第六十三回 “ala”の指定管理者に選定されました/可児市文化創造センター

連載 館長 vs 局長	「公共劇場」へ舵を切る その理念と経営の実際

第六十三回 “ala”の指定管理者に選定されました

可児市文化創造センターala 事務局長 山口和己

11月も半ばを過ぎ、この“ala”においても敷地のまわりや里山風庭園の紅葉や落葉を見るにつけ、秋が深まってきたことを実感する季節となりました。
“宇宙(そら)のホール(主劇場)”では市内や近隣小中学校・高校の音楽会が、“虹のホール(小劇場)”では当財団主催の演劇公演、ロフトでは、市民参加の「オーケストラで踊ろう!」の稽古、水と緑の広場では「アーラ・イルミネーション」の準備が整い、ロビー等の机・椅子には勉強にいそしむ学生・生徒の姿、と静かな雰囲気の中にも活気が感じられるという、いつものアーラの時間が流れています。
こうしたこのアーラの雰囲気を心地よく感じる自分を思う時、この職場に自分が慣れたというべきか、本来このアーラが持つ雰囲気が自分を含めて“人”に心地良さを与えているのか、いずれにしても「今」を大切にしていきたいと思います。

さて、今回はこれまで、館長や歴代事務局長が本コーナーをはじめとして、幾度となく触れてきた「指定管理者制度」について書かせていただきたいと思います。実は、去る10月23日に指定管理者選定委員会が開かれ、私が部下とともに、我が財団の理念やこれまでの実績等についてプレゼンテーションを行ってきました。そして、その結果を踏まえて、我が財団が「可児市文化創造センター」の指定管理者候補団体として選定されたという通知を、11月10日付けで可児市からいただけました。指定管理の期間は、平成28年4月1日から平成33年3月31日までの5年間です。ただ、正式には、地方自治法第244条の2第6項の規定により、本年12月の可児市議会において議決されて初めて確定します。

私は、当財団が指定管理第2期目の最終年に事務局長として派遣されたわけで、そうした状況から、非常に責任を重く捉え、財団のこれまでの十分な実績には自信を持っていたものの、今回の選定通知をいただけるまでの間は、それなりに腐心をしてきました。
可児市では、昨年の3月に「指定管理者制度導入に関するガイドライン・マニュアル」が改定され、指定管理者の募集においては、「原則公募」、期間の設定については、市民サービスの継続性を踏まえて、「原則5年間」、ただし、例外として最大10年まで設定できることとなりました。
そして、「公募」を強く前面に掲げ、聖域は原則残さない方針が確認されてきました。

公募が原則であることは、指定管理者制度の目的からは理解できないわけではありませんが、経費節減という部分がともすれば先行し、市民サービスの向上という大切な部分がおざなりになってしまわないように、指定する側の市が、当文化創造センターの運営に関しての明確な目的や方針を持っているという大前提があってのことと考えます。この部分に曖昧さが残ったままで公募を行えば、最悪なケースとして、このアーラがたちまちいわゆる「ハコモノ」に成り下がってしまう危険性を感じます。
そこで私の就任以降の仕事としては、何としてもこれまでの受委託時代、2期の指定管理者時代の実績を丁寧に説明し、選定をしていただけるように努力するとともに、市における文化振興の方針の元となる条例整備を市に対して強く促していくということが中心であったと言えます。

折しもつい最近、県内のある市において、この指定管理者制度をめぐって市民と市が対立しているという事案が報道されました。
これは、2003年から市立保育園のうち「I保育園」の運営管理を愛知県で私立保育園を営む「社会福祉法人I会」に業務委託していた市は、2006年から導入した指定管理者制度により2期10年の間、同法人を指定管理者として指定してきました。この「社会福祉法人I会」は「I保育園」において、年齢の違う園児が交流する「異年齢保育」や一人ひとりを特別に扱う誕生日会、独自の献立による給食の提供など、他の市立保育園と異なる取り組みをしてきました。そして、こうした運営方法が多くの保護者の支持を得てきました。
ところが、同保育園の次期管理者の選定委員会が7月に行われ、結果、市の指針や計画に沿って保育を進める社会福祉協議会が最高点で選定され、「社会福祉法人I会」は次点で涙を呑みました。
納得できない保護者会は、対抗措置として、市に対して来春からの社協への保育園管理費の支払いの差し止めを求める住民監査請求を行い、また、保護者や住民の代表が、社会福祉協議会事務局に対して1,350人ほどの署名を持ち込み、次期指定管理者の辞退を申し入れる騒動に発展したというものです。
保護者側は、選定過程において、明らかに「社会福祉法人I会」を排除しようとしたとか、公平性にも問題があると主張しているとのことです。

このように、すでに確立しているはずの市における保育方針の中にあっても、このような問題が生じるのは、やはり、指定管理者制度の本来の趣旨と行政側が活用する際の目的に隔たりがあるからではないでしょうか。
他市の事を、事情もよくわからず批判するわけではなく、一つの実証例として考えるならば、指定管理者制度の最大の目的は、公の施設の管理及び運営において、民間事業者の能力やノウハウの活用によって、行政サービスを向上させることで、この点では、今年度までの「I保育園」は成功例といえるのではないでしょうか。
ただ、今回、他の市立保育園との並びで、一括して市の社会福祉協議会に管理運営を移すことは、行政サービスの更なる向上というより、経費節減を維持するとともに、行政サービスの公平性を重んじた結果で、このことが一部の市民にとって行政サービスの低下として捉えられてしまった、というところでしょうか。
また、考えようによっては、この「社会福祉法人I会」を指定管理者に選定した最初の段階で、明確な市の方針が示されないまま民間に委ねてしまい、今になって市の基準に合わなくなったとの理由で、本来の軌道に乗せようと考えられたのかもしれません。もし、そうであるとすれば、まさに前述した安易な公募における危惧が信憑性を帯びてくるのです。

劇場、音楽堂等を見てみるとどうでしょう。市町村合併等で複数の施設を持つ場合、または、県立市町村立の両方ある場合などもありますが、可児市では、劇場を持つ文化センターはこのアーラだけであり、その管理運営に問題を生じれば、全市的な問題となります。かといって、市内には比較できる管理運営の形態が存在しない。その運営管理を明確な目的や方針を持たず、単なる経費節減、効率運営の観点から公募を行った場合、応募できる企業・団体は全国規模に広がりを持っており、一つ選択を誤れば、中長期的に大きな損失を生み出すこととなるでしょう。しかも、そのことにすぐに気付けず、です。

今年度、平成27年度の可児市における指定管理者選定は、公募7件10施設、特命指定は可児市文化創造センターを含め2件で行われました。ある公募案件では、5社による競合の例もありました。
我が財団としては、12月の議決を経て、基本協定、年度協定へと事務が進みます。身を引き締めて取り組んでいかねばならないと思っています。

指定管理者制度には、期間が限られることから、専門性を要する分野での計画的な職員育成ができないことや、非正規雇用の多用による格差問題が生じること、また、中長期の展望に立った創意工夫が困難となるなど、課題は多く残されていると思いますが、「今」与えられた5年間余を財団職員一丸となってしっかり役割を果たしていきたいと思っています。












 

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