連載 館長 vs 局長	「公共劇場」へ舵を切る その理念と経営の実際

第五十七回 はじめまして、よろしくお願いします

可児市文化創造センターala 事務局長 山口和己

本年4月の定期人事異動により(公財)可児市文化芸術振興財団の事務局長として就任いたしました山口と申します。3月までは市企画経済部産業振興課の職員として、文字通り農・林・水産・商・工業の産業全般の振興業務に携わっていました。    
先代、先々代の事務局長が教育委員会事務局の職員を経由しての配属であったこと、その前の初代の事務局長が現在市の教育長であることを思うと、教育委員会事務局にも属したことのない私がここに配属されたことは、これまでの流れからはある意味異例なことだと思います。予想すらしていなかった配属に絶句した私の心情については、お察しいただければありがたいと思います。
しかし、何はともあれ、56回の連載を経て、今回57回目からこれを引き継ぐことになりましたので、歴代の事務局長同様、今後ともよろしくお願い申し上げます。

可児市では、平成24年度に組織機構改革を行い、文化に関する所管を教育委員会部局から市長部局に移し、そして今回、平成27年度に再度組織機構改革を行い、市役所での文化所管は、「市民部・人づくり課」に定着いたしました。
平成27年度は、「地方創生元年」とも言われ、超高齢社会、少子化社会の進展に対し、地方自治体自らの考えと力で乗り越え、活力を維持していくことが重要となります。そこで市は、若い世代から選ばれる魅力あるまちづくりの創造、「“住みごこち一番”可児」の実現に向けて、これまで取り組んできた各種の施策を更に発展・推進するため、組織機構を再編したというものです。
そして、4つの重点方針「高齢者の安気づくり」「子育て世代の安心づくり」「地域・経済の元気づくり」「まちの安全づくり」を一層進めるため、過去最大規模の予算を編成いたしました。
  当然、こうした方針の中には、“公共劇場”としてのアーラの貢献、責務も含んでおり、アーラにとっても今年度は正念場の年になると思っています。

可児市の平成27年度一般会計予算は、286億円となりました。このうち、歳入の48.7%、すなわち約半分が市税収入です。一方、歳出のうち民生費と土木費の合計だけで約50.1%を占めています。
私がこれまで担当してきた産業振興関係の予算は、労働費・農林水産費・商工費で観光分野も含めて約10億8千8百万円です。そして、この文化創造センター“アーラ”の維持、管理、運営に可児市が支出する予算は、4億5千万円の指定管理料をはじめとした約4億7千8百万円です。
この比較に何の意味があるのか疑問を持たれるかもしれませんが、私、というより行政に携わる人間は、貴重な税金をいかに効率よく使って最大のサービスを市民に提供できるかを追求してきましたし、求められてきました。市議会に対しても常に費用対効果を念頭に説明してきました。

文化・芸術に造詣の深い方や理解のある方たちにとっては、アーラへの投資は当然であり、現在の予算に疑問は持たれないと思いますが、そうではない方々にとっては、自身の必要とする分野にもっと予算を費やしてほしい、という声になって現れます。こうした話題は、歴代の事務局長方も触れてきておられるように、事務局長としては最初に立ち止まって考えてしまうことなのです。
しかし、アーラも館長をはじめ財団職員及び関係者各位の努力をもって年々実績を積み上げ、目にも見える成果を上げて来られたこともあり、議会をはじめ、市民の中にも理解が深まり、アーラの愛称が定着してきたことを感じます。

私が着任してまだ一ヵ月ですが、近所の方たちや知人には、「新聞でみたよ!アーラになったって!いいところだよね!」とか、「アーラへはよく行くよ!」とか「アーラはよく使わせてもらっているよ!」と声をかけられます。結構みんなアーラに関わっているんだな、と感じた場面でした。
私自身もアーラにはこれまで一市民としてまた職員として、利用する側の立場で何度か訪れていましたが、何となく高級感が漂う、かといってよそよそしさを感じさせないほっこりとした雰囲気を感じていました。
日常的な光景として、館内のロビーなどでは友達と一緒に勉強している学生さんたち、音楽を聴いている人、本を読んでいる人、パソコンに向かって情報を集めている人たちが、思い思いの目的で、同じ空間、同じ時を過ごしています。目を外に向けると、芝生広場では若いお母さん方が腰を下ろして語らい合い、そのまわりでは小さな子どもたちが駆け回り、季節によっては、噴水池に足を入れて涼をとる姿など。
そして、それらの間を行き来するスタッフも穏やかな表情を振りまいて温かい雰囲気を醸し出しています。

私はこれまで、上記のような癒しを感じる印象は持ちつつも、「アーラは、文化・芸術の殿堂なのだ」とか「レベルの高い芸術を目指す人たちが集まるところ」というある種一方的な先入観を持っていて、アーラの積極的な利用者にはなり得ていませんでした。
館長にお会いして最初の挨拶をさせていただいた中で、「公共劇場」が今後果たしていく役割としての社会的包摂、そしてそのためのアウトリーチへの積極的挑戦、そして究極の目標とする「文化的な社会」、「健全な社会」の一つの拠点になることを目指す、とのお話を伺い、自身のアーラに対する印象と文化・芸術に対する僅かな躊躇との間にある隙間のようなものを見つけたような気がしました。それと同時に、自分自身もこれからアーラとともにその隙間を埋めながら前に向かって進んでいけるような気概が湧いてきました。

とにかく私としては、まずは財団の全て、細かな部分までも理解し、館長が考える今後のアーラの経営計画の実現に寄与できるよう頑張っていきたいと思います。折しも、今年度一杯で当財団と可児市との間で交わされている指定管理の契約期間が満了になります。まずは、当財団に派遣されている以上、何としても次期指定管理についても担わせてもらえるよう、事務局長として最大限の努力をしなければならないと思っています。







 

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