可児市文化創造センター(Kani public arts center ala)

音声読み上げ等による利用への配慮として、ナビゲーションを飛ばして本文に進みます

館長の部屋


HOME > 館長の部屋 > 連載 > 集客から創客へ☆回復の時代のアーツマーケティング:第二章 最新のアーツマーケティング/その理論的根拠。(2)

[ここから本文]

集客から創客へ☆回復の時代のアーツマーケティング

第二章 最新のアーツマーケティング/その理論的根拠。(2)

チケットを購入する顧客は「満足を与えます」という誓約を買っている。この現存しない無形の商品を購入するという不安を軽減するにはブランディングが効果的であることを述べる。また、生産と消費が同時に行われ、日々舞台成果が変わる商品特性を芸術経営の機会を生み出し、観客の受け取る価値を高める仕組みを構築する必要があることを述べる。

アーツマーケティングの視点から舞台芸術の商品特性を定義する。

舞台芸術が非物質的生産物であり、「無形性」を商品特性としていることはすでに述べた。それらに付随して、現存しない無形の商品を購入しなければならない、という顧客が負わなければならないリスクの片務性についても触れた。これは「認識の困難性」という商品特性のひとつで、これがアーツマーケティングを厄介なものにしている主要素といえる。
「見込み客はずばり『満足を与えます』という誓約を買っている」とセオドア・レビットは『無形性のマーケティング』の中で指摘している。別のところでは「誓約が踏みにじられる可能性は、有形財よりも無形財のほうが高い」(インタビュー『All Sharing Marketing Mind』)とも述べている。舞台芸術という無形財を提供する私たちのような者には耳の痛い言葉である。
「誓約を購入する」というこの「認識の困難性」と「不確実性」をどう克服して、顧客に「確信」を持ってもらうかがアーツマーケティングの最重要課題となる。なぜなら、すでに述べているように、認識の困難性によって損失を感じる可能性のあるものは極力回避しようとする外部環境が厳然としてあり、しかも行動経済学の実証研究で、人間はその損失を2倍から2.5倍に評価するのだから、当然ではあるが不確実性の高いものはなるべく購入を控えるのが通常の消費性向だからだ。

油谷遵の『マーケッティング・サイコロジー』では、商品にかんする情報が不完全である場合の購入条件の一つとして、「選択保証条件」が挙げられている。購入しようという「気持ちが生じたとき、必ず無意識のうちに<だけど買ってもいいかな><下手な買い物にならないかな>という反対の気持ちをもっている」。その「反対する気持ちを沈静化する働きを持つ条件」を「選択保証条件」と呼んでおり、「反対気分を抑制するものとして、マスコミへの露出度数の多さ、ブランド・ロイヤリティ、仲間うちでの購入(観劇)などがある」とある。

つまり、認識の困難性を克服する特効薬は、メディアの社会的信頼性を活用するかたちのパブリシティ・リリースとブランディング活動と影響力のある人物による口コミ(インフルエンサー・マーケティングやバズ・マーケティング)なのである。ブランドとは社会的信頼性によって顧客に確証と確信を与える記号であり、これによって「誓約」の信頼度を保証するしか、商品特性に見合った認識の困難性を克服する手立てはないのである。いずれにしても、「社会的信頼性」がキーワードとなる。レビットのいう、「無形性の有形化」、あるいは「誓約の有形化」である。

「無形性の有形化」、「誓約の有形化」には、チラシやポスターのデザイン・コンセプト、有名タレントの起用、事前関連企画の充実、チケットのパッケージ方法による不確実性の払拭など、その方法は、顧客の意識に強く働きかける機会を捉え、そのポジショニングにそって象徴的に行われるべきである。マスコミの信頼性を利用したパブリシティ・リリースもまた「誓約の有形化」と捉えることができる。また、食事やグッズを組み合わせたチケットの販売なども「誓約の有形化」のひとつである。むろん、芸術団体そのものや、劇場・ホール自体の社会的認知度を高めるブランディング活動に優る「誓約の有形化」はない。

パフォーミング・アーツのマーケターたちは、自分たちの提供品を有形化するために様々な方法をとることができる。比較的名前を知られていないパフォーマーを宣伝する場合、マーケターたちは、そのパフォーマーの受賞記録や過去のカーネギーホールでの公演経験など、具体的なシンボルを引用する。こうしたシンボルは、物的製品に対してブランドネームが働くのと同じような効果をもたらす。
(フィリップ・コトラー&ジョアン・シェフ・バーンスタイン『Standing Room Only』)

たとえば、その是非は別として、舞台成果には少々目をつぶってもテレビなどのマスコミでの知名度の高い俳優や歌手、タレントをキャスティングするのは、彼らの知名度を利用したブランディングであり、それによって「認識の困難性」を克服しようとする方策のひとつである。序章で触れた「情報の非対称性」を、そのようなキャスティングによっていくらかでも軽減しようと企図するのである。


Information


公益財団法人可児市文化芸術振興財団
〒509-0203 岐阜県可児市下恵土3433-139
TEL.0574-60-3311 FAX.0574-60-3312
Copyright (C) 2011 Kani City Arts Foundation. All Rights Reserved.

ロゴマーク