これは、言うまでもなく健全なコミュニティ形成をミッションとする福祉政策に資する仕事である。コミュニティを「目的、関心、価値、感情などを共有する社会的空間に参加意識を持ち、自立的、主体的に社会的相互作業を行っている場または集団」と規定すると、その形成にアーツの機能を関与させる範囲は限りなく拡がる。Marketing through the artsは、地域社会の問題解決にアーツの多様な機能を通して対処する方策である。文化的な環境とは、そのような地域の健全な生活環境のことであり、そのように安全と安心が担保された都市環境であり、さらに言えば創造的感性を育む環境を整えることによって企業立地の要件を満たし、「創造都市環境」としての基盤整備がなされるのである。逆に考えれば、劇場・ホールの多様な活動が活発な地域は福祉的・創造的な環境が整い、企業の生産性を高度化する良好な経済的循環が起こると考えられているのだ。誤解が蔓延しているようだが、「創造都市」とは、そのように生産的で、創造的な循環の起こる環境が整っている地域のことを指すのであって、文化事業が数多く行われることとは決して同義ではないことを書き加えておく。
1997年に上梓した『芸術文化行政と地域社会』で私は、序章:「芸術支援」から「芸術による社会支援」へ、に次のよう書いた。
「芸術家への支援」は、彼らが育ってゆける創造環境および市場環境をつくる間接的な支援に限定されるべきで、公的資金が芸術家(団体)に直接支出される場合は、その事業が「芸術による社会支援」の政策パラダイムと整合性をもつケースに限られなければならない。
文化行政と経済的支援に対する考えはいまも変わらない。上記の政策スキームによって、ソーシャル・インクルージョン政策によった英国のように、文化芸術の社会的認知を飛躍的に拡大すると思うからだ。芸術や芸術家に対する認知が大きく前進すると考えるのだ。
また、芸術への直接支援については、事業収入とその他の支援収入と同額、あるいはあらかじめ設定した乗数の補助をすることを双務契約とするマッチング・グラントにシフトすることで、文化芸術の産業化を促すと私は考えている。この詳細については後述することにする。
また、芸術への直接支援については、事業収入とその他の支援収入と同額、あるいはあらかじめ設定した乗数の補助をすることを双務契約とするマッチング・グラントにシフトすることで、文化芸術の産業化を促すと私は考えている。この詳細については後述することにする。




