連載 館長 vs 局長	「公共劇場」へ舵を切る その理念と経営の実際

第三回 顧客サービスのいろいろ

可児市文化創造センターala 事務局長 篭橋義朗

劇場運営は自主事業と貸し館です。自主事業では鑑賞事業と創造事業に分かれます。創造事業は教育普及事業とも言われていますが、いずれにしても全国共通のこれらの業務をいかに豊かにしようとしているかが「市民の誇りとなる劇場」か「ハコモノ」かの評価が分かれるところです。以下は我々が顧客サービスと言っている業務です。館長エッセイで既に紹介されていますが、これまでの行政的運営からすると公平性の問題、個人情報保護の問題、職員の事務負担増の問題などたくさんのハードルがありました。館長の発想、職員の発想など、さまざまな発想をいかに業務として実現しているかの一端を述べます。

1. パッケージチケット(平成19年度から)
1年間に開催する各種公演をグループに分けて20%割引で販売するというものです。(この手法はすでに導入している劇場もあると思います。)アーラでは「ウェルカムホーム」「演劇まるかじり」「まるごとクラシック」「かに寄席」「アラカルト」の5種類です。
「ウェルカムホーム」はアーラが地域拠点契約を結んでいる新日本フィルと劇団文学座を可児市民が迎えるという意味でWelcomeとし、これにアーラの自主制作公演(ala Collectionシリーズと恋文)をまとめて5公演です。これはクラシックも演劇も体験したいというお客様を対象としています。そして演劇まるかじりは演劇作品4公演、まるごとクラシックはクラシック音楽4公演、かに寄席2公演があります。そして今年度からお客様の要望にこたえて自由にチョイス(4公演)できるアラカルトパッケージを始めました。さらにこれを2年連続でご購入された方は25%割引、3年連続は30%割引をします。それ以上はそのままです。

パッケージの利点はお客様としては4公演をまとめて指定席を真っ先に20%オフで買えること。そのうち興味のない公演があっても各公演20%オフなので1公演ぐらいは定価からすると無料で鑑賞できることなどがあります。劇場側としては集客があまり見込めないという公演でも一定の基礎となる観客数を確保できること。有名な俳優などが出演していない演劇でも観ていただければ必ず満足していただけると確信していますのでそのような公演も観ていただいて満足していただくことができ、新しいお客様の増加が見込めます。「創客」ですね。
ちなみに経年実績では20年度から374パック、21年度867パック、22年度1,448パック、23年度は1,035パックを販売しました。(22年度は小沢征爾&新日本フィル特別演奏会があったので例外です。)順調に右肩上がりです。23年度はまだ販売中ですがこの内訳はウェルカム58パック、演劇122パック、クラシック194パック、寄席661パック、アラカルト23パックです。すべてのパックが上昇中ですが創客という意味では演劇まるかじりパックの推移が最も嬉しい増加の仕方です。以前は演劇がほとんど公演されていなかったこの地域では、演劇ファンも少なかったに違いありません。その「演劇」が41パック、74パック、96パック、122パックと伸びています。それも俳優の名声ではなく公演の質の良さであり、可児市民の目線に合ったプログラムを組んだ結果だと思います。
演劇は公演内容がほとんど分からないままはじめて観るためにチケットを買わなければなりません。クラシックやポップスは曲目や演奏者が好きだからチケットを購入するわけで全く演劇と購入動機が違うのだと思います。ということは演劇のチケットを買うお客様はアーラのプログラムの質を信じて購入していただいているわけで、それこそがアーラのブランド力が向上しているのだと私は解釈しています。「継続は力なり。」です。

ただし、パッケージチケット販売の難点は一つあります。それはチケット発券するにあたって時間がかかるということです。お客様はたとえば4公演の席を選ばなければなりません。演劇であれば連続公演ですので公演日も選ばなければなりません。当方ではお客様の購入履歴から初めてであるか2年目であるか、3年目以上であるかを確認し、さらに割引処理をしなければなりません。これらの処理で一人あたり5分ほどかかります。1時間で12人しか購入いただけません。チケット販売用のパソコンは2台で処理しますので1時間で24人です。100人並ばれますと4時間以上待っていただくことになります。対策としてパッケージごとに販売日を分け、職員が随時購入方法の説明をしながら対応しますがなかなか思うようにはいきません。さらなる改善をしていきたいと思います。

2. チケットキャンセル制度(平成22年度から)
パッケージは約10ケ月先のチケットもあります。そのリスクもあって割り引いているのですが、お客様の都合も不明のため公演近くになって都合が悪くなった場合を考えて、キャンセルの場合はご購入金額の80%分のアーラクーポンと引き換えします。キャンセルは2週間前まで。クーポンは新たなアーラの公演チケット購入時、または館内のレストランで使用可能です。この件数はそんなに多くありません。

3. ビッグコミュニケーションチケット(平成20年度から)
友達などたくさんで、家族そろって観に行きたい方へお勧め。4・5人10%割引、6・7人20%割引、8人以上30%割引となります。これは単に団体割引という意味ではなく1人で観るより多人数で観たほうが楽しいし、感想を話し合ってみんなの絆を作ってもらいたいという意図があります。もうひとつの意図はお客様がお客様を呼ぶ、チラシや広告で知るよりも友達や家族から誘われた方が購入の確率は高いというマーケティングの手法から取り入れました。

まだまだ他のサービスもありますが、長くなってしまいますので今回はこれぐらいにしておきます。

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