社会調査の専門家が、人々の態度と行動を変革するうえでマスコミュニケーションの効果には限界がある、と結論づけても、驚くに当たらない。
[フィリップ・コトラー]
シアター・マーケティングはすでに確立している、というのは誤解でしかない。確立しているのは、ブロードウェイやウエストエンドにおける興行街のマーケティングであり、地域劇場のマーケティングは、今後、マスマーケティングとは一線を画したリレーションシップ・マーケティングにシフトしなければならない。
[ケイト・サンダーソン(WYP)]
優秀なサービスとは何かを定義するのは顧客である。そして、彼らの定義に重点を置くのは、マネージメントの責務である。
フィリップ・コトラー&ジョアン・シェフ・バーンスタイン [『Standing Room Only』]
芸術音楽をマーケティングする際に我々は、聴衆を消費者と取り違えてはならない。彼らは我々の製品の共同製作者なのだ!すばらしい観客がいなかったら、我々の製品は粗末なものになってしまうだろう。
[音楽家であり教師であるジョン・スタインメッツ]
アーツマーケティングを展開しようとするとき、まず着手しなければならないのはみずからの団体や施設を微細に知ることであり、その手段としてSWOT分析することである。SWOT分析とは前述したように、内部環境と外部環境を「強み(strength)」、「弱み(weakness)」、「機会(opportunity)」、「脅威(treat)」に分析して、みずからの置かれているポジションを客観化したのちに、そのポジショニングに沿った事業設計と経営戦略を編み出す方法である。
この分析結果から経営戦略(strategic management)を導き出して、それとの整合性を吟味しながらマーケティング計画を組み立てなければならない。
SWOT分析の概要を一覧すると次のようになる。
1.強み(Strength)内部環境(自社経営資源)の強み。
2.弱み(Weakness)内部環境(自社経営資源)の弱み。
3.機会(Opportunity)外部環境(競合、顧客、マクロ環境)からの機会。
4.脅威(Threat)外部環境(競合、顧客、マクロ環境)からの脅威。
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好影響 |
悪影響 |
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外部環境 |
機会(O) |
脅威(T) |
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内部環境 |
強み(S) |
弱み(W) |
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機会 Opportunity |
脅威 Threat |
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強みStrength |
強みで取り込むことの出来る事業機会とは何か。 |
強みで脅威を回避できないか。 |
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弱みWeakness |
弱みで事業機会を取りこぼさない為に何が必要か。 |
脅威と弱みが合わさって最悪の事態を招かないためには。 |
私が可児市文化創造センターに館長兼劇場総監督として着任した折にSWOTをして、その後のミッションの設定や短期的及び中長期的経営戦略を計画する下地となった分析を例示しておこうと思う。これらは飽くまでも可児市文化創造センターにおけるSWOTであり、地域性、外部環境、内部環境によって大きく変化するものであり、例示であることを承知して、みずからの劇場・ホールや団体の分析をしてほしい。
■Strength
・開放的で居心地のよい空間
・高水準の劇場機構と環境
・ミッション・ステーツメントの存在
・市民の多様な利用ニーズに応えられる諸室の多さ
・WEBチケットによる商圏の拡大
・選択度と自由度の高いチケットシステム
・ 従来の公共文化施設にはない経営感覚⇒ex.顧客コミュニケーション室の設置
・技術スタッフの充実
・行政からの優秀な人材の継続的な派遣
・コストフリーの設備の充実
・alaクルーズ(ボランティア組織)の存在と連携
・地域拠点契約・地域提携契約による事業間の関連性の実現と創造事業の重点化
・レストランとの緊密な連携と料理のクォリティの高さ
・駐車場の広さ(470余台)
■Weakness
・外部からの刺激のなさ(内部で自己完結してしまう職場環境=地域文化施設に共通する課題)
・マーケティング意識とコスト意識の欠如(それでもやれていた温い経営環境)
・ブランディング意識の低さ(外部からの評価への訴求度が低い)
・チームとしての結束力の低さ(コミュニケーション不足)
・マネジメント能力の欠如
・各種委託費のコスト圧力
・職員にキャリアアップ意欲が希薄
・トップダウン型の意思決定
・顧客との接点担当部署の外部委託化( 経営意識共有の脆弱性)
■Opportunity
・舞台芸術の魅力発見事業等の地域文化振興補助制度の進捗
・市民の強い要望で設置された経緯
・他館と比較して潤沢な予算
・ランドマーク性の高さ(= 夜間照明等の効果)
・新公益法人法にともなう寄付金税制の改正
・他館と比較してステークホルダーに理解者が多い
・地域にリタイア期の富裕層が多く存在する
・公民館活動を通して文化に親しむ市民が多数存在する
・近隣に競合他館がない
・多数の外国人が居住している(= 新しい体験と出会う機会)
■Threat
・文化は贅沢、一部の愛好家のみに利するという根深い考え方
⇒予算の削減圧力、民間業者を指定してコストを削減しようとする圧力の存在
・指定管理者制度と新公益法人法の動向
・名古屋に関心が向いている地域性
・地方財政の陥っている困難性
・各種経済指標の悪化によるマインドの冷え込み
・地域に芸術愛好者の絶対数が少ない
・資金源の偏在性(指定管理受託収入への高依存性)
・アクセスの利便性の低さ(= 公共交通機関の脆弱性)
・アーチスト・イン・レジデンス向け滞在施設のアメニティの限界性
・地元企業との関係性の低さ
・地元パブリシティメディアの脆弱性




