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第八十五回 アーラを未来につなげる

可児市文化創造センターala 事務局長 遠藤文彦

早いもので、私がアーラに戻って1年が過ぎ、2度目の春となりました。 今年の春は例年と違い、新型コロナウイルス感染症により、私たちがかつて経験したことがない異様な状況となっています。政府は緊急事態宣言を出し、学校は休校、施設は休館、花見や各地のイベントも自粛や延期となり、賑やかさも華やかさもない中、去っていこうとしています。ニュースは連日深刻な感染状況を伝え、恐怖を増し、明るい兆しは一向に見えてきません。人々はマスクを装着し、お店のレジではビニール越しの応対、外出の自粛要請により人と人が直接会うというコミュニケーションの機会は極端に失われています。少し前まで安心安全な社会で自由に行動できていたことが遠い昔のようで、本当に貴い日々であったように思えてきます。人と人のコミュニケーションの場であるアーラとしては、この変化する社会に、何ができるのか改めて考えさせられる毎日です。 

こうした中アーラの建物も昨年度来、変化の時を迎えています。すでに昨年10月から大規模改修工事は始まっており、3月16日の全館休館からは本格的な工事期間に入っています。現在外からは見えづらいですが、仮囲いで覆われた敷地の中では、建物の内外とも足場が天井まで組み込まれ、至る所で工事が進みつつあります。工事の部品は中国製も多く、製造や部品の納品も遅れる怖れがあると聞きました。工事にも新型コロナウイルスが影響してきているようです。今私は、そんな工事真っ只中の館内事務所で、これを書きとめております。 

ここでアーラの改修工事について少しご説明しましょう。 アーラは2002年7月に開館し、今年度で18年を迎えます。その間、幾度かあった地震、大雨、暴風、雷にも耐えて大きな影響を受けることなく、私たちを温かく包み込んでくれる場所としてどっしりと構えてきてくれました。 改修工事の話をすると「どこを直す必要があるのか」と疑問に思う人もいると思います。一見するとどこも悪くないように見えますが、やはり経年劣化や老朽化に伴い、いろいろな箇所で傷みや不具合が散見されるようになりました。また、設備機器は、社会情勢や技術の変化で時代にそぐわなくなったものやメーカーからの部品の供給がされないもの、法律でも規制されるものも出てきており、さまざまな箇所で交換や更新が必要となってきています。 アーラにおいては、使用中や公演などの最中に設備や機器が使用できなくなることはあってはならないことです。そのため、事後保全ではなく、予防保全により、皆様が安全で安心して利用していただけるようにする必要があります。 

今回の改修工事の目的は、年間34万人の施設利用者の安全を確保するとともに、劇場としての機能を維持し続け、皆さんに末永く使っていただけるようにするために行うものです。施設の機能を維持するためのもので、新しい機能を追加するものではありません。 

まず機能維持としての大きな改修は、空調設備の更新です。これまで、さまざまな部品交換を行って対応してきましたが、十分な温度管理・調整が出来ない状況となってきていることから、全館の空調設備を更新します。また、空調設備の更新と併せて、関連する設備についても分解点検修理を行います。 そのほか、内外壁や床の補修、屋根防水や外部シーリング(目地埋め)改修など雨水侵入対策も行います。 

2つ目は安全対策として構造を強化する改修をおこないます。 東日本大震災において、天井の脱落による被害が多くあったことから、平成26年に建築基準法施行令が改正され、天井の脱落対策の規制強化が図られました。既存建築物についても早急に改善するよう指導があったことから、利用者の安全性を考え、脱落の恐れある天井(特定天井:高さ6メートル超、面積200㎡超)の改修を行います。アーラでは、ロビーフロアーのパブリックエリア、二つの劇場の天井がこれにあたります。そこで、パブリックエリアの天井は躯体の構造物と一体化した強固なものに変え、劇場においては地震が起きた時に脱落した天井を落下させないためのネットを張る「フェールセーフ」という工法を使って整備します。また、腐朽が著しい屋外のウッドデッキも安全のために更新します。 

3つ目は障がいや支援の必要な方も利用しやすいように改修します。トイレにおいては、今まで設置されていなかったオストメイト(人工肛門や人工膀胱保有者の方にも対応できる設備)を1階ロビーフロアーの多目的トイレに設置するとともに、館全体では生活様式の変化に合わせて洋式化を図っていきます。また、階段の手すり設置、スリップ防止などの安全対策に加え、暗所での照明設置などをおこなっていきます。 

そのほか、主劇場、小劇場においては、長年の使用で老朽化している舞台ステージ周りの吊りもの機構や床下機構のチェーンやケーブルリール、ワイヤーロープなどの消耗品の取り換えや舞台機構の調整卓や制御盤など制御機器の更新、照明の調光操作卓など調光装置や負荷設備(電気照明設備)の更新をおこないます。またパブリックエリアの照明や両劇場の客席用照明はLED化し、省エネ化とメンテナンスの向上を図っていきます。 

以上のようにアーラが現状の機能を維持し、安全に安心して未来へバトンをつなぐために絶対しなければならないことを優先した工事の内容となっているわけです。工期は、劇場エリアは12月末まで、それ以外の施設については、9月末までの完成を目指しています。この期間、大変ご不便をおかけしますが、ご理解の程よろしくお願いいたします。 

新型コロナウイルス感染症がいつ収束するのかわからない今、とても不安な日々を送っていらっしゃることと思います。今できることは、人との接触を極力減らすことです。アーラにおいてもできる所から職員の在宅勤務(テレワーク)を試行しています。接触を控えるためにも有効な働き方であると多くの会社で取り入れられています。少し前までの社会ではまだまだ先の働き方だと私自身考えていましたが、この事態が収束した時に、果たしてこれまでの働き方に戻るかといえば、こうした働き方もどんどん取り入れられ、人と人とが直接接しないで済む社会が進むことは間違いないと思います。 

しかし人として生まれてきた以上は、「またあの人に会いたい」「あの人の声を聞いてみたい」「あのわくわくする感動を味わいたい」という気持ちになるものです。何度映像を見ても、何度音響機器で繰り返して聞いても、演劇、音楽など文化芸術、やはり同じ空間で間近で観る、聴く、出会うなど生の迫力には敵いません。そして、友人や知り合いとも目を見て直接話すことには何にも代えがたい充実感があります。アーラはそんな皆さんの気持ちに応えていける施設でありたいと思いますし、そのための施設を私たちは維持してつないでいきたいと思います。 

水と緑の広場では青空のもと子供たちの笑い声が聞こえ、パブリックエリアではテーブルを囲み打ち合わせする人々や劇場での公演を待つ少し高揚した人。賑やかで華やかなアーラの姿を皆さんにお見せできる日を、楽しみにしております。 新型コロナウイルスが一日も早く収束し、新しくリニューアルオープンする時には、アーラに皆さんの明るい笑顔があふれることを願っています。