ごあいさつ

劇場経営の現場から ―アーツマネジメントの活きた理論構築を。

可児市 文化創造センター 館長兼劇場総監督 衛 紀生

2007年4月に非常勤で、県立宮城大学事業構想学部・大学院研究科の教員と兼務するかたちで可児市文化創造センターalaの館長兼劇場総監督に就任しました。可児に住居を構えて移住して、日常生活の構えもその年の3月には整えました。その年は、前館長の事業を粛々とこなしながら、翌年からの劇場経営のスキームを仕組む1年間でした。

硬直化した日本の公立劇場の経営を、どのような仕組みで、いかに180度展開させるかが、私が自身に課した1年間の仕事でした。その甲斐があって、常勤となった3年目には総務大臣賞を受賞し、4年目には文化庁から「地域の中核劇場音楽堂」としての5年間の補助を採択され、5年目を終えて6年目の2013年には国の「特別支援劇場音楽堂」としての認知を受けることが出来ました。

県立施設、政令指定都市、中核都市の劇場ホールのなかで、人口10万人の小さな町としては身に余る栄誉であると考えています。また、それだけに、日本中に圧倒的に多く存在する中小都市の劇場ホールのトップランナーとしての責任の重さも感じています。それでも、アーラのマネジメントとマーケティング、それに劇場経営に向かう姿勢は、予算が少なければダウンサイジングして、どのような規模のまちの施設でも導入できる普遍性を持っています。

また、大都市圏の劇場音楽堂でも取り組める仕組みばかりです。誰か強烈なカリスマがいなければ成立しない類の劇場経営の仕組みではありません。そのあらましは、ウェブサイト内の『館長の部屋』と『公共劇場に舵を切る』に綴っております。これが劇場経営の現場からの理論構築であると考えています。

2012年度で来館者数は438,000人、観客聴衆はそのおよそ10%と、就任時との比較では来館者数で1.7倍、観客数で3.2倍となっています。これは私が構想して、進めてきた「お客様の経験価値こそがすべて」という創客経営の成果であり、昨年度で年間423回を数えるアウトリーチとワークショップなどの市民に関わる事業をまとめた「アーラまち元気プロジェクト」によるブランディングの成果だと思っています。

就任当初に構想した「社会貢献型劇場経営(Cause Related Management)」が結実して来ていると実感しています。これからも可児市文化創造センターalaの経営手法は更に進化します。「もっと市民が喜ぶことは、利便性のあることは、こころを休めるのに必要なことは」と考えて、職員と共に知恵を出して仕組みをつくってゆきます。

劇場が市民の「生きる意欲」の生まれる場所でありたい。「望む力」の生まれる場所にしたい。「いのちの格差」のないまちにする装置でありたい。私たちアーラ職員一同、そう強く願って、今後も「21世紀に必要な劇場のかたち」をデザインしていきます。あたたかく見守っていただければ幸甚です。

このページの上部へ