2010年3月12日にSam Perkins(サム・パーキンス)さんとGail McIntyre(ゲイル・マッキンタイア)さんと館長による「衛紀生館長のおしゃべりシアター『町が元気になる処方箋』」がアーラで行われました。その模様を掲載致します。
Sam Perkins:
ウエストヨークシャー・プレイハウスにはCostume Hireという衣裳部屋(衣裳を保管する建物)があります。その衣裳部屋はウエストヨークシャー・プレイハウスで作った舞台衣裳をそのまま保存して、一般の方々に貸し出しするというところです。その建物のFirst Floor(=2階 ※イギリスでは2階のことをファースト・フロアと呼びます)はホコリにまみれていてこれまで使っていませんでした。そこでこのファースト・フロアを改修して12才から19才までの若者たちが活用できるような場所にしようということにしました。ここに2つのパフォーミング・アーツの空間、それから1つの美術の空間、それからキッチンを作りました。かかった費用は60万ポンドです。(※1ポンド=150円)このファースト・フロアは、2009年の1月23日にオープンしました。
ターゲットとした若者は、“NIET(ニート)”と呼ばれる子たちです。NIETとは、“Not In Education or Training”、つまり教育も訓練も受けていない人たち、そういう若者たちを総称してニートと呼んでいます。このニートの若者たちは、ちょっとした軽犯罪を起こしたり、孤児院に世話になっていたりなど、そういった非常に恵まれない環境にあります。この若者たちをターゲットとして、年間3学期制のコースをつくりました。
1学期は12週間の設定で、このコースは15才から19才の若者たちを対象としました。プログラムの内容はいうと、まずはもちろん劇場がありますので、その劇場を活用したものがあります。劇場で上演されるお芝居をまず観てもらい、それに触発されて今度は自分たち自身の作品をつくるということをします。また、それに加えて“アーツ・アワードという”芸術に関連した資格が与えられる2年間のコースを設置することにしました。このコースは、Breeze Arts Foundation(ブリーズ・アート財団)の協力により運営され、金、銀、銅とランクされる資格なのですが、このコースのキーパーソンとなっているのが、ドラマ・ワークショップのリーダーの方々です。このドラマ・ワークショップ・リーダーは、コースに参加する子供たちの、例えばどのようにウエストヨークシャー・プレイハウスまで来るのか(交通手段)だとか、ランチはどうするかだとか、そのようなことも全て面倒をみます。このワークショップ・リーダーのサブとして、サポート・ワーカーもいます。サポート・ワーカーはブリーズ・アート財団より無料で派遣されます。
このコースは、最高で3学期まで受講できます。このコースは、ニートと呼ばれる彼らのように社会からはじき出されてしまった若者たちの人生を変えていくことを目的としています。このコースに参加した男の子で、10才のときにウエストヨークシャー・プレイハウスのバックステージツアーを体験した子がいました。その子は、このコースを受講した後、劇場技術の資格をとるカレッジに進学しました。孤児院にお世話になっていた女の子は、コース終了後、カレッジでメディアのコースへ進学しました。他にも、不登校の15才の少年は、学校は嫌いでもファースト・フロアのコースには行きたいということだったので、ファースト・フロアでは、“1週間に3日間学校へ行ったら2日間ファースト・フロアに来ていいよ”という条件をつけて受講させました。彼はその条件のもといまも順調にコースに通っています。このように、ファースト・フロアでは、こういった若者たち、何もすることが見つからなかった若者たちを、どんどん開発して社会に対応できるような形にして社会へ戻すために努力しています。
ブリーズ・アート財団は、ファースト・フロア以外にもいろいろな形でウエストヨークシャー・プレイハウスのコミュニティ・ワークをサポートしています。そのひとつに、若者のウエストヨークシャー・プレイハウスでのインターンがあります。これは18ヶ月間をかけてウエストヨークシャー・プレイハウスで行われる様々なアート活動のアシスタントすることで、舞台制作に関わるあらゆることを学ぶというものです。
また、ファースト・フロアには“Open access day(オープン・アクセス・デー)”という日があります。これは、どんな若者でも、土日そして週末など、学校が休みの日にファースト・フロアで開催されるドラマ、音楽などのワークショップに自由に参加することができるというものです。これには身体障害者の若者なども参加するので、その日は本当にいろいろなタイプの若者、いろいろな背景の若者たちが集まります。そこで新たな出会い、ネットワークが築け、友人ができたりします。
今回、ファースト・フロアを中心にお話しさせていただきましたが、ここでウエストヨークシャー・プレイハウスがコミュニティ・プログラムを通じて何をしているかということをまとめたいと思います。ウエストヨークシャー・プレイハウスが行うコミュニティ・ワークの目的は、劇場やアートをツール(道具)として使って、そこで人々が自己発見をしていくこと、また自信をつけていくこと、自尊心を養っていくこと、それを目的としています。本当にこの劇場やアーツを単純に使って、自己発見をしていくことそれがこのコミュニティ・ワークの目的です。それはきっと衛館長のしているこのアーラでも同じではないでしょうか。




