他の機関との戦略的コラボレーションによる経営基盤の強化(その5)。
芸術団体同士の経済効率を企図したコラボレーションは、まだ日本では皆無ではないだろうか。フィリップ・コトラーは「様々な管理機構や一般経費を結合することで、アーツ団体は規模の経済
コンコーディアはASOと契約を結び、高度なプロフェッショナルであるASOのマネージメント・チームが経営機能を担うことになった。2つのオーケストラは、同じ事務局長、同じマーケティング・ディレクター、同じ住所、ほとんど同じスタッフを分かち合っている。それぞれの団体は、独自の便箋、郵送先名簿、ロゴを持っている。コンコーディアは独自の理事会と会計帳簿を保持し、独自の芸術的未来像を追い求める。(『Standing Room Only』)
このコラボレーションによって、コンコーディアは40%の運営費を節減でき、ASOはマネジメント・サービスの提供によって副収入を得ることができた。二つのオーケストラの事務局長であるユージン・カーは、「私たちがやろうとしているのは、資産を一体化することでアーツ経営の新しいやり方を創造することです。1ダースの団体があって、それぞれが毎年少数回の事業を行っている場合に、事務局長が12人いて、12のオフィス賃貸契約、12のマーケティング部門があるなんて、ばかばかしいことに思える。必要なスタッフすべてを雇えるほど余裕のある団体はひとつとしてない」と述べている。
このコラボレーションは、芸術的理念が頑迷であり、比較的内向きの日本の芸術団体には難しい経営課題と言えよう。ただ、劇団とオーケストラ、劇団とダンスカンパニー、美術館とオーケストラ、オペラ・カンパニーとオーケストラなどが、顧客共有のフェイズでの一部連携は可能なのではないか。お互いの顧客ボリュームを、その相乗効果で膨らませることができる。このことは、前述のフィラデルフィアの調査結果で証明されている。「こうした発見はフィラデルフィアに限ったことではない。別の調査では、地元団体間のシナジー効果の可能性を探るべく、大クリーブランド
複数の劇団、複数のオーケストラ、複数の劇場間のコラボレーションも、創客へのシナジー効果が期待できる。東京は、確かに大きな市場を背景に持っている。東京圏(神奈川、千葉、埼玉の通勤圏を含む)は3400万人が住んでいるマーケットある。巨大なマーケットを背景にしてはいるが、しかし、エンタテイメント・ビジネスが多様化かつ質的に高度化している現在、生き残りをかけたサバイバルの真只中にいるという自覚は芸術団体・劇場には必要だろう。フィリップ・コトラーの以下の言葉を、私たちは重く受け止めなければならない。
フィラデルフィアとクリーブランドの調査から出た結論は、アーツ団体は自分たちの持つ境界線を越えて物事を考えるべきであり、また、団体が共同事業
に参加することは、観客の消耗ではなく、むしろ活性化となる、ということだった。アーツ団体は、ジョイント・サブスクリプションやコラボレイティブ・ボックスオフィス、その他の共同プロモーション的努力を行うことで互いに得意客を減らし合うのではないかと心配するが、折々に相手の団体に観客を取られるデメリットよりも、こうしたテクニックを通して新しい得意客を獲得するメリットの方が大きい場合が多いのだ。




