連載 館長 vs 局長	「公共劇場」へ舵を切る その理念と経営の実際

第四回 顧客サービスのいろいろ(その2)

可児市文化創造センターala 事務局長 篭橋義朗

前回の続きです。各種のサービスを実施するにあたっていろいろなハードルがを越えなければならないので、書こうとすると長い文章になってしまいます。ご容赦ください。発想は簡単にできますが実施は困難であることを分かってもらいたいこともありますので。

1.DANDANチケット(平成20年度から)
日程が近くならないと観にいけるかわからない。観たことのないものを低価格で観てみたい方にお勧め。公演日の2週間前から15%割引、当日は午前0時からなんと50%割引。となります。文字通りダンダン安くなります。普通は前売り券より当日券の方が高価ですが、アーラでは逆転しています。

それまで公演をするたびに残席が発生していました。完売以外は当然のことですがそれにしてももったいない。本当なら無料で招待したいぐらいですがそれこそ公平性が保てません。公演間近になって経済効率的側面から我々主催者はどうしても席を埋めたいと思います。ましてや検討に検討を重ね、観ていただければ必ず満足していただけると確信している公演ですから何とかしたいと思っていました。これをどうするかについて様々なアイデアがありますが一長一短です。S席、A席などの席による区別を設ければ区切りの線をどこに置くかが問題になりますし、そもそもアーラは1,000席と300席の劇場ですのでどの席でも良好な環境で鑑賞できます。残席に子どもたちや高齢者を招待するとしても、すでに購入している子どもたちや高齢者には説明できないなどの問題があります。であるならばそれを制度として事前に公表し了解のうえで割引をするということにしました。

もっと重要な要素としては鑑賞環境、公演環境の向上です。早めに購入されたお客様からすれば空席が目立つ会場より満員の会場の方が満足度は確実に高くなると同時に出演者にとってもよりテンションを上げられることも確実です。私たちはすべて公演を成功させるためにあらゆることをしなければなりません。

ただしこのことはこれまでの常識からすると非常識に映るかも知れません。いや当然これまでの慣行を変更するわけですから軋轢は発生します。特にポピュラー業界ですが。曰く「前売り券が売れなくなる。」「半額で売る価値ではない。」「当日に混乱が起こる。」などです。しかし、発売日に完売になればこの制度は当然適用できなくなります。ですから1,000席売れれば何の問題もない訳です。本来はそうあってほしいのですがそうもいきません。これまでの経験上、発売後1週間以降はなかなか販売が進みません。まして、当日券が割高では残席を埋めることはほぼ不可能です。新聞折り込み等で中押しする手もありますが費用対効果は期待できません。そこで中押しの意味で2週間前と当日に購入のきっかけを設けたわけです。 観客行動としてはやはりいい席で鑑賞したい、当日までに席は残っていないかもしれない、という心理が働き、当日券の購入者数は当日50%チケットで全体販売席数の5%前後ですから、心配するほどの混乱は起きていません。ましてや50%オフですから席は最後列になりますが、ちょっと興味があるものなら行ってみようかということになります。

この制度の発想の原型は公演日から逆算して5週間で1週間ごとに10%ずつディスカウントしていくものでした。それによってアーラと市民とのゲーム感覚の駆け引き、コミュニケーションをとるという発想でした。実務上職員の負担とミスの可能性が大きいことから現制度になっています。

2. バースデイサプライズ
公演日の属する月に誕生日を迎えられる方には購入された席に前もってバラ一輪とアーラからのバースデイカードを置いておきます。お客様は自分の席を見つけて座ろうとしたときにバラとカードがあるため困惑されます。そこへ衛館長が現れ「○○様ですね。お誕生日(月)おめでとうございます。本日の公演をお楽しみください。・・・」などと祝福する。というものです。私も代理でやったことがありますが、お客様は本当に驚き、感激し、涙を流され、お帰りの際は館長に握手を求めています。周辺のお客様は羨望と称賛の眼差しです。そのお客様と周辺の方にとって、その時からアーラとの絆ができ、アーラが特別な存在になります。それを実感しています。しかもカードは開けると立体的に演目にちなんだものが飛び出す優れモノです。職員が手作りで心をこめて作成し、館長のサイン入りです。毎回、主劇場で約15人、小劇場で約8人ほどが対象者です。これは地道な地を這うような活動ですが確実に顧客を繋ぎとめています。何万枚のチラシより全戸配布の公報よりも。

これはアーラの登録会員となればだれでも受けられるサービスです。登録会員はチケットをネット購入する際に自動的に登録していただく方と直接窓口購入時に申し出ていただく方です。内訳はネット(携帯電話を含む)4,343人、窓口1,718人、合計6,061人の方々を対象としています。もちろん無料です。その際に生年月日も登録しますのでどのお客様が、どの席で鑑賞されているかがわかります。ここで懸念されるのが個人情報保護の問題です。当然アーラの業務以外には使用しないことを登録時に断っているのですが、行政としては不安なスタートでした。しかしこれまでに絶賛とお礼の言葉以外は聞いたことはありません。

まだまだ小さなサービスはたくさんありますが、今後のエッセイで随時、折に触れ紹介していくことにします。

このページの上部へ