可児市文化創造センター(Kani public arts center ala)

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集客から創客へ☆回復の時代のアーツマーケティング

第四章 戦略的アーツマーケティングと顧客志向経営の実践-alaを事例として(1)

「己を知る」から始まる経営戦略の立案。

 充分に分かっているつもりでも、みずからの組織と置かれている状況のことは案外と承知していないものだ。突き放して自分の組織や活動を見てみる機会は、日常業務のなかでそうは多くはないだろう。SWOT分析をしてみると、見えなくなっていることが意外に多いことに気付く。可児市文化創造センターでは私は新参者なので、着任してまず組織や活動や職員の動き方や意識の隅々を冷静に観察することから始めた。良いところは目に付くし戦略化しやすいのだが、悪いところは相当に冷静に、さらには冷徹な観察眼で事象を対象化しないといけない。いちいち落胆したり、絶望的な気分になったりしていては解決の糸口を見失ってしまう。
 私は、過去四年間の事業分析、財務資料分析、赴任する前年に実施された「政策評価のための基礎調査」の分析をしたのちにSWOT分析を一人でやったのだが、本来は経営上層部、中間管理層、内勤職員(事務職)、外勤職員(営業職)、技術職員(舞台管理職)らが一堂に会して談論風発的にブレーンストーミングをする方が望ましいだろう。
最初に外部環境に関する「機会」と「脅威」を洗い出していく。政治や経済の情勢、法律・条例の改定なども充分に考慮する必要がある。指定管理者として、外部のあらゆる環境変化に無関心ではいられない。次いで内部環境に移る方がよいだろう。外部環境のほうが見えにくいし、組織や活動との関連性に気付きにくいからだ。いずれの場合にも、思ったことを羅列していくくらいの気分である。遠慮したり、躊躇したりするのは言うまでもなく禁物だ。相互批判もしてはいけない。組織や活動や人材を冷徹な眼差しで客観視して、何もかもを洗い出すことが肝要である。
 洗い出しを終えたら、上記の図のようにそれぞれの結果に対して、「強みで取り込むことの出来る事業機会とは何か」、「強みで脅威を回避できないか」、「弱みで事業機会を取りこぼさない為に何が必要か」、「脅威と弱みが合わさって最悪の事態を招かないためには何をなすべきか」、を検討していくことになる。ここでもひとつひとつ丹念に潰していくくらいの気持ちでよいだろう。全体の整合性はここでは意識することはない。
 そうして行くうちに、SWOT分析の結果がそれぞれに繋がっていて、関連している問題や課題であることが見えてくるだろう。ここまで来たら、既述した舞台芸術の産業特性、商品特性で吟味しながら、顧客志向の経営手法を組み立てるためのスクリーニングと戦略との整合性を吟味することになる。

まずはミッション・ステーツメント(使命)と戦略目標、それを実現するための戦術を具体的に設定する。これはのちにプロジェクト評価をする際に測定可能なものにするためである。それは抽象的でどのようにも理解できる目標ではなく、当該団体や劇場・ホールの関係者すべてが具体的なかたちで共有できるものでなければならない。最後に、それをいつまでに達成するのかを明示しなければならない。この計画を策定するときに、どのような視点からみずからの事業を俯瞰するかが求められてくる。つまり自らの事業をどのように定義するか(連載(第8回 「舞台芸術の事業定義をする/私たちは何を提供しているのか」参照)、である。むろん、「強み」をさらに強化してり、「弱み」を「強み」に劇的に変換する戦略もこの時点で検討されるべきである。
 オレゴン・シェイクスピア・フェスティバルの経営監督ポール・ニコルソンの次の言葉は、舞台芸術にとって決定的ともいえる「弱み」に対して、逃げることなく果敢に立ち向かって「強み」に変えて新しいビジネス・モデルを作ったことを物語っている。

私が強調したいのは、過去67年間余、私達はオレゴン・シェークスピア・フェスティバルを人々が毎年来たいと熱望する所にする為、一生懸命努力を重ねて来たと言う事です。私達は地理的に大きな都市部から遠隔地に在るという弱点を強みに変えました。


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