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「創客の劇場経営 ― 人間を中心に据えるマーケティング」

第一章 エスキモーは氷を買うか。

岐阜県公立文化施設協議会の合同研究会で、文化庁芸術文化課文化活動振興室長の門岡裕一氏と(社)日本芸能実演家団体協議会(芸団協)の芸能文化振興部長の大和滋氏と話をする機会をえた。門岡氏からは、戦後すぐの昭和22年に「教育基本法」が制定されたころに文化芸術と教育が関連づけられては考えられていなかった。しかし、昨今では、「文化芸術振興基本法」や文部科学省の初等中等教育局にコミュニケーション推進会議が設置され、芸術表現体験の必要性が論議されているように、コミュニティの崩壊をはじめとする環境の変化、すなわち時代が大きく変化してきていることで、文化芸術が社会形成のための施策として語られ始めているのではないか、という意味の発言があった。同様に、大和氏からは、彼がこのところ一貫して推進している「劇場法」が必要になったと感じたモチベーションの背景には社会の仕組みの大きな変化がある、との主旨の発言があり、ともに「時代の変化」がニーズとしてあり、そのニーズからの要請によって文化芸術の専門家やそれを専らとする施設にも「変化」が求められているのではないか、というとりあえず結論に至った。短時間の鼎談であったために論議の深化は得られるはずもなかったが、非常に興味深い話となった。

私はこの世界に関わってから45年になる。地域に出て、地域文化行政に関わってから23年、確かに時系列で輪切りにすれば、社会の在り様もアーツの外部環境も激変している。阪神淡路大震災の折、「演劇を被災した子どもたちの心のケアと、孤独死を一件でも減らすために仮設住宅の中高年のコミュニティづくりのために演劇的な手法を」という私からの提案に、若い演劇人から猛烈な反発を食らい、神戸の地元演劇人からは「売名行為」と口汚く罵られたときから既に17年が過ぎている。とくに演劇人の意識の変化は、まさしくコペルニクス的な大転回ではある。ただ、だから何をすべきなのか、どのように考えるべきなのか、どのような行動律に従うべきなのか、は今もって不明である。

「誰かに」変わってもらいたかったら、まず自分が変わらなければならない。その「誰か」は、目の前にいる観客であったり、地域住民であったり、行政であったり、国民すべての意識であったりと、現在その人間が置かれている立場によっていろいろであるだろう。であるが、これだけは言える。日本において文化芸術が否応なく抱え込んでいる環境を変えようとするならば、まず自らが抱え込んでいる「常識」を変えなければならない。ジョン・スポールストラの「ジャンプ・スタート・マーケティング」が物語るのは、まさしくそのような「常識」とどのように対峙するかである。ミッションに従って思考し、行動すれば、エスキモーはかならず氷を買うのである。


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