連載 館長 vs 局長	「公共劇場」へ舵を切る その理念と経営の実際

第十八回 季節感のあるアーラのラインナップ

可児市文化創造センターala 事務局長 篭橋義朗

市民生活に根付くアーラの活動として季節感を持つことはとても重要なことです。人々の生活のリズムの中にアーラが入り込むことはとても重要です。
春 祈りのコンサート(震災を忘れない)
春 母の日企画
夏 新日フィル サマーコンサート
夏 納涼寄席
夏 エイブルアート展
秋 森山威男JAZZNIGHT
冬 イルミネーション
冬 ニューイヤーコンサート
冬 初席寄席
冬 春を待つ企画展
春 大型市民参加ミュージカル、ダンス、音楽劇

これらの事業は毎年定番として同じ時期に開催されます。定番化することによって市民の記憶に季節のものとしてインプットされます。

5月に開催する祈りのコンサートでは昨年の大震災の惨禍を忘れず、被災された方々に寄り添う可児市民の心を表現する場として今後もこの時期にクラシックのアンサンブルコンサートを開催していきます。この公演収益と義援金は被災地の心の復興のために全額寄付をします。

母の日企画は5月第2日曜日、ズーラシアンブラスの「音楽の絵本」の公演を開催します。動物の着ぐるみ姿で管弦楽器を演奏するのですが子どもたちに大人気です。そして終演後に着ぐるみのままの演奏者のサイン会と劇場出口で子どもたち全員にラッピングされたカーネーションを一輪プレゼントします。子どもたちは最も優良なリーピーターになってくれます。ちなみに父の日企画はいまのところやっておりません。

夏の納涼寄席、冬の初席では来場されたお客様のうちで浴衣・着物をお召しの方に鎌倉の銭洗弁財天宇賀福神社で実際に洗ってきた五円玉が入った大入り袋を渡します。客席に点々と和服姿のお客様を見ながら落語を聞くという雰囲気となり「和」と「季節」を感じることができます。

秋の森山威男JAZZNIGHTは毎年9月第3土曜日と決まっています。これは季節感と言うよりもアーラがオープンしてから10年間毎年開催していることから「9月になったら森山威男の熱いドラムを聞く」というファンの行動パターンができているということです。ちょっとやそっとではこの日程は変わりません。ちょうどこの日は3連休の初日の夜ということもあって全国からもファンが駆けつけ、翌日から下呂温泉、高山等に観光に行かれます。

冬のイルミネーションも恒例となっています。アーラの大きな水と緑の広場で11月下旬から1月中旬にかけて毎日点灯式を行います。今年も多くのそれぞれの誕生日や記念日のお客様がいらっしゃいました。毎年の恒例となっている家族もいらっしゃいます。来年はバージョンアップしたいと思っています。

新年の幕開けはやはりニューイヤーコンサートです。アーラと地域拠点契約を結ぶ新日本フィルハーモニー交響楽団とウィーン・フォルクスオーパー交響楽団とが交互に新春のアーラを華やかにしてくれます。市民にとっても年の初めにオーケストラを聴くという習慣が定着してきています。客席には着物を召された男女や普段よりもおしゃれな服装のお客様が多くいらっしゃいました。今回はラヴェルの「ボレロ」をメインに定番のウィンナワルツとポルカでしたが、特にボレロでは昨年の大震災のこともあり、一つひとつの楽器から最後の迫力あるエンディングまでを聴き終った聴衆は大きな感動に包まれていました。終演後は毎年そうですが華やかさと高揚感に包まれたお客様の顔を見ることができます。

企画展では夏にエイブルアート展です。これは障がいのある人の可能性(エイブル)に注目した展覧会です。全国で高い評価を受けている作品と共に市内の支援学級児童生徒作品も同時展示します。斬新な発想と大胆な色使いの作品は夏によく合います。冬は春を待つ企画展覧会です。寒い冬には温かい春を待ちたい気分になるものです。そのような時期に可児市民の心を温かくするような作品を展示します。昨年は「いわさきちひろ展」でした。今年は「原田泰治ピエゾの世界」でどこか懐かしく美しいふるさとの風景画の展覧会です。

そして3月にはアーラが4月から手掛けてきた大型市民参加作品を年間の集大成として公演します。ミュージカル、ダンス、音楽劇の順にローリングしていきますが今年はミュージカルで「君といた夏~スタンドバイミー可児~」です。今年も約100人の出演者と約50人のスタッフで大々的に開催します。子どもたちにとってはアーラの主劇場の舞台に立つという感動が強く刻み込まれるとともに学年の最後の集大成となっていると思います。

以上、事例を紹介しましたが、定例的に開催するということはお客様にとっての興味が増幅されます。「今年は何をどうするのか。」「去年よりももここが違ってた。」「今までで一番良かった。」「あのアーティストも育ってきた。」「来年はこうしてほしい。」等々、勝手に評価をする楽しみがあります。行き当たりばったりのラインナップではそれができませんし、私たちとしても運営改善のしようがありません。
各地で毎年行われているお祭りや儀式に胸をわくわくさせて待ち望んでいた子どもの頃の心境で、それぞれのライフスタイルに合わせて年中行事的にアーラに訪れて人々が心の栄養を補充いていただけることがアーラの使命だと思っています。

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