Special 市民ミュージカル「君といた夏」演出家 黒田百合インタビュー

キャストは小学1年生から78歳まで! 愛される市民ミュージカル 「キミナツ」開幕

2012年に初演されて以来3年毎に公演を重ね、3月に4度目の上演を迎える「君といた夏 スタンドバイミー可児」は、地元を題材にした市民ミュージカルだ。コロナで延期を余儀なくされてきたが、参加する市民、特に主役を演じる少年たちの舞台にかける情熱は途切れることがなかった。初演から携わる演出家、黒田百合さんに話を聞いた。

-主演が5人の子どもたちというのは驚きです

この作品には「仲間・友情・命」という3つの大事なことが込められています。例えば、森で見つけたホタルの中にヒロミの亡くなった友人を想う場面があります。森というのは命が育まれ、命が朽ちても新しい命が芽生えてくる場所。子どもたちは冒険によって、命のはかなさ、強さ、優しさを学ぶんですね。また冒頭に出てくるマコト一家、彼らが昭和 年当時を思い出し、家族が再生していく物語でもあります。出演者92人のうち30人は前回までに出演経験があってリピート率が高く、世代も小学1年生から78歳までと幅広い。本当に市民に愛されている作品だと思いますね。裏で支えるサポーターも 人いるんですよ。社会包摂型の劇場であるアーラは、文化芸術を通して「生きがい」をどう持ってもらうか考え続けてきて、それを市民に問いかけ、一緒に取り組んできた。だから、みなさん参加してくださるんですよね。

-台本は初演から変わりないですか。

毎回、出演者に合わせて内容を変えています。主役の子たちには基礎となるキャラクターはあるんですけど、どうしても隙間はできる。そこで「ここは何て言う?」とか子どもたちと話し合い、彼らに寄り添いながら作っていきます。だから毎年カラーが違い、その年その年の楽しみがあります。子どもたちは自分たちがしようとしたことを実現できて、それを周りが認めた時、成長する。私はそう信じています。教えるとかではなく、子どもたちがつかんでいく、その瞬間に立ち会いたい。それが毎回の課題で、演出として言い過ぎていないか気をつけていますし、彼らが自分自身でより気持ちが入ると思う方法があれば、そちらを選択するようにしてます。

-黒田さんは金沢の方ですが、可児はどう見えますか。

初演の時、お腹にお子さんのいる参加者がいたんですよ。その後、彼女はお母さんになり、今回お子さんと参加しています。だから、先ほどの森の話じゃないですけど、可児には命が巡る、つながっていくイメージがありますね。また、今回ミノル役の川合蒼介君はアーラの別プロジェクトで3歳の時に会って、「今度はキミナツの虫役で来てね」と話したんですよ。そしたら小1になって、本当に応募してくれた。他にも2015年に不良役で出た橋本征弥君は東京でジャパンアクションエンタープライズ(JAE)に入り、今回のアクションをつけています。2009年のミュージカルに中学生で出た酒井果菜未ちゃんは、振付助手として戻ってきてくれました。まるで鮭が卵を産んでまた遡上するようなことが可児の町で生まれているのを感じますね。

-「キミナツ」に寄せる期待は?

この作品が次につながっていけばいいなとは常に考えてきました。引っ込み思案だった子が、演劇に出たことで違う自分を出せるようになるとか……。学校や職場など、いろんなところに波及していくきっかけになればいいなと思いますね。「キミナツ」は、やっつけられたりしながらも少年5人が立ち上がっていく成長の物語であり、空に向かっていくような感覚がある。観に来た人たちが「明日も頑張ろう」と思える舞台にしたいですね。

-最後にPRをお願いします。

昭和49年は、いちばん良い時代だった気がしているんですよ。年配の方にはあの頃を思い出していただきたいし、小さい子たちには「昔はこんな風だったんだ」と知ってもらいたいですね。もう戻ることはできないけれど、大らかな古き良き時代を楽しんでいただけると思います。劇中、主役5人が池に飛び込むんですけど、そこは作者の瀬戸口郁さんにとって非常に思い入れの強いシーンなんですよ。ある意味ノスタルジックですが、泥臭いけれど、人と人とがもっと豊かに関わり、つながっていたと言えます。今はつながれない、つながりにくい、孤立してもいい時代。そういう意味でも「キミナツ」は昭和の良さを教えてくれますね。

【主役の少年たちからのコメント】

梶垣幸成(マコト役)
前回お兄ちゃんが参加しているのを見て応募しました。今回、お兄ちゃんは不良役で参加しています。マコトは家が貧しく、お兄ちゃんが死んでいて、お母さんからの愛情が乏しいので家に帰りたくないように思えます。稽古は楽しいけど、泣く場面が難しいです。

川合蒼介(ミノル役)
小さい頃に青虫役で参加した時、ミノルやカンジ、マコトがかっこよく見えて、いつかやりたいと思っていました。ミノルは仲間を引き連れる立場だけど、ジャイアン的ではなく、優しく温かいリーダー。セリフが速くなりがちなので、口の動かし方や発声が課題です。

牛谷蒼太(カンジ役)
友だちに誘われて応募しました。カンジはガキ大将のような男の子。お父さんがいなくなってしまっても、きっと帰って来ると信じていて、お父さんが好きなんだなと思います。稽古は、授業と違ってアッという間。本番は家族の期待に応えられるよう頑張りたいです。

大澤一輝(ミツオ役)
前回、青虫役で参加して楽しかったので、また応募しました。ミツオは面白い役柄で、”パシリ”みたいな存在でもあるけど、それが演じていて面白い。主役5人のチームワークもまとまってきているので、あとはセリフをしっかり入れて本番に向かいたいです。

河合俊太(ヒロミ役)
いろんな年代の人と関わってみたくて参加しました。ヒロミはかっこよくて頭もいいけど、どちらかと言えば子どもみたいでかわいい。自分とはタイプが違うので、演じていて楽しいです。お金を払って観に来る方々に、主役のひとりとして最高の本番を見せたいです。

取材/小島祐未子 撮影/多和田詩朗 稽古場撮影/市民サポーター 協力/フリーペーパーMEG

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