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集客から創客へ☆回復の時代のアーツマーケティング

第五章 戦略的アライアンスの展開―「機会」を創り出す経営。(2)

コラボレーションという言葉は非営利アーツ団体によって広く使われている言葉であり、様々な共同活動を意味する。全市的なアーツ・フェスティバルや、各イベントへの企業スポンサーシップがその一例だが、こうした試みは概して戦術的であるのがその本質であり、一般的に定義されるようなミッション、構造、計画努力を持たない、非公式な関係であるのが特徴だ。情報は必要な時に分け合い、権限はそれぞれの団体によって保持されるため、事実上、リスクはない。資産も、達成した成果の見返りも、別々になっている。
 それとは対照的に、我々はコラボレーションを、恒久的な献身と広範囲な関係を含む戦略的同盟であると考えている。共通のミッションを遂行するために作られた新規のコラボレート構造に従って、権限が決められる。当事者たちは総合計画に携わり、明確な意志疎通経路を作り上げる。彼らは資産を共同管理し、達成した成果の見返りを分け合う。コラボレーションの各メンバーが自分の資産(これには各団体の評判も含まれる)を寄与するので、他の非公式で短期の関係と比べ、各自が受けるリスクが多大である。
 上手にデザインされ、上手に実行された戦略的コラボレーションは、アーツ団体がそのミッションや質を妥協することなく、顧客ベースの拡大、新しい財源の開発、経費の削減を行うのに役立つ。
(フィリップ・コトラー&ジョアン・シェフ・バーンスタイン『Standing Room Only』)

他の機関との戦略的コラボレーションによる経営基盤の強化(その1)。

 『How the Arts Can Prosper Through Strategic Collaborations』(芸術とビジネスのコラボレーション)でフリップ・コトラーとジョアン・シェフ・バーンスタインは、60年代半ばから約20年間つづいた、アメリカの非営利芸術団体の右肩上がりの拡大のあと、その盛況がすっかり影をひそめてしまったことを報告している。87年には非営利芸術団体の興行収入はスポーツのそれを上回っていたし、潤沢な資金をバックにして芸術団体は意欲的なプログラムを次々に打ち出していた。このまま観客数も寄付金も右肩上がりで増え続けていくだろうと、その時期には楽観的な空気が非営利芸術団体を覆っていたという。
 それが一転厳しい経営環境におかれたのは、政府からの補助金の大幅削減、企業メセナの特定公演に限定した寄付金の拠出、あわせてアメリカ人のライフスタイルの大きな変化が非営利芸術団体を襲うことになった、と報告している。
 この状況に対しての解決策のひとつとして、 『How the Arts Can Prosper Through Strategic Collaborations』で提案されているのが、戦略的コラボレーションと呼ばれる手法である。

戦略的コラボレーションとは、公演の都度、寄付金を出してもらうのではなく、参加する全団体が恩恵に浴することができる、集中的かつ長期的な協力体制を意味する。

計画と実行に失敗しなければ、戦略的コラボレーションは、顧客層の拡大、新たな資金源の開発にきわめて有効である。各団体の使命を妨げたり、公演の質を落としたりすることなく、コストも切り詰められる。

日本の芸術文化、とりわけ今日の公共文化施設を取り囲む環境は、アメリカとは違った意味で厳しい状況 = レッドオーシャンの状態におかれている。行財政改革を背景とした指定管理者制度と、前述したような経費節減のみにシフトした制度運用が、施設の経営環境に強い制約を与えている。施設側が経費削減によって萎縮している状態である。指定管理者に指定されるには、まず予算の削減を前提として経営を考える。一見、正当な感じではあるが、「住民サービスの向上」を置き去りにしているという点では、片肺飛行なのである。いわば、経費削減による経営の萎縮は、ともかくも予算の枠を圧縮して決めてから、その額に合わせるかたちでサービスを考えるという自主規制までも生み出している。「住民サービスの向上」とはそのようなものなのか。
指定管理者が萎縮してしまっては縮小再生産を繰り返すことになり、「住民サービスの向上」は遠のくばかりになってしまう。この先にあるのは、事業の廃止と貸館のための管理職員だけを配置するだけの、まぎれもない「ハコモノ」になる将来像である。さらには「廃館」までも視野に入ってくる。外部環境が悪いときほど、それまでの「常識」を逸脱した経営を考えるべきである。指定管理者を「攻めてとる」くらいの気持ちがなければ、行き着く先はおのずと決まってしまう。職員に経験知や技術集積のない「その日暮らしの施設管理」に向かうしかないのだ。
「常識を逸脱する」とは如何いうことなのか。それは「機会」を創出するということだ。従来のように行政からの指定管理料のみに依存したり、行政の下請けのように存在するのではなく、経営資源と資金源を多様化し、協働できる組織(行政・企業・NPO)と手を携えて事業に拡がりを持たせる知恵と工夫と行動が必要になってくるのだ。その協働を経年化する仕組みをつくる、それがいま必要とされる「戦略的アライアンス」である。
 まずは、みずからをどのように位置づけるかである。前述したSWOT分析をしてみるのも良いだろう。みずからの施設を「地域文化の振興」のために福祉配給的に文化事業を提供する、狭義にと定義づけてしまうと、公共文化施設の存在自体が目的化されてしまい、芸術文化が潜在的に持っている社会的機能を劇場・ホール内に封じ込めてしまうことになる。前述したように、公共文化施設とは「政策目的」ではなく、多様な住民の潜在的ニーズに応えるための「政策手段」でなければならない。何らかの地域の社会的ニーズを反映した政策を実現するための手段(装置)として、みずからを位置づける必要がある。たとえば、SWOT分析をすれば、みずからが行政出資型財団であることが「強み」にも「弱み」にも、また「機会」にも「脅威」にもなるだろう。

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