可児市文化創造センター(Kani public arts center ala)

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集客から創客へ☆回復の時代のアーツマーケティング

第一章いまこそアーツマーケティングの導入を/創客へシフトせよ (3)

たとえば可児市文化創造センターでは、年始のニューイヤー・コンサートの前にフルコースのビフォー・ディナーを実施したが、その試みの反応を探るために公演アンケートに「公演の前後に同行した方と会食やお茶をしますか」という項目を設けた。その結果、「必ずする」から「時々する」までを集計すると60%のお客さまがそのような行動をしていることがわかった。また、「食事つきの企画があれば参加したいと思いますか」という問いにも60%の「参加してみたい」との回答があった。そのリサーチ結果が、「ラブレター・チケット」や「アニバーサリー・チケット」、「ホットファミリー・チケット」という食事つきライフスタイル提案型チケットの企画やレストラン予約が可能なウェブ設計に結びつくことになった。(詳細は後述する)
これがマーケティング・リサーチとアーツマーケティングの関連を示す一例である。マーケティングの使命とするところは、行動や習慣に変化をもたらすように働きかけることである。劇場経験をライフスタイルに組み入れることで「豊かさとゆとり」がもたらされると提案するのもまた、アーツマーケティングの任務といえる。顧客のチケット購入行動や鑑賞行動や楽しみ方のありようを探って、より良い「劇場体験」を演出し、いかに「顧客価値」を高品質化するかを追求するのが創客のアーツマーケティングである。
アーチストや彼らが所属する団体は、自分たちの作品をこよなく愛しているだろうし、ゆるぎない確信を持っているだろう(実は、そうでない場合にも数多く遭遇するのだが)。したがって当然のごとく製品(作品)志向であるが、だからといって経営側(マネージャーやマーケッター)がそこから一歩も踏み出さないでいるのには到底承服できない。マネージャーやマーケッターはアーチストの従属物ではないのだ。劇場・ホールに集まった人々を作品や舞台で教育したり、啓蒙したり、洗脳したりするのが目的ならば極端な製品志向でも良いのかもしれないが、芸術団体や劇場ホールは、教育団体でなければ、宗教集団でもなく、学校でも教会でもない。
コトラーは、作家マリヤ・マンズの次のような痛烈な意見を引用している。(以下『Standing Room Only』より)「今日のアーチストは公衆に向かって、『もしこれが理解できないなら、あなたはばかだ』と言っている。しかし私は、そうではないと断言する。もしあなたが苦労してアーチストに近づかなければならなかったとしたら、それはアーチストの落ち度なのだ」。そしてコトラーは「言い換えれば、アーチストと、アーチストの作品を上演している団体は、観客に対して責任を負っているということだ。アートを公衆に近づけ、公衆をアートに近づける努力は、低俗な欲望への迎合を示していない」とマーケティングを擁護する意見を述べて、「人間の成し遂げた最高のものに触れる経路を提供し、もっと基本的なことを言えば、人間の持つ人間性に触れる機会をもたらしているのだ」とアートとマーケティングのあいだに横たわる「神話」を完全に否定している。
さらに「マーケティングはアートと関連する際にも、アーチスティックなビジョンを脅かすものでも、弾圧するものでも、放棄するものでもない。マーケティングは押し売りでもないし誇大広告でもない。マーケティングは取引を作り出し、その取引を当事者双方にとって利益的なものにしようとする行動に影響を与えるための、健全で効果的な技術なのだ」と結論づけている。
マーケティングの目的はターゲットたる顧客の行動律に刺激を与えて何らかの「変化」をもたらし、当事者相互にWIN-WINの関係を創出することにある。

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