連載 館長 vs 局長	「公共劇場」へ舵を切る その理念と経営の実際

第三十回 幅広い音楽ジャンルへの期待に応えるために~活発に行われる市民活動の効用~

可児市文化創造センターala 事務局長 桜井孝治

新しい年を迎えました。本年もよろしくお願いします。
アーラでは昨年11月末より恒例のイルミネーションを実施しています。クリスマスシーズンを中心として今年は2月上旬まで、屋外の"水と緑の広場"を約44,000の電球で装飾します。節電対応として年間を通じた使用電力を再計算、センター運営に支障がないように夜間常時点灯していた照明について、不必要な時は消灯する等をして電力量を賄います。またできる限りLED電球を使用します。明かりが水面に映り込むことまで計算に入れデザインを設計、今年は開館10周年の感謝を込め"アーラからの贈り物"というテーマで大きなリボンを制作しました。期間中は点灯の瞬間を楽しんでいただこうと毎日一組の方に点灯式を行っていただきます。誕生日や記念日を選んで参加いただく方もおみえになるので、イルミネーション前で撮った記念写真は直ぐにカードにしてお渡ししています。限られた時間の中での慌ただしい作業ですが、参加者の想い出づくりに関わるとともに職員も幸せのおすそ分けをいただいています。

さて、今月と来月は音楽について一考。私が言及するまでもなく、音楽は日常生活に深い関わり合いを持つものです。かしこまって聴くわけではないけれども、家の中のテレビから、外に出かければ店の中でもBGMとして絶えず耳に入ってきます。音楽を聞きながら車を運転される方も多いでしょう。アーラの館内でも若い方を中心にコンパクトな再生装置を肌身離さず持ち歩き、イヤホンで聞いている姿をよくみかけます。
音楽についてはその人の趣味・嗜好がかなり分かれる所です。苦手な音楽環境の中にいるとどうも居心地が悪い。静かな音楽を好む方には激しい楽曲は騒音に聞こえるでしょうし、リズム感を重視する方にはゆったりとした音楽は間延びしてしまうでしょう。"良い悪い"ではなく"好き嫌い""合う合わない"の領域です。
私事で恐縮ですが、自分の音楽の趣向は1980年代のアメリカ西海岸を中心としたウエスト・コーストサウンドと呼ばれる分野や、少し泥臭い"サザンロック"と分類されるものが脳内に刷り込まれています。ひょっとしてこれが懐メロ?オーリアンズやレイナードスキナード、ドゥービーブラザーズ、ボブウェルチ等は30年経った今聞いても完成度が高いと感じます。ビル・ラバウンティの曲がドラマの主題歌として話題になったことがありますが、そのずっと前から掘り出して聞いているのです。ボストンやジャーニーは応援讃歌ですし、リズム感満載で途中からホーンセクションが加わる進行の曲があればご機嫌です。ギターでは弦を弾いているのか叩いているのか不明ですがパーカッションのように操るラウルミドンや、幻のグループSHOGUNを率いる芳野藤丸さんがお気に入りです。アコギ・デュオのDEPAPEPE(デパペペ)と兄弟ピアノ連弾レ・フレールの共演が実現できたら面白いと考えています。
さすがに最近では少し落ち着いた曲も聞くようになりましたが、それでもピアノのレッドガーランドやトミーフラガナン、ウィントンケリーぐらいまででしょうか。アーラ開館当時に主劇場の舞台に立っている野力奏一さんの「You Need Me」なんか隠れた名曲です。実力がありながら世界各国で埋もれている無名のジャズアーティストに焦点をあてている澤野工房もののヨーロピアンジャズについては、その創業者の取り組む姿勢に敬意を表しています。チック・コリアについては30年以上前から聞いていますが、このアーティストの本質が解るまでにはまだ後10年はかかるのではないでしょうか。いやガウディの建築物と同じで、自分には一生解らないかも。

音楽についても、アーラでは幅広いラインナップが展開されています。
最近では小・中学校の校内合唱発表会の場としてのホール利用も増えています。従来は各学校の体育館で行われていたものを、本番発表はアーラの舞台で行うというゴールを設定して取り組むようになりました。当日は音響反射板を背に、ライトを浴びて歌います。さぞ緊張するでしょうが、個々の達成感はもちろん、クラスや学校としての一体感やまとまりは必ず体感できるでしょう。学校行事は平日の昼間に開催されることがほとんどなので、稼働率の向上にも寄与します。一方、土日曜日には吹奏楽部の定期演奏会も多く開かれています。この傾向は市内から近隣の市町へも広がりをみせるようになりました。時には隣の市からバスで子どもたちを送迎してまで、アーラでの開催を希望していただけるのです。また義務教育世代だけでなく、最近では上は高校から下は幼稚園・保育園のご利用まで拡大する傾向もあります。こうして利用形態が横にも縦にも広がりを見せています。
余談ですが、保護者の方にも客席が開放されるような発表会の場合は、その休憩時間を気に留めていないと、いつも昼食をとる館内レストランが満席になっていることがありランチ難民になってしまいます。レストランが繁盛することは望ましいことですが、子ども向けの事業は思わぬところで影響が出てきます。

