米国の年間予約会員制が機能しなくなってきていることはフィリップ・コトラーやジョアン・シェフ・バーンスタインによって報告されているが、ジョアン・シェフ・バーンスタインによれば「多くの人が『指定』席や定期会員への割引よりも、『座席を選べる』柔軟性や選択権に高い価値を置いていることが明白になってきている」(『芸術の売り方』)とその理由を述べている。また、一ジャンルに執着する観客がベビーブーマー・ジュニアを中心に減少していることも報告されている。このトレンドは米国だけのものではないだろう。
バイキング・バイ・チケットも未着手ではあるが、拡大した2008年度のパッケージ・チケットの動き方を分析して動かそうと考えている。パッケージ・チケットにはほとんどの公演が網羅されているが、クラシックと演劇、演劇とポップス、ジャズと演劇のように分野をまたいで鑑賞機会を持ちたいと思うトレンドは今後ますます強くなっていくだろうし、「柔軟性や選択権に高い価値を置いている」顧客が将来にわたって多くなることも予想できる。
バイキング・バイ・チケットに類する制度は、在京のオーケストラ団体はもうすでに導入しているが、それをもう一歩進めて異なるジャンルのチケットを自分の好みやスケジュールに合わせて5ないしは6公演をチョイスできる仕組みだ。ジャンルをまたぐということが大切なコンセプトだが、地域の公共劇場・ホールの場合、ワンステージ公演がほとんどであり、日程の調整はピンポイントとならざるをえない。この忙しい時代にピンポイントで日程調整するのは容易なことではない。劇場の事業日程に自分のスケジュールを合わすのではなく、自分の日程に合わせて事業を選択する行き方もありうると考えるのである。
さらに、2009年度からは、パッケージチケット購入者には、そのほかの公演をアラカルトから選んでプラスできるシステムを動かし始める。20%OFFに設定している。別の言い方をすれば、パッケージチケットを購入した方には、もう1枚が20%OFFで購入できる権利が発生する、ということだ。むろん、パッケージに入っている公演をもう1枚買い足して、友人と見に来るプランを組み立ててもかまわない。ただ、このプラス・アラカルトは、分野を超えてクロスオーバーする鑑賞者を創出する狙いがある。可児のような中小都市では、演劇だけの愛好者、クラシックだけの愛好者、ではなくて、良いものなら何でも参加しようとする顧客層を形成しなければならせない。
また、むろん、ライフスタイルが変化していく今後は、パッケージ・チケットのキャンセルシステムも同時に動かさなければならない。劇場内で他のチケット購入やレストラン利用に使用できるバウチャーに交換できるか、ウェブ内で買い手を探せるページを立ち上げるか、そのいずれかになるだろうが、はじめからライフスタイルと日程の都合に合わせて、自分で公演をチョイスしてパッケージできるチケット設計も近々必要になるだろうと思っている。
バイキング・バイ・チケットも未着手ではあるが、拡大した2008年度のパッケージ・チケットの動き方を分析して動かそうと考えている。パッケージ・チケットにはほとんどの公演が網羅されているが、クラシックと演劇、演劇とポップス、ジャズと演劇のように分野をまたいで鑑賞機会を持ちたいと思うトレンドは今後ますます強くなっていくだろうし、「柔軟性や選択権に高い価値を置いている」顧客が将来にわたって多くなることも予想できる。
バイキング・バイ・チケットに類する制度は、在京のオーケストラ団体はもうすでに導入しているが、それをもう一歩進めて異なるジャンルのチケットを自分の好みやスケジュールに合わせて5ないしは6公演をチョイスできる仕組みだ。ジャンルをまたぐということが大切なコンセプトだが、地域の公共劇場・ホールの場合、ワンステージ公演がほとんどであり、日程の調整はピンポイントとならざるをえない。この忙しい時代にピンポイントで日程調整するのは容易なことではない。劇場の事業日程に自分のスケジュールを合わすのではなく、自分の日程に合わせて事業を選択する行き方もありうると考えるのである。
さらに、2009年度からは、パッケージチケット購入者には、そのほかの公演をアラカルトから選んでプラスできるシステムを動かし始める。20%OFFに設定している。別の言い方をすれば、パッケージチケットを購入した方には、もう1枚が20%OFFで購入できる権利が発生する、ということだ。むろん、パッケージに入っている公演をもう1枚買い足して、友人と見に来るプランを組み立ててもかまわない。ただ、このプラス・アラカルトは、分野を超えてクロスオーバーする鑑賞者を創出する狙いがある。可児のような中小都市では、演劇だけの愛好者、クラシックだけの愛好者、ではなくて、良いものなら何でも参加しようとする顧客層を形成しなければならせない。
また、むろん、ライフスタイルが変化していく今後は、パッケージ・チケットのキャンセルシステムも同時に動かさなければならない。劇場内で他のチケット購入やレストラン利用に使用できるバウチャーに交換できるか、ウェブ内で買い手を探せるページを立ち上げるか、そのいずれかになるだろうが、はじめからライフスタイルと日程の都合に合わせて、自分で公演をチョイスしてパッケージできるチケット設計も近々必要になるだろうと思っている。
