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集客から創客へ☆回復の時代のアーツマーケティング

第五章 戦略的アライアンスの展開―「機会」を創り出す経営。(1)

指定管理者制度を「機会」とする経営を。

行財政改革の一環として「官から民へ」の掛け声で地方自治法の[公の施設]が改正されて、指定管理者に施設の管理・運営を代行させる指定管理者制度が公共文化施設にも適用されることになった。当初、この指定管理者制度をビジネスの「機会」とするのは、民間企業だとされていた。「公共は政府の独占物ではない」という論理は正しいが、だからと言って「民」が「公」より優れているというのは幻想である。「公か民か」ではなく、「官」も「民」も平場で「優勝劣敗」を争うべきであると、私は思っている。民間企業が指定管理者になって従前と同レベルの管理・運営をコスト減でやっている例は数多あるが、ブランド化を推し進めて、広義のシティ・プロモーションに成功した事例は皆無である。また、そのようなブランディングを推し進めようとする経営を構想している民間業者も皆無である。
管理経費でかかるものはかかるのであるから、コスト減の原資は、概ね人件費の削減によるものである。これは「高止まりの人件費」と「無駄の削除」ということで一見すると合理的に思えるのだが、文化施設においては「生かさず殺さず」の状態に陥ることを意味している。公共文化施設は行政財産であり、これを管理・運営する指定管理者にとっての経営資源は、そこで働く人間に関わる技術集積や人脈や経験知という無形資産しかない。この集積をみずから放棄するのが、現行の指定管理者における契約職員、非常勤職員、アルバイトなどの非正規雇用者の増大である。公共文化施設における指定管理者の雇用形態の選択は、みずからの資産を蓄積するのか、放棄するのか、の二者択一をすることと同義である。むろん、資産ともならない無能な職員に高止まりの給与を払うのが「ムダ」であるのは言うまでもないのだが。

指定管理者制度は、専ら経費節減のために導入されたものではない。「住民サービスの向上」も制度導入の重要な目的のひとつとなっている。現況のように経費削減が指定管理者制度の主目的のように誤解されている根拠は、総務省自治行政局長の「地方自治法の一部を改正する法律の公布について」(通知)の下記のようなくだりである。

今般の改正は、多様化する住民ニーズにより効果的、効率的に対応するため、公の施設の管理に民間の活力を活用しつつ、住民サービスの向上を図るとともに、経費の削減等を図ることを目的とするものであり、下記の点に留意の上、公の施設の適正な管理に努められたいこと。

 この通知は、「官は非効率、民は効率的」という前提で書かれていることは明白であり、そのバイアスが「民間の活力を活用しつつ、住民サービスの向上を図る」というくだりに良く表れている。私はこの「前提」が必ずしも正しいとは思わないが、元来、文化施設やスポーツ施設は、民間が地域に供給できないから、あるいはしないから、公共(自治体)が設置したのであり、その大前提をすっぽりと欠落させている。民間企業はそれらの施設を設置するために充分なマーケットが当該地域にないから「進出」しなかったのであり、それらの施設がある程度の非効率性をもっているのは設置前提として厳然とあるのだ。効率的に経営できて、利益を見込めるのなら、ショッピングセンター・チェーンのように全国くまなく進出しているはずだし、競合さえ起こっているに違いない。


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