市民参加による音楽イベントの開催も盛んです。
本格的なところでは8月にもご紹介した「市民第九合唱団」、本年度は周年記念事業として地元可児交響楽団と合唱団が合同で演奏会を開催しました。指揮にはセントラル愛知交響楽団正指揮者の古谷誠一さん、合唱指導には本公演でソリストを務めたソプラノ歌手の内田恵美子さんを迎え、本格的な環境のなか一般募集の市民を含めた総勢220名ほどが参加し成功裏に終了しました。
また、毎年行われるものとしては「市音楽祭」と「新ヤングミュージックフェスタ(YMF)」があります。「市音楽祭」は市内や近隣で活動する音楽グループを公募し演奏を披露していただくものです。ジャンルはギターアンサンブル、オカリナ、合唱ハーモニー等、日頃は少人数で活動されていて単独で主劇場に立つ機会が少ないサークル等を主な出演対象としています。そのほかの出演団体には地元の小・中学校や複数の高校による合同演奏、市民吹奏楽団も加わり若いパワーを注入します。一方「YMF」はロック、ポップスなどのアマチュアミュージシャンを対象に舞台演奏の機会を提供するもので、参加者・来場者ともに若い世代から昔若い世代だった方まで幅広く、音楽愛好家のネットワークづくりを支援しています。この参加者や興味を持って来場される方の活動背景にはアーラの地階(G階)にある「音楽練習室」が大きく寄与しています。これは貸館の分野にはなりますが、若い方の利用も多く、平日の夜間や休日にはギターを担いで階段を降りていく光景がよく見受けられます。3室ある練習室の稼働率は90%を超えています。一般家庭ではドラムを練習する場所はそうはないでしょうから、大声で歌って、思いっきりドラムを叩いてスッキリして下さい。

アーラでは市内在住のアーティストにも恵まれています。
世界でも活躍している市内在住のドラマー森山威男さんは、毎年9月の第3土曜日に「森山威男ジャズナイト」と題し、毎回豪華なゲストを招聘しアーラでしか味わえない特別なコンサートを開催しています。最新の音響機器を使用し照明も専用にデザインします。これを目当てに全国から訪れる固定ファンも多く、毎年同じ時期に同じ企画を続けることも大切なのかなと実感します。この森山さんの高度な演奏技術を年1回のコンサートで披露するだけでなく、市民の方に伝える機会を提供するものが毎週1回開催される通称「ドラム道場」です。初心者から上級者まで、レベルに合った指導を森山さんから直接いただいています。年に数回は"公開セッション"として、上級クラスの受講生の生徒さんが中心にはなりますが発表の場、度胸試しの場を確保しています。フリージャズに主眼を置いているので激しい叩き方をする場面も多いのですが、そんな会場のなか、まだ一人歩きもできないような乳児がスヤスヤ眠っているのを見ると、この子にとっての居心地の良い音楽環境とは静かなクラシックではなく、胎児の時から聞いていた母親の好きな4ビートジャズなのでしょう。"三つ子の魂百まで"という表現が合っているかどうかわかりませんが、親の趣味趣向は確実にDNAに組み込まれ遺伝していきます。
また、同じく市内在住のピアニスト吉鷹奈津子さんにもお世話になっています。演奏はもちろんですが、アーラの運営にも評議員として関わっていただき、劇場で演奏されるお立場からもご意見をいただいています。年度初めの市制施行30周年記念事業の際には、式典のオープニングを演奏で飾っていただきました。同じくピアニストの黒木由香さんもアーラではお馴染みです。ウィーンV.ルジェリウスピアノ三重奏団の一員として、気軽にクラシック音楽を楽しめるステージを継続しています。間近では佐藤B作さん、紺野美沙子さんが出演する「シリーズ恋文」の舞台でその音色を聴くことができます。

世界中のミュージシャンに愛用されている地元のヤイリギターとの連携企画も事業運営の特徴です。アコースティック・ギターに焦点を当てたライブ「Welcome to A.G Town」はvol.22まで数えるようになりました。本年度からはそれに加えて「グリーンコンサート」を新たに手掛けています。この企画で演奏するのはヤイリギターを使っているこれからの成長株のアーティスト。場所は屋外の芝生広場で、雨の日でも軒下で演奏します。今後若手の登竜門として定着することを望みます。ストリートライブで鍛えられている彼らは、観客の数が少なくもめげている様子はありません。演奏の機会や場が与えられて本当に嬉しそうです。今は外での演奏となりますが、今後知名度が徐々に上がって次回は館内のロフト、その次は小ホールというように大きく羽ばたいてくれることを期待しています。

一口に「音楽」と言っても、クラッシックからジャズ、レゲエ、ボサノバ、サンバ、R&B、演歌、民謡、童謡・・といった幅広いジャンルに渡っています。形態としても鑑賞するもの、はたまた自分で演奏するものだったりカラオケでマイクを握ったり、子どもさんのピアノ教室の発表会等多岐に渡ります。
こうして見ていくと、市民の皆さんを中心にして活発に活動されている分野を除くと、アーラが担う役割としては本格的なクラシックと古典芸能、大型ポップスコンサート等への期待がかかります。このあたりのアーラの取り組みについては次回でご紹介します。

このページの上部へ