連載 館長 vs 局長	「公共劇場」へ舵を切る その理念と経営の実際

第十二回 指定管理者選考のプレゼンにあたって

可児市文化創造センターala 事務局長 篭橋義朗

以下は私が可児市文化創造センターの指定管理者選考のプレゼンにあたってのメモから抜き出したものです。多少感情的になっている部分もありますが参考になれば幸いです。ただ、このとおりには説明していませんが。

1. 建設経緯から
建設計画の時から現在まで市民と行政が良好なパートナーシップのもとに運営されてきたことを重要視しなければなりません。(財)可児市文化芸術振興財団はそのために設立されました。市民参加を得た文化施設としては全国的にも先進事例とされています。このような手法で設置目的を達成するには、市としても責任を持つ必要があり、民間企業にはなじまないと考えます。

2. 他団体とは異質な職員構成、館長は専門家
設備も先進的な機材をそろえており現在のスタッフにより、制作の面、舞台技術の面から、今後より一層の効率的・効果的運営がされるものと期待しています。貸し館事業においても専門知識を持った舞台技術職員がお手伝いします。そのことが市民の文化芸術レベルの向上に大きく資するものだと考えます。この技術職員も財団職員であり、財団の目的である公益の追求を全体で共有しています。
(財)可児市文化芸術振興財団は単に自主事業を企画し実施することだけではなく専門家である館長をはじめとしてプロの制作者集団を擁し、また多数の経験豊富な舞台技術者を職員として組織しているため、市民の創造活動への支援・助言が公平に行うことができます。

3. 市民と絆
設立までの市の投下コストを無にするものであり得策ではありません。また基本構想、基本計画、設計、運営計画を市民と協働で作り上げたこれまでの理念と絆を無にすることになります。
運営の基本方針として「市民と行政との健全なパートナーシップのもとに、双方が可児市の文化に対して責任を分かち合いながら、共に本市の文化振興の担い手となってさらに発展させていく」とあり、その運営に関して、たとえ市が選定をした法人であっても第三者による管理は市民との信頼が損なわれる恐れがあります。

4. 可児市の文化芸術施策の唯一の拠点
可児市にとっては文化創造センターは唯一の芸術文化ホールであって、現実には市の文化芸術施策のすべてを担っています。財団は利用にかかるサービスや住民ニーズに応えているだけではなく、文化を創造するため、可児市・可児市教育委員会と連携をとって芸術的・教育的必要課題を普及啓蒙しています。そのために市職員を5名派遣しています。また、専門家も館長・制作者・舞台技術者を擁しています。これは鑑賞事業(いわゆる買取公演)や市民の舞台利用のためだけではなく、本来の目的である可児市の文化芸術の創造のためのスタッフです。基本構想、基本計画、運営管理計画を市民とともに作ってきたことを忘れてはいけません。
もともと利益の出にくい分野としての芸術文化の領域での施設でありますが、市民要望の最重要課題としての建設であった経緯から市民参加を標榜し、行政と市民が協働して運営をしていくという理念を第三者が実現できるはずがありません。当事者である行政が深くかかわらなくては基本構想の大前提が崩れることになり、行政の責任を放棄したことになります。このことがコスト問題に増して重要であります。
さらには民間に委託する場合の基本協定に「行政と市民との協働」を謳うことができるのでしょうか。現在でも行政が財団の活動をつぶさに把握することは困難でありますが、民間法人ともなればますますこの欠点は増大することとなります。 さらに民間に委託した場合、必ず経費を支払わなければならず、これを盾にかえって経費縮減ができにくくなることも考えなければなりません。

5. 財団運営事業の先進性
現在でも多くの自治体、研究者の視察を受けています。これは建物ではなくアーラの運営についていまだに先進的であることの証左であります。それはマーケティング手法であったり、舞台芸術の創造事業であったり、ワークショップの多さであったりします。鑑賞事業を年に数回実施し、後は市民への貸し館に徹している全国の大多数のホールに対してアーラは市民生活、教育、福祉に貢献する活動を展開しています。そのことがこれからの公立文化施設にとって存続していくことができる最重要なことであるとのアピールをしています。

6. 市民が育む文化芸術の果実の行方
ア) 児童生徒、青少年に対する事業
豊な情操をを持つために子どもの頃から本物に触れることの必要性は十分に言われておりますが、さらに財団ではその子どもたちが大人になったときにアーラで本物に触れた思い出、他団体に対する優越感、ひいては誇りを醸成します。
昨年度に開催された市民ミュージカル「あいと地球と競売人」の終了直後に参加した子どもたちから劇団を作りたいとの申し出により、自主活動として現在活動しています。来年度からアーラ・ユースシアターとして支援していきたいと考えていますが、単に演劇指導だけではなく、人間としてコミュニケーションができる健全な人間形成を促すよう指導していきたいと考えています。

イ) 高齢者に対する事業
芸術に触れることは人間が生きていくうえで欠かせないものであります。特に長い経験をお持ちの高齢者の方々は様々な経験の中から「可児市に住んでよかった。」という満足感の中でゆったりとした生活を過ごしてもらえるよういきいき長寿課、福祉課と連携をとりながら事業展開していきたいと考えています。

ウ) 現代社会の問題解決
秋葉原の無差別殺人事件に絡んで、現代社会の劣化が叫ばれています。格差社会、市場原理、雇用の不安、心の荒廃、コミュニケーション力の欠如、思いやりの欠如、等々。以前には考えられなかった事件が続発しています。それも地方都市で。とすれば可児市でも起こらないとはいえない現実の前で政治や行政ができることはないのでしょうか。犯人はだれでもがなり得る。その状況で社会の形成に大きく関係する政治や行政はもっと心の問題に関与すべきではないでしょうか。物理的ではない公共事業として長期的に心の問題に関わらなくてよいのでしょうか。
利益を上げることが最終の目的である民間機関がどうして長期的に豊な心の醸成を扱うことができるでしょうか。バーチャルではない本物の音楽や生身の人間が演ずる演劇を子どものうちに経験させることが平和な心の成長に役立つと思います。
防犯ベルを持ち歩かなければならない児童生徒や知らない人とは会話をしない子ども、下校時には見守り隊が必要な世の中で、そうなる前の対策や政策が必要であると思っています。

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