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衛紀生館長のおしゃべりシアター「町が元気になる処方箋」

衛紀生館長のおしゃべりシアター「町が元気になる処方箋」(3)

アーラの財産

衛館長:

やっぱり例えば子供が小学校にあがってから、ちょっと物が分かって小生意気なことを言うまで6年間かかるわけですよね。そのくらいのスパンで見ていただかないと劇場っていうのは育たない。文化というものが、なかなか地域の人にとって重要なものになっていかない。

芸術文化を鑑賞することが、平田さんが仰っていたように一番重要である必要がないんです。たまたまここに何かを観に来たり、聴きに来たりすることもあるけれども、ではなくてアーラの屋外にある「水と緑の広場」の芝生でお弁当を家族で食べに来たとしても、僕は劇場のお客さんだと思っています。

ここアーラには年およそ25万人のお客さんがくるわけですけれども、約20万人の方がこの劇場で見たり聴いたり、あるいは劇場やロフトを借りて何かをやったり、それを観に来たりする人です。ということは、劇場部分に入らない、ホール部分に入らないお客さんが年間およそ5万人いる。そうすると一日約150人と計算できるわけですけれども、これはうちにとっての財産であると思っています。アーラの財産だと。これをもっと推し進めたいわけです。

もうちょっと意図的に仕掛けて、いろんな人が集まるような場所にしたいなと思っていて。そのあたりはこれから私たちが考えなければ、あるいは仕掛けていかなければならないところだと思うのですが。さっきのアーチストが滞在する場所の登録制度なんていうのは、やっぱり今すぐにでも始めたいくらいですね。お宅であるいはご近所で空いている部屋があるだとか(笑)情報があったら教えて頂きたいんですけれども。

劇場の力

西川氏:

演劇の力というか、劇場の力にも繋がるんですけれども、あるいは演劇ないしは文化の力っていうのにも繋がると思うんだけれども、さっきグラスゴーの劇場がいろいろな人が集まることによって町を変えていったという話をしましたけれども。たまたまこれご覧になった方いるかもしれないけれど、何年か前にBSでアメリカの地域劇場のドキュメンタリーをやっていたんだけど、ヒスパニック系の子供たちが入ってかなり町が荒れちゃったんだよね。それで犯罪をおかすようになってしまって、警察がかなり強力に取り締まったんだけれども、結局仕事もないし行くところもないから町にあふれて、かなり危ない町になってしまった。一般の人たちも夜は出られなくなって。

その町に劇場があって、その時に、そこの芸術監督が考えたのか、プロデューサーが考えたのか分からないけど、これは演劇がなんとかすべきだと、劇場が何とかすべきだと考えたんです。何ができるかというときにプロデュースで「ウエストサイド物語」をやろうと考えたんだよね。ニューヨークから演出家だとかスタッフを呼んで、俳優はオーディションしたんです。

それでウエストサイドだからヒスパニック系の子供も白人系の子供も両方とも出るでしょ。それで無職で犯罪を犯してしまった少年たちにオーディションを受けるように募集したんです。彼らにはちゃんとギャランティを払うわけです。そのかわり厳しいプロの指導もするわけですよね。そして彼らは一生懸命働いて、もちろんいわゆるトッププロの仕事ではないけれども、彼らも意気に感じて、地域の人もじゃあ観に行こうと。

力で取り締まっても駄目

それで凄く面白かったのは、それは演出家かだったか芸術監督の発想なんだけれども、あのなかに署長の役があるんだよね。それをわざわざ本物の警察署長にやらせたんだよね(笑)。昨日まで取り締まっていた人が一緒に出てくるわけ。それを提案したら、参加していたヒスパニックの人たちが冗談じゃねえと、昨日まで俺たちを取り締まっていたトップが来るなんて嫌だと拒否したんだけれども、まぁ一緒に芝居づくりするだけだからいいじゃないかと。それで署長が偉いのが、マクドナルドのハンバーガーを大量に買ってきて、参加しますので宜しくと挨拶した(笑)。そしたら子供たちも、あいつもなかなかいい奴だなと(笑)。非常にうまい。

ところが近隣でその話題を聞きつけて是非見たいとツアーをしたんだよね。それで彼らもプロの俳優までいかないけれども、これだけ演劇が面白くて、自分たちも表現活動できてお金ももらえて、新しいつながりができて、町も、それ一本でではないけどそういうプロジェクトによって、つまり警察が取り締まってもうまくいかなかったのが演劇もしくは劇場の力によって随分よくなったっていうのがね、BSかなんかでやっていたけれども。これもね、地域における劇場だとか、演劇の力で出来たことですよね。力で取り締まっても駄目なんだよね。文化は力では出来ないからね、交流することが前提だからね。


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