エッセイ

違いが豊かさになる劇場という装置―多文化共生プロジェクト『East Gate』。

可児市文化創造センター館長兼劇場総監督 衛 紀生

違いが豊かさになる劇場という装置―多文化共生プロジェクト『East Gate』。

4ヵ月かけてワークショップで創りあげてきた多文化共生プロジェクトの『East Gate』が、アーラ祭に小劇場で二回公演として上演されました。最終的には、ブラジル人8人、中国人6人、日本人1人というチームでのパフォーマンスになりました。

アーラへの就任を依頼されたとき、可児市には在住外国人が多いと聞いて、劇場環境としては素晴らしいと思いました。なぜなら劇場は、さまざまな「違い」を豊かさに変える装置のようなものだからです。そこで多文化共生プロジェクトを立ち上げたわけです。その第一回はアーラ祭で上演することになりました。毎年少しずつ参加人数が増えて、いつかは大きな方の劇場で上演して、客席にもさまざまな文化の香りが漂う素敵なプロジェクトになればと祈っています。「小さく生んで、大きく育てる」。この日本のことわざのようになってほしいと、心から思っています。

 『本日はご来場ありがとうございました。皆さんは、将来大きく育つアーラの多文化共生プロジェクトの「はじめの目撃者」です。』

私がパンフレットに書いた原稿です。良い舞台になりました。出演者のそれぞれの日本に来た理由が語られ、最後に皆がパスポートを宙高く放り投げる。メッセージ性の高い舞台になりました。「国籍なんて関係ない」とも「私たちはひとつ」と言っているようにも感じました。アーラの多文化共生プロジェクトのポリシーがそのまま舞台化されたような『East Gate』でした。

ポルトガル語、英語、中国語、日本語で表示されたチラシを作りました。開演前の影アナも各国の言葉でアナウンスしました。これは厳然とした「違い」です。これを超えようとは思いません。この「違い」をたがいに認め合うところからこのプロジェクトは始まっています。互いの違いを認め合うことから豊かさが生まれると信じることから、このプロジェクトは動き始めているのです。

そして、国籍が違い、言葉が違い、世代が違い、個性が違う参加者がひとつのコミュニティとなりました。コミュニティというよりもファミリーと言った方がぴったりとする「絆」が出来あがったのです。

出演者だけではありません。このプロジェクトには二名の事業系の職員が貼りつきました。新人の職員は、参加者のお子さんのベビーシッターもしていました。参加者が心身を解放して、良いパフォーマンスが出来るような環境づくりにつとめていました。構成・演出をしてくださった田室寿見子さんをはじめ、多くの東京からのスタッフが彼らを支えてくれました。また、劇場に入ってからは、舞台、照明、音響の技術スタッフが力を発揮してくれました。本当に多くの人々によって創りあげられた『East Gate』でした。影アナをした職員は涙をあふれさせてのアナウンスだったそうです。日頃はただのむくつけき男である舞台監督も泣いていたと聞きました。

センチメントと言われても仕方ないのかもしれませんが、出演者が本当にひとつになったことを支えられたという達成感が彼らを心から感動させていたのではないでしょうか。なにしろ客席のお客さまも心を動かされて涙を浮かべていたのですから、スタッフなら大声で叫びたいほどの達成感は当然でしよう。

出演者は終演後の感想で「来年もやりたい」と口を揃えて言っていました。むろん、毎年このプロジェクトはやります。今回の15人の輪が年々大きくなっていくことを願っています。いつかは主劇場の舞台に乗せたいとも考えています。アーラ祭を代表する、可児らしい事業に育てていきたいと思いますし、今回の舞台と終演後の参加者のすがすがしい表情とスタッフとの一体感に接して、必ずやそうなっていくだろうと確信しました。

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