芸術団体、劇場ホールに問われる経営感覚。
そのような意識と感情をもったロイヤルティの高い顧客を生み出すためには、経営者の資質と意識と見識が問われることになる。社会的な機関としてみずからの組織を規定して、公演活動を含めて戦略的な活動を編み出していく能力が必要とされる。したがって、アーツマネジメント(芸術経営)というのは、作品や舞台をマネジメントすることを意味するのではなく、社会的機関として芸術団体や文化施設を成立させ、社会的合意を形成して認知を獲得するための経営手法、と定義づけられるのである。ここでも重要となるのは「顧客志向」の経営感覚である。顧客とともに進化する経営である。いわばCo-operating(協働する)を基本方針としながら、Co-learning(共に学習する)とCo-evolution(共に進化する)を経営の仕組みの中にどのようにデザインするかが問われるのである。
私は、学校公演をしている東京演劇集団風の経営コンサルティングの際に、東南アジアの子供たちの学校をつくるプロジェクトに取り組んでいるNPOに売り上げの1%を寄付することを提案したことがある。確かその年の売り上げで試算すると150万円弱程度ではなかったかと記憶している。カンボジアでは120万円程度で学校は建設できる。NPOによれば200人以上の子供たちが教育の機会を得ることができるのだ。このコーズ・リレイテッド・マーケティングが、彼らの営業相手である中高校の教師の共感を呼ぶのは想像に難くない。つまり、彼らの舞台に接する子供たちが、観劇を通して東南アジアの子供たちと繋がるというデザインである。その成果は、その都度、彼らの舞台を観劇した子どもたちに報告する。そのマーケティング成果をふたたび日本の子供たちにフィードパックすることで、海を越えて「友人」を支える喜びを共有することになる。
私が東京演劇集団風への信頼をもつことになった契機は、彼らが巡演する各地の福祉作業所で知り合った障害者たちのアート展を六本木の画廊で主催したときの出来事によってである。その時に出会った千葉の盲学校の小学生のつくった「風」という題の作品からの衝撃が直接の契機となった。何でもない球体の素焼きの作品なのだが、所々に穴があけられていた。当初はどうしてこれが「風」なのか考えあぐねていた。たが、開けられている穴に耳を当てると確かに風の音が聞こえてきたのである。この作家にとっての風は音なのだろうと、作者の聴覚に思いを馳せた。そして、このような作品を世に出そうと経済的、人的な尽力をする集団の活動と深いところで共鳴した。まだ実現はしていないが、彼らの集団的な体質なら私の提案するコーズ・リレイテッド・マーケティングは実現できる、といまも思っている。私が彼らに「身内意識」をもったのも、実は彼らが意識せずに行っていた「コーズ・リレイテッド・マーケティング」がその契機であったのだ。
そして、コーズ・リレイテッド・マーケティングの成果は、これもまた関係づくりの作法にのっとったリレーションシップ形成であり、それが進化したロイヤルティであり、ブランディング活動でもある。
そして、コーズ・リレイテッド・マーケティングの成果は、これもまた関係づくりの作法にのっとったリレーションシップ形成であり、それが進化したロイヤルティであり、ブランディング活動でもある。




