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第八十四回 館長のバラ

可児市文化創造センターala 事務局長 遠藤文彦


季節は変わり、10月。すっかり秋になり、とても過ごしやすくなりました。行楽の秋、どこかに出かけてみたくなりますね。ところで、可児市の花は「さつき」と「バラ」。両方とも5~6月が見頃ですが、バラはこの季節も、もう一つの見頃なのです。特に花一輪の美しさと香りを楽しむなら秋だといわれます。花フェスタ記念公園に足を運んで、思い切りバラの香りを楽しむのもいいですね。今日はそんなバラのお話。

6月のある日。設備保守点検の委託会社のSさんに、後ろから呼び止められました。 「局長、局長。館長のバラってご存知ですか」 「館長のバラ?そんな名前のバラがあるのですか?」 「ちょっとこちらに」と、言われるままについていくと、外は雨が降っていました。建物の軒から雨越しに覗きこむと、 「ほれほれ、あの木の向こうにかすかに茎が見えませんか?あそこにほんのちょっと見えるのが、館長のバラなんですよ」 「もうずいぶん前からあそこで生えているのですが、土の養分がなくなってきたのか、元気がなくなってきているんですよ。ちょっとこれから手入れをしていこうと思いますが、よろしいですか」とのこと。 「そんな珍しい名前のバラがあるんですねえ?」「ちゃんとネームプレートがついていますよ」私は、学術的にそういう名前のバラがあるのだと思い込みました。 「そういう名前のバラなら、まだまだ大きく咲き誇ってもらわないといけないので、特に大事にしてあげてください」と伝えました。

そして、あくる日館長にその話をすると、「あー、あのバラは 多文化共生センター「フレビア」がオープンしたときにもらった鉢植えで、アーラの職員がそこに植えたんですよ」と。「えーっ。館長のバラとは、館長が持ち帰ったバラから来ている名前だったのですか」 名前の由来がわかると同時にびっくりしました。なぜなら、そのバラは、私が12年前に担当していたフレビアで、来場者に記念配布した「バラ」だったのです。「あのバラが、このアーラで育っていたとは」驚きと、とても不思議なご縁を感じました。

その話をSさんにすると、Sさんは「そんな話を聞いたら、ますます元気に、大きく育てたくなりましたね。まずは休みに土壌改良と肥料を本格的にやってみますので、楽しみにしておいてください。きっと大きな花を咲かせますよ」と、頼もしい言葉を返してくれました。

バラといえば、「バラが咲いた」という曲を思い出します。


バラが咲いた バラが咲いた まっかなバラが 淋しかった僕の庭に バラが咲いた
たったひとつ咲いたバラ 小さなバラで 淋しかった僕の庭が 明るくなった


最後にはバラは散ってしまうのですが、僕の心の中には、いつまでも咲いているというマイク眞木さんの歌う名曲です。 1本のバラが、人の心を明るくし、そして心の中でいつまでも真っ赤に咲いているのです。

9月になって、「局長、これこれ見てくださいよ。咲きましたよ。咲きました」と、日々の成長を追った写真を見せてくれたSさん。おそらく毎朝、ここに足を運び、水をやったり草を抜いたり、微笑みながら話しかけ、茎からつぼみ、そして花が咲くまでを見守ってきたのでしょう。まるで孫の写真を見せるかのように「これ昨日のバラですが、黄色と薄ピンクですね」と満面の笑み。Sさんは、まさに、マイク眞木の気分です。奇跡的に花を咲かせたのもSさんの愛情のおかげでしょう。

育くむ喜び。これはSさんとアーラも同じ気持ちです。可児市の子どもたちが、地域をはじめとして様々な人々に支えられて、アーラで何かと出合い、感じていく。そして感じたことを大切に、人として成長し、それぞれの花を開かせていく。
9月21日、アーラ恒例の「森山威男ジャズナイト2019」の開演を前に、「私のあしながおじさんプロジェクト」のチケットの贈呈式がありました。これは、中・高生の子どもたちに、音楽、演劇、落語などアーラで本物の舞台芸術鑑賞を経験してもらおうと、地元の企業や団体、個人の皆様からいただいた寄付をチケットに替えて、直接手渡ししていただくものです。 この趣旨を汲んで、プロジェクトも年々定着してきており、今年度は26件(うち個人3人)から115万円のご寄付を頂戴いたしました。ご寄付いただいた皆様には、この場を借りて厚く御礼申し上げます。また、27年度からは、市と連携して、就学援助やひとり親家庭で児童扶養手当を受けている家庭を家族ごと招待する「私のあしながおじさんプロジェクトFor Family」も併せて実施しています。 昨年度の場合、このプロジェクトでは250人を超える皆さんが、アーラでの鑑賞の機会を得ることができました。

鑑賞した子どもたちからは、寄付していただいた皆さんに対して鑑賞の感想とお礼の手紙が届けられます。ここで、子どもたちの手紙の一端をご紹介します。
「クラシック音楽を生できくのは初めてだったので楽しみにしていました。すぐ近くでひいているのを見ているのが夢のように思えて、1時間半があっという間でした」  「このような演劇をしっかり観るのは初めてだったので、とてもうれしかったです」  「演奏を見て、とても衝撃を受け、自分もドラムをやってみたいと思うようになりました」 「こんな素敵な演奏をきかせてくれたあしながおじさん、大好きです。一生忘れません」    「音楽の楽しさや美しさをたくさんの人に広められるようになりたいと思いました」 「お母さんの笑顔が見られてよかったです」 アーラでのひとときはほんの短い時間ですが、子どもたちにとっては、人生の新たな発見のひととき、家族にとっては大切な思い出のひとときになっていることと思います。地域の皆さんに見守られて、この子どもたちが、こうした体験を通して大きく成長していってくれることが楽しみです。

アーラでは、バースデーサプライズをおこなっています。コンサートや公演で来ていただいた皆さんの中で誕生月の人に、館長が直接その席に出向いて、来場御礼のあいさつをします。そのときに、一輪のバラを「おめでとう」の言葉とともにプレゼントしています。受け取った方は、毎回とても嬉しそうに「ありがとう」を返していただけます。バラには寿命がありますが、サプライズで受け取った人の心の中には、いつまでも元気に咲いてくれることでしょう。 いつか、アーラに咲く館長のバラが元気を取り戻し、いくつも大きな花を咲かすようになったら、本物の“館長のバラ”を、館長から誕生月の皆さんにプレゼントできる日がくるかもしれません。 そのときを楽しみに、皆さんの心の中に美しいバラを咲かせておいてくださいね。


<花を咲かせた「館長のバラ」>