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衛紀生館長のおしゃべりシアター「町が元気になる処方箋」

衛紀生館長のおしゃべりシアター「町が元気になる処方箋」(4)

表現教育で学びのモチベーションを持続

衛館長:

ほんとにここ10年、新聞読むたびに心が痛むというよりも、何か心が冷や汗かいてくるんだよね。こんな状況だから劇場や文化が担わなければならないものがあるのに、やっぱりちょっと文化やっている人間はエリートだったり、劇場が行政主導だったりして、文化の社会的役割は完全に見えているのに、いくら大声出しても届かないところがあって。

平田氏:

結構それは高等教育でも問題になっていて、今僕は阪大にいますけれども東大でも阪大でも昔に比べて入りやすくなっているんですよね。少子化なのに定員は減らないですから。これが東京の中高一貫校だと、いまそういう表現教育をどんどん取り入れていて、だいたいそれを売り物として、大学に入ってからも学びのモチベーションが持続するような授業をやりますだとか生徒を募っているわけです。

例えば僕は筑波大駒場という超エリート校の先生方と一緒にモデル授業を開発しているんですけれども、たとえばある年は、中学三年生の夏休みに永山則夫死刑囚の小説を三冊読ませて、後期半年かけて永山則夫の評伝劇をつくるというような授業をしている。そういうエリートにこそ人の痛みを知ってもらわなければならないわけです。

そういう授業を沢山受けて東大に入った子たちと、地方の進学校出身で単位未履修で世界史さえ習っていないで受験に必要な科目しかやってこないで東大に来た子が机を並べると、特に女子の学生が多いんですけれども、文字通りのカルチャーショックをうけて不登校になってしまう、実際。これは2、3年前にAERAが特集を組みましたから読まれた方もいると思うんですけれども。それは18才の女の子にとってはショックですよね、あなた頭いいんだから、とにかく勉強して東大行きなさいと言われて、それが人生の目標みたいに思っていて、自分とは違ったそういう学生の話を聞いたら何か宇宙人に見えると言っていました。

要するにいま東京の中高一貫教育で来ている子たちはだいたい金持ちの家の子が多いから、ミュージカルを観たり、コンテンポラリーダンスを観たり、ちょっと留学していたりするから、ものすごい教養があるんですよね。それでも昔は一生懸命に図書館に通って勉強して地方の人も見返していたんですよ。ところが今は企業もそういうセンスのある人間から採用していくから逆転のチャンスがないんです。ということで、今唯一ペーパー試験でとっている公務員だけなんです。

だから結局そういうセンスがなくて勉強だけをしている人間が、東大出て、役人として故郷に戻ってきている。だからどんどん地方は疲弊していって、どんどん地方と東京で文化格差が出てきてしまうんです。でもさっき言ったように「文化の力」、要するに付加価値の力でしか、もう経済は回っていかないから、結局どんどん東京に収奪されてしまう。東京の広告代理店にあっけなくだまされますから。いくら公共事業でお金を落としても結局は吸い上げられちゃう。そういう構図なんです。だから地方こそ、子供のうちからシャワーのように高い水準の本物の芸術を観せる、聴かせることが一番大切なんです。

衛館長:

創造力だと思うんですよね。創造力と想像力、CreativityとImagination。たとえば一枚の絵を前にして一時間、何が描かれているか考えてみよう、ということを子供にやってみるというのも大事でしょう。また、人と出会うこと、人と話すことって絶対に想像力が必要なんですよ。相手を理解するには想像力と創造力が必要です。

そういう場所が、例えば劇場だったり、美術館だったりする。そういういい機会をつくるんですよね、文化施設は。塾に行けだけじゃなくて、アーラに行ってきなっていう風に言うことですね、アーラで色んな人に出会っておいでって。ワークショップ受けておいでって言ってですね、今日はこういうお年寄りと会って話ししたよ、きっとあの人こういう人だな、とかね。今度家に遊びに行くんだ、っていうようなことが起きてきたら凄く素敵ことだな。

西川氏:

ちょっとアンタどこに行ってきたの、って訊いて、「アーラ行ってきた」、「なんでアーラなんか行くの」(笑)って言われたりして。またアーラ行って来たの、良かったね、という逆のほうがいいよね。大阪府知事の橋本さんが、財政逼迫しているからといって文化だけではなくて、福祉から教育から全部含めて大鉈振るっている、これはもう逆だよね。


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