連載 館長 vs 局長	「公共劇場」へ舵を切る その理念と経営の実際

第八回 賑わいのある光景

可児市文化創造センターala 事務局長 篭橋義朗

アーラにいらっしゃる劇場の専門家、アーティスト、他市からのお客様はみなさんが驚きの表情を浮かべられます。催し物や、イベントのある時は当然ですが劇場での催事がない日でも、ロフトでの練習や会議をする人、間断なく開催されている市民ギャラリーの展示に訪れる人、情報コーナーで雑誌を読む人、インターネットをする人、ロビーでは勉強する高校生、ランチタイムにはほぼ満席になるレストラン、水と緑の広場ではピクニック気分で弁当を食べるファミリー、水遊びや走り回る学校帰りの子供たちなどでいつもにぎわっています。ちょうど施設建設にあたっての完成予想図やパースに描かれている風景のようなことが日常的に現出しています。魅力ある公演、催事を開催して劇場に魅力を持たせることも大事ですが、私たちはそれ以上にイベント等がない時に人々が集い、安らぐことができる雰囲気、感覚、魅力を創出することがもっともっと重要であると思っています。

データでは劇場の稼働率が平成22年度で69.2%、全体で86.5%という実績はかなり頑張っていると自己評価しているところです。また来場者数は293,936人です。これは施設利用者が利用後に提出した報告数をカウントしたものですので、単に訪れただけの市民や子どもたちはカウントされていません。したがって確実に30万人は超えています。アーラはそもそも建物の構造上、開かれた構造になっており、出入口が東西南北と中央にありますのでセンサーによるカウンターで計測することができません。概数とならざるを得ません。しかし人数の問題ではなくすべての来訪者が心地よい時間を過ごすことができるように私たちは建物の管理運営しなければならないと思っています。以下、留意していることを記します。

建物の外構部分では、 来訪者の第一印象が第一義的に重要であるため樹木の剪定(年2回)と芝生の管理(月1回芝刈り)に予算を配分します。駐車場で車から降りて入口に訪れるまでの空間をきっちり整備、管理していることがアーラの事業の質の良さや評価を底辺で支えていると信じています。私は個人的にも整備され青々とした緑の芝が大好きです。「アーラはきめ細かく事業をしています。」というサインです。

芝生広場にあるケヤキの根元は斜面になっており、そこの芝生はいつも禿げています。これは子どもたちが滑り台代りに遊ぶためですが、これも放置しています。「芝生の養生のため、ここで遊ばない」という看板や柵を設置することはしません。子どものお尻で芝生がきれいにならないことをとがめる人がいるでしょうか。なお、広い芝生広場に遊具類は一切ありません。きれいな芝生ときれいな水場だけで子どもたちは寄ってきます。子どもたち自身で遊びを創造しています。

アーラのオープン時には駐車場出口に「右・広見方面、左・土田帷子方面」などの簡易な看板を設置していましたが、しばらくしてから景観保持のため撤去しました。クレームはありません。行き過ぎた親切であると思います。

ロビーでは、 駐車場から客席まで段差が一切ないアーラの建物に入って中央の位置にインフォメーションと事務室があります。インフォメーションの横にはフリースペースとして情報コーナーがあります。芸術に関する雑誌、書籍、CD、DVDが陳列されており、この鑑賞端末の5席とネット環境の整ったコンピュータ席が8席あります。このコーナーは常時満席となっており、子どもから高齢者が入れ替わり立ち替わり調べものをしたり、ゲームをしたり、絵本を読んだり、人待ちをしたり、勉強したりと思い思いに過ごしていらっしゃいます。フリースペースなので基本的には何をしてもいい場所です。もちろんここでも一切の規制はなく看板も張り紙もありません。セキュリティもかかっていません。テーブルには子どもたちによる落書きなどが頻繁にあり一時困っていましたが、補修と我慢を重ね、結局傷だらけになったテーブルは堅い木目風のテーブルに更新し、落書きしてもすぐに消せるようにしてからはいたずらも減っています。間違っても犯人捜しをしたり注意をすることはしません。

余談ですが、先日可児市役所の新入職員研修(市内の施設見学)でアーラを紹介していたときに「高校時代にアーラで勉強していた人は手を挙げて。」と言ったところ12人ほどのうち半分ぐらいの手が挙がりました。別にアーラには受験勉強のための部屋などありませんが、土日曜日は朝から、平日も夜ともなれば薄暗いロビーにあるテーブルで勉強する子供たちがかなりいます。さらにこぼれ話として、アーラで勉強していて友達になった子どもたちが大学生となり東京で「アーラ会」なるものができ、定期的に"飲み会"をやっているそうです。多分彼ら、彼女らはアーラの主催公演は鑑賞したことがないと思います。しかし彼らの青春の思い出にアーラの存在が確実に刻まれたと思うと、これを聞いた時はさすがにうれしかったですね。何人かの子は必ず可児市に帰ってきてアーラの観客になるのだと思います。

衛館長以下、私たちの基本的な考えは、「生命の安全と他のお客さまに迷惑がかからないこと以外は規制しない。規制の看板、張り紙は一切しない。」「消耗物品の破損にかかる経費は予算化する。」「悪意のお客様は例外として個別に対応し、大多数の善意のお客様が快適に過ごせる運営をする。」などと理解しています。

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