第80回 「クールシェアスポット」としてのアーラ

2018年8月21日

可児市文化創造センターala 事務局長 山口和己

日本列島が猛烈な暑さに見舞われているこの夏、8月3日には名古屋市においてとうとう1890年(明治23年)の観測開始以降最高の40.3度を記録してしまいました。ちなみに、このとき我が岐阜県の美濃市と並んで全国で最も暑い地点となりました。 さらに、本市の両隣に位置する、多治見市では39.9度、そして美濃加茂市では39.1度、さしずめ間に位置する、観測点のない可児市では39.5度とでもいったところでしょうか。しかし、私がお昼時にマイカーで食事に出かけたときの車外温度は42.0度を示していました。 この日、全国で上位7位までが愛知・岐阜・三重の東海三県のエリアに集中したことを地元紙は強調して報道していました。

アーラは、例年岐阜県の「クールシェアスポット」に登録され、そのことが市内外に公にされています。だからというわけではありませんが、特にお目当ての催しがなくても、多くの人がロビーのイスにかけて思い思いのスタイルで快適に過ごしています。 また、目を外に向けると、ロビーに入ればすぐに涼を得られることから、安心して「水と緑のひろば」の水と戯れたり、大きな翼のようなアーラの屋根の庇や芝生ひろばに3本そびえる大きな欅の木の陰のもとで、語り合ったり、携帯電話をいじったり、こちらも思い思いの時を過ごしている多くの人々の姿があります。 この「クールシェアスポット」というのは、県の地球温暖化対策事業の一つで、7月1日から9月30日までの3カ月間、暑い夏にみんなで快適に過ごせる施設・場所に出かけることで、家庭での消費エネルギーを削減するという取り組みです。 これに登録されると県のWEBサイトで紹介等がされるというもので、特に構えて何かをするというものではありませんが、まさにこのアーラでは市民の皆さんが、“家”にいる時と同じような気持ちで憩いを分かち合うスポットとなっています。

地球温暖化が進んでいることを、特にこの夏は思い知らされています。熱中症になったわけではありませんが、私も個人的に農作業等に無理をしないよう、今回は特に気をつけています。いつもは、大体自身で切りを付けようと思ったところまでは多少無理をしてでも済ませてから休憩に入ったりしていましたが、今シーズンはあまりの暑さに、すぐ目の前に熱中症の恐怖が迫り、自然と早め早めの区切りになっています。大量の冷やしたスポーツドリンクは必需品です。 私だけでなく、今回だけは、日本中のほとんどの人たちが切実に地球温暖化の恐怖を強く感じているのではないでしょうか。これまでの異常な高温気象は言うに及ばず、梅雨前線の異常な位置での停滞、そこへの台風乱入による大雨、洪水、土砂崩れ、竜巻等の発生、台風12号の異常な逆進路、どれをとっても以前から指摘されていたような、地球温暖化がもたらすと予想されていた現象と一致します。

気象庁の分析によれば、日本の平均気温は1898年以降、100年あたりおよそ1.1℃の割合で上昇しており、特に1990年代以降、高温となる年が頻繁にあらわれているそうです。 今後も温室効果ガスを多く排出すれば、これから100年後には、気温は現在より3.0℃ほど高くなり、大気に含まれる水蒸気の増加によって全国的に降水量が増加します。この降水量も、気温の上昇がありますから、雪の降る量は減り、雨が降る場合が多くなります。 さらに、気温の上昇は、高緯度にあるほど顕著に見られる傾向があるそうで、北半球の中緯度に位置している日本の気温上昇は、世界の平均と比較すると、それより大きくなると言われています。 そういえば、今から50年くらい前、私が小学生だった頃の記憶を辿ってみると、夏は確かに暑かったけれど、エアコン・クーラーなどという文明の利器は当然我が家にはなく、それでも何とか凌げたような気がします。ただ単に今の自分に堪え性がなくなったというのではないと断言できます。一方冬には、頻繁に多くの雪が降り、雪だるま作りや雪合戦は1シーズンにたくさん経験できた気がします。

この先、8月、9月と日本の夏を過ごしていかねばなりませんが、夜間の最低温度が25℃以上の“熱帯夜”、1日の最高気温が35℃以上の“猛暑日”を何日体感しなければならないのか。過ごしやすい涼しげな秋は本当にやってくるのか。過日、西日本を中心に猛威をふるった豪雨をもたらすような台風や熱帯低気圧が再び到来しないか。心中穏やかでない状態が当分続きそうです。 この原稿を書いているうちにも、岐阜県の下呂市が東海地方一番の高温41.0℃を記録し、少し後に美濃市が同じ気温を記録してこの2市が観測史上2位タイ(1位は埼玉県熊谷市)に位置付けられ、大型の台風13号が関東地方をかすめてその影響で東日本では局地的に大雨が降り、片や西日本は相変わらずの日照りの連続といった状況です。

この異常な夏に対してアーラが何かをできるわけではありませんが、せめて暑さにいたたまれなくなったら、このアーラに立ち寄ってほんの一時でもホッとしてもらえたら、と思います。