顧客接点(Contact Point)の重要性と情報の共有。
ここでいま一度、ブランディング戦略に話を戻そう。列記したチケッティング・システムもまた、ブランディングの一環と私は位置づけている。顧客の利便性と受取価値に着目して設計をしていることが、それを物語っている。ここで問題となるのが「顧客接点」(Contact Point/CP)の重要性である。私が着任して最初に「どのように手を打てばよいだろうか」と思ったのが、チケット発券をするインフォメーション・デスクのスタッフが外部委託業者からの派遣であるという点だ。「顧客接点」という点では最重要視しなければならない部署なのだが、委託業者であることで情報の共有に困難性が伴う。当時は、「私つくる人」、「あなた売る人」の意識がアーラの事務所内にもあった。派遣祝員が館長ゼミ、課内会議などに加わることは派遣法の制限で難しい。それでも、お客さまともっとも密接に接触するスタッフと事務所内の職員との、事業の詳細、企画意図のみならず、劇場のミッション、設定されるゴールなども共有がなければ、顧客サービスに落ち度が出てくるのは到底避けられない。
着任してすぐに事務所職員、事務委託職員、警備、管理、清掃の委託業者からのスタッフ総勢80名に対して、4回に分けて、経営方針とミッション、目指すゴールの詳細を説明するミーティングを開いた。顧客志向と地域社会や市民との契約履行に対しての姿勢を各一時間半ほど割いて説明した。警備、管理、清掃のスタッフは、そのあたりを大掴みに把握していれば良いと思っているが、インフォメーション・デスク、貸館利用受付を含めた事務職員は、毎日毎刻が市民との接点にあり、サービスの品質が問われ、与えられた情報だけでは対応できない「応用問題」に即時に答えを出していかなければならない。それができることが、顧客接点でのブランディング戦略をスムースにする。
当たり前のように思えるかもしれないが、事業遂行や舞台の品質に意識を集中させるあまり、私たちは案外と「顧客接点」の重要性を見落としがちだ。「顧客接点」とは自分たちのことを知ってもらう機会であり、それはブランディングにつらなる重要な仕事(task)である。それだけに派遣法の制限が障壁となったが、懇話会のようなかたちでスタッフと話し、問題点や改善点を聞き取り、それを事務所内にフィードバックさせることをやるうちに、事務所内の総務課に設置した顧客コミュニケーション室や事業制作課のスタッフの動きにも変化が見えるようになった。インフォメーション・デスクのスタッフとのコミュニケーションがスムースになっていった。
派遣法の障壁は越えようもないが、その許容範囲内での改善努力は不断に続けるべきだと思う。お客さまから見たら正職員も契約職員も派遣職員もないのだから、当たり前といえば実に当たり前のことである。
CPとは課題を別にするが、事務所内のコミュニケーションと情報・課題の共有を推進するために、2009年度から事業運営に「ワークアウト」を導入する。ワークアウトとは、かつてGEのCEOであったジャック・ウェルチ氏が1988年に提起した概念であり、できる限り現場に近いところへ問題解決と業務改善をエンパワーメント(権限委譲)し、迅速かつ集中的に意思決定するためのプロセスのことを指している。可児市文化創造センターでは、事業事務が動き始める3か月から6か月前に、事業の主担当、副担当、当日のサポート員、舞台監督、マーケッターが集まり、まず事業のSWOT分析から始まり、事業の進行に従ってのワークショップを行って、課題、問題点を抽出し、その解決策を共有することから始める。問題解決のスピードをあげるために、館長、事務局長、事業制作課長のいずれかをオブザーバーとして臨席させて、その場で遅滞なく解決策とそのための環境改善を意思決定できるようにする。突発的な問題が生じたときには緊急のワークアウトを招集して解決に当たるが、そのときにも必要ならば館長、局長、課長を招集できる権限を持たす。このワークアウトによって、事前にあらゆる情報を共有して、全チーム的な対応を可能にすることを企図している。
さらに、そのワークアウトで事前にベスト・プラクティスの構想を基準として、事後評価までをするようにしている。それによって、技術集積を起こそうというものである。アーラでのワークアウトは、失敗を学習の機会にするための仕組みともいえるだろう。
マーケティングひとつとっても、かなり複雑なものとなってきており、事業にかかわる職員一人ひとりが戦略的思考を共有していないと仕事がスムースに進行しなくなっている。ワークアウトは、その対応策である。
さらに、そのワークアウトで事前にベスト・プラクティスの構想を基準として、事後評価までをするようにしている。それによって、技術集積を起こそうというものである。アーラでのワークアウトは、失敗を学習の機会にするための仕組みともいえるだろう。
マーケティングひとつとっても、かなり複雑なものとなってきており、事業にかかわる職員一人ひとりが戦略的思考を共有していないと仕事がスムースに進行しなくなっている。ワークアウトは、その対応策である。




