。他の地方公共団体の施設同様、運営費の削減については課題となっていますが、民間有識者から成る合議制機関に「公益財団法人」と認められることは、「可児市の施設であり多くの市民が利用するアーラは、“公益”のために活動している団体に任せるべき」との認識を広く植え付け、指定管理者としての立場を磐石のものにします。
ただ1つ想定外だったのは、公益認定時期が希望する年度始めの4月ではなく6月にずれ込んだことでした。この結果、平成23年度の4~5月分は前制度による会計区分年度、6月から年度末までは新制度によるものとなるため、正味財産増減計算書の「当年度」「前年度」がしばらくの間比較しにくいものとなってしまいました。24年度は12ケ月、その前が10ケ月、その前は2ケ月となるため、各種の財務書類は正規のものを作成する一方で、通年比較ができるよう資料としてもう一種類作ることとなり、説明も困難を極めました。

毎年度公益目的事業比率50%超えを達成するためには、事業の選定時はもちろんのこと、日々の業務についても、それがはたして法に則った公益目的事業なのかどうかを意識しながら進めていく必要が出てきます。全ての職員がこうした気持ちを強く持てば、目標達成への意欲や改善・改革に繋がります。
とかく日々の業務に追われ、ともすれば目的を見失ってしまいがちな職場にあって、公益の担い手としての自負を持って個々の職員の意識改革と能力向上に取り組むことができれば、それは資質向上の糧となり必然的に財団全体の能力を押し上げる原動力になります。内閣府の特命担当大臣のメッセージにもあるように、公益法人は社会的な存在ですので、公益を担う存在としての高い志と社会に対する責任意識を持ちながら、今後も公益活動を続けていきます。

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