アグレッシブに「変化」を取り込む経営。
企業・組織は、その業種業態にかかわらず、売り上げ、ひいては利益を上げていくには、次の3つの営業活動に従事しなければならないと言われている。
■見込み客に働きかけ新規客として獲得し客数を増やす。
■既存客に働きかけて購買頻度を増やしてもらう。
■既存客に働きかけて平均購買金額(舞台芸術にあっては購入枚数)を増やしてもらう。
フィリップ・コトラーとジョアン・シェフ・バーンスタインは『Standing Room Only』の中で上記と同様のことを以下のように書き記している。
1. 現在すでに参加している人々に対し、より頻繁に同種のイベントに参加するよう促す方法。この戦略がサブスクリプション・シリーズのベースとなっており、既得の顧客に参加を奨励している「セコンド・ステージ」やその他の追加パフォーマンスを押し進める陰の推進力になっている。
2. 現在の参加者に対して、他のイベントやアート形式を提案する方法。この戦略の目的は、現在の参加者に向けて他のアート形式や他の団体を紹介すること。古典演劇の得意客を、モダンダンスや実験劇のパフォーマンスに勧誘するなどがその例である。この戦略の実行者は、それぞれ個別の団体、コラボレート下にある複数団体、メンバー団体の提供物すべてをプロモートする劇場組合などの統括団体が挙げられる。
3. 現在参加していない人々を、参加者にする方法。目的は、パフォーミング・アーツのイベントに参加する人口全体を増やすことだ。この目的を達成するためにするべきことは、例えば、公園での無料コンサート、ターゲット・グループに向けた特別イベント、などが挙げられる。
さらに補足して次のように述べている。
上記の戦略の中で、最初の戦略が最も達成しやすい。2番目はもう少し難しく、顧客行動
を変えることが求められるだけでなく、団体間の協力も必要になる。3番目の戦略は最も難しい。参加していない公衆の持つ基本的なアティテュードや、彼らのテイストなどを変える必要があるからだ。
もっと外部へと目を向けなければならない。顧客に対しても、経営面にあっても、価値創造の「機会」を創り出すことが必要ではないか。ましてや芸術団体や公共文化施設は非営利組織である。大切なのは経済的な収益ではなく、どれだけの「変革された個人」(ドラッカーの主張する非営利法人の成果)の創出機会を提供して、新しい価値(変革された個人)を創造してきたか、ではないだろうか。その成果の蓄積が経営に「機会」をもたらし、ブランディングを進捗させることになるのである。
改正地方自治法によって指定管理者制度が導入され、新公益法人改革関連三法も2008年12月1日に施行され、劇場(事業)法も水面下で検討されているなど、劇場・ホールを囲む外部環境はここ数年で劇的に変化しているし、今後も変化していくだろう。この変化に対応できなければ、公共ホールといえども「退場」の危機に瀕するであろうし、現に「退場」を検討している自治体が複数に上っていると聞く。
P・F・ドラッカーの言うように、現代のような「乱気流の時代」にあっては、変化はドッグイヤーどころではない、ブリンクイヤー(瞬きのあいだのように)で止む間もなく人間や組織を襲ってくる。「変化はコントロールできない。できるのは、その先頭に、立つことだけである」(ドラッカー『チェンジ・リーダーの条件』)。外部環境の変化はメガトレンドであり、リスクに満ちている。一人の人間やひとつの組織が変化をコントロールすることは不可能である。したがって、生き残りのためにはみずから変化の先頭に立って、みずからを陳腐化させるほどの連続的な自己の組織改革と事業の仕組みの改革を続けなければならない。
「明日のことはわからない。わからないからこそ、自分で明日を作ることが必要となる。自分で自分を陳腐化しなければならない。そのほうが、結局はリスクが小さい」
『チェンジ・リーダーの条件』
「変化」とは「機会」である。「変化」を怖れているようでは、時代に取り残されて立ち尽くすしかなくなる。組織がもっとも怖れるべきは機会ロスである。外部環境の「変化」が「機会」であるように、みずからの「変化」もまた「機会」である。指定管理者制度という外部環境の「変化」に対してみずからを「変化」させ、その「変化」がさらなる「機会」を生む契機となる、という循環を起ことでしか、激しい「変化の時代」を生き残る道はないのである。つまり、みずからが「変化」の先頭に立つ、ドラッカーが言語規定したチェンジ・リーダーになることである。




