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インタビュー:古今亭菊之丞<落語家>

― 大規模改修工事でリニューアルしたアーラ。『かに寄席  初席』 で再始動 !

コロナ禍による公演の中止や延期に泣いた2020年のエンタメ・シーンですが、アーラでは大規模改修工事が全て終了し1月8日にグランドオープンしました。劇場での主催公演は毎年大好評の『かに寄席』で再開します。こちらも出演し、現在、Youtube「デジタル独演会」でも人気の古今亭菊之丞さんにお話しを伺いました。

― 今年はコロナ禍で落語界も大きな打撃を被りましたね。

戦前から落語をやられている(三遊亭金馬・改め)三遊亭金翁師匠でさえも、「こんなの経験したことない。戦争中だってやってたんだから」って仰っていました。私らも最初の1か月くらいは休暇気分だったけれど、そのうちどんどん仕事がなくなるので不安に。4~5月は殆どゼロでしたね。柳家権太楼師匠も、はじめの頃はおかみさんがカレンダーにひとつずつバツを付けていたのが、しまいには丸ごと大きなバツを書くようになったのを見てショックを受けたとか。

― 自粛中はお家でどのように過ごされていましたか?

時間ができたから「圓朝全集」でも読破しようかと思っていましたが、結局一頁も開きませんでしたね(笑)。何もする気になれなかった…。あの頃の記憶がすっぽり抜けていて、憶えていない。単調な毎日の繰り返しでしたから。

― そんな中で5月からYouTubeで無料の「古今亭菊之丞でじたる独演会」をスタートされて、今やアーカイブなどで毎回何万人もが視聴する人気コンテンツになりました。

うちのカミさんに、「いずれこういう時代になるんだから、あなたも乗り遅れちゃダメ」って言われましてね(笑)。それまでは無観客で生配信なんて絶対やるもんかと思っていたんですよ。やっぱり2~3人しかいなくてもお客様の前でやるのが落語なんだから…って。でも思いきってやってみたら、予想以上に沢山の人に観ていただいて、まだ寄席に行ったことのない方や地方の方、病気で入院されている方とか、いろんな方々に楽しんでもらえた。トークコーナーを設けて、届いた感想をその場で紹介したのも初めての試みでしたが、あれも好評で嬉しかったですね。

― 演目には配信ならではの「噺」を選ばれたのですか?

そもそも私らは、その日の会場の様子…年齢層とか男女比、お子さんの有無などを見て、マクラで客席の反応を探りながらその場で演目を決める。配信の場合はそれがないので、こちらがやりたい噺ができて楽だと思ったのです。それで、せっかくいい機会だから、普段やらないような重たい人情話でもじっくり聴いていただこうかと考えていたら、意外と、いつも通りのものをリクエストされる方が多くて、やっぱり楽しい噺、明るく笑い飛ばせるような噺を皆さんが求めていることが分かった。それに応えたいと思って選んでみました。

― 昨年のNHK大河ドラマ 『いだてん』 効果でまた落語に注目が集まり、興味を持った若者も増えていると思います。師匠はこのドラマに金原亭馬生役で出演されただけでなく、若き日の古今亭志ん生を演じた森山未來さんの指導を担当されるなど、落語に関して全面的に監修されていましたね。

とにかく宮藤官九郎さんの脚本が素晴らしかった。わりと原稿が上がってすぐに読める立場にいたので、毎回、「へえ、こうやって伏線を回収していくのね。」って凄く楽しみでした。きっと今、改めて最初から観てみると新しい発見があって面白いと思いますよ。

― 森山さんの志ん生が型破りなのも良かったと思います。

最初、彼から「関西人の自分が、江戸っ子の頂点みたいな人を演じてもいいんでしょうか…」という相談を受けて、とりあえず浅草で飲みましょうって誘い、スタッフも交えて話をしました。結論として、モノマネをしても意味がないから、自然に森山さんの「志ん生」をおやりなさいって伝えたら本人も納得されて「肩の荷がおりた」と言ってくれた。結局、自分もイントネーションなどは細かく直しましたが、あとは森山さんの実力で演じてらっしゃいましたね。若い頃の志ん生だけでなく、ビートたけしさん時代には、長男(金原亭馬生)と次男(古今亭志ん朝)の役もやって、3役を見事に演じ分けてのけた…才能ですね。たまにドラマを見た人から、「森山さんの落語は(菊之丞)師匠だね。」って指摘されることもあって、当たり前だよ私が教えてんだからって、言ったりして(笑)楽しかった。

― 古典落語の面白さに若い人の目を開かせる、素敵なきっかけになりました。

舞台は昔ですが、噺の中で生きている人間模様は今も変わらない。いるいる、ああいう人自分のまわりにも…ってそれが落語の醍醐味。江戸時代でも令和でも、狡い人は狡いし、抜けてる奴は抜けてる、野暮は野暮だし。

― 6月から徐々に寄席も再開されましたが…

感染症防止対策はしっかりしつつ、前に進まないとね。マクラでは世相について触れたりするのが常ですが、私はコロナの話題はあまりしないように心がけています。思いは人それぞれですし、多くの人はそんな浮世を忘れたくて落語を聴きに来てくださっているのだから。寄席の中はみんなにとって安全地帯であって欲しい。まあこちらは普段通りにやるだけです。

― 『かに寄席 初席』は、大規模改修工事明けのアーラにとって、主劇場で最初の主催公演になりますので、市民にとってはまさに「待ちに待った」日になりそうです。

今回は私以外のメンバーが豪華で、人気者揃い。大いに期待できる柳家花緑さんはもちろんのこと、三遊亭兼好さんはとても陽気な方ですし、 柳家わさびさんもイマドキの注目株、 玉川太福さんも浪曲界に新風を吹き込んだ売れっ子と、精鋭チーム。可児のお客さんに喜んでもらえると確信しています。

― リニューアルした劇場で師匠たちをお迎えいたします。

会場が美しいとこちらもとても気持ちがいい。立川談志師匠もよく、「今日の会場はキレイだね」って口にしていましたから、そういう点も大切なのです。前回訪れた時、タクシーの運転手さんが車中で開館当時のことを熱心に話してくれたのが印象的でした。(可児市文化創造センターが)いかに地元の方に愛されているかよく分かります。私も皆さんにお会いするのを今からとても楽しみです。新年に相応しい、ハッピーな 『かに寄席』 にしたいですね!

取材/東端哲也 撮影/中野建太 協力/フリーペーパーMEG

かに寄席 初席