連載 館長 vs 局長	「公共劇場」へ舵を切る その理念と経営の実際

第五十四回 2015年度予算を考える

可児市文化創造センターala 事務局長 山本和美

平成27年があけました。新しい年が始まりましたが我々公務員は、仕事の上では4月~翌年3月の年度で動きますので、第四コーナーといいますか、最終コーナーをまわっていよいよ最後の追込みにかかるという感覚です。(公財)可児市文化芸術振興財団(財団)も会計年度は4月から3月なので同様です。とはいってもアーラでも新春にふさわしい事業が当然プログラムされています。1月7日(水)には、ウィーン・フォルクスオーパー交響楽団によるニューイヤーコンサート2015が開催されました。このコンサートは東京のサントリーホールが中心となってウィーン・フォルクスオーパー交響楽団を日本に招聘し、元旦から14日にかけて全国10か所のツアーを行うなかでの開催です。アーラではすでに恒例となっていて、一年おきに同交響楽団の新春コンサートを開催しています。このコンサートのアーラ独自の関連企画として本公演開演2時間前からビフォアーパーティーも開催されました。交響楽団のコンサートマスターであるベッティーナ・グラディンガーさんのヴァイオリンと可児市在住のピアニスト黒木由香さんのピアノの演奏を楽しみながらレストラン「カテリーナ ディ アーラ」のコース料理に舌鼓を打つという優雅な時間を過ごしていただく企画です。約60人の方に参加いただきました。また、1月18日(日)には、「かに寄席 初席」が開催されました。これもアーラの新春恒例事業です。今回は、三遊亭円丈さん他4人の落語で初笑いしていただく趣向です。ロビーでは初席開場と同時に東濃実業高等学校筝曲部の皆さんの琴の演奏も楽しんでいただき新春気分を味わってもらいました。このように平成27年も着実にアーラの活動は始まっています。

今回は、年末にも少し触れましたが、財団の来年度2015年度予算について考えてみたいと思います。今年度2014年度予算で財団予算を大雑把に説明しますと収入が、622,716千円で支出も同額ということになります。収入でいえば可児市からの指定管理料が約73%を占めていて4億5千万円となっています。その他にアーラで開催する財団主催事業の入場料収入や施設貸出の利用料金、国などからの補助金が主な収入源となっています。一方主な支出は、財団職員の給料手当などの人件費に約1億5千万円、建物の管理などの委託料として約1億6千万円、各主催事業を実施するための委託料が約1億2千万円、光熱水費が約5千7百万円などとなっています。これらの予算を使ってアーラという市内最大級の公共施設の維持管理と鑑賞事業やまち元気プロジェクトを中心とした50余のソフト事業を実施しています。今は、2015年度予算編成の大詰めというところですが、指定管理料の最終的な額を市がどう判断してくれるかという段階になっています。昨年度並みまで戻してもらえるかどうか、1千万円の攻防が行われています。4億5千万円~6千万円のうちの1千万円は、割合で考えると2.17%~2.2%と非常に微々たる額ということになります。しかし、事業の予算で考えますと、今年度前半に行った新日本フィルハーモニー交響楽団「サマーコンサート2014」、東京ヴォードヴィルショー「その場しのぎの男たち」、「かに寄席 納涼」の3つの鑑賞事業を実施できる金額でもあります。けっして小さな額ではありません。

可児市文化創造センターの指定管理料は、予算ベースでいうと衛館長が就任した2007年度の5億5百万円から順次減額されてきています。2014度は、4億5千万円になっています。その反面で、決算ベースの経常費用は、7年間でみると、上昇基調にあって、2007年度の5億5千7百万円から、ここ3年間は6億円弱の状況が続いており、経常収益も黒字という状況ではあります。指定管理料の額が、減少して経常費用(予算規模)が増加している。このことは、端的に言うと指定管理料以外の財源を確保しているということになります。それが顕著に言えるのは補助金収入です。2007年度が決算ベースで740万円だったのが、2013年度は、約6千万円に膨れ上がっています。当然これはアーラの活動が国等の関係機関に認められた結果といえます。一番のポイントは、すでにご承知の方も多いと思いますが、アーラが文化庁「平成25年度劇場・音楽堂等活性化事業(特別支援施設)」に採択されたことです。音楽、演劇等の実演芸術の創造発信や、専門的人材の育成、普及啓発が支援の対象となっていて、5年間、毎年約4千7百万円前後の補助を受けることができます。補助率は、2分の1ですので当然補助対象となる事業に同額の自主財源の予算が必要となります。そんなこともあるので、2013年度ベースの予算を維持したいという財団側の事情もあり、なんとか4億6千万円に戻してほしいと考えています。

今回予算の編成に携わってみて感じるのは、予算執行で発生する繰越金対応の違いです。民間企業でいえば黒字部分は利益ということになりますが、市の予算では利益という考え方は当然ありません。前年度に発生した繰越金(予算未執行分)を繰越金として次年度歳入に収入科目を設けて歳入の一部とし、次年度予算で執行できる仕組みになっています。可児市の一般会計決算ベースで例年最終予算額の約5%前後が繰越金となっています。公益法人会計の損益ベースの予算書では繰越予算を表すことはできません。例年、市ほどの割合で繰越額はありませんが、繰越金ということでなく経常収益黒字分ということで、いわゆる内部留保という形で積み立てた形となっています。内部留保する目的は、将来の大型事業実施に備えた積みたて、開館12年を経過した中で施設の老朽化が始まっており、突発する緊急修繕に対応するため、または、急な収入欠損に対応するためでもあります。前述のとおり財団予算は、国等関係機関の補助金が大きな財源となっています。補助金収入を前提として予算組した事業も多くあります。そうした中で、予算確定後に補助金不採択となることもあり得えます。実際2014年度には自治総合センター関連の補助金が不採択となりました。そうした収入欠損のため、経常収益が赤字になった場合にそれを最終的に補てんする財源として必要不可欠であると考えています。

ただ、最終的にその額をどれほどにするかということが大きな命題になります。制度改正前の公益法人については、一事業年度における事業費、管理費及び当該法人が実施する事業に不可欠な固定資産取得費の合計額の30%程度以下とされていました。新制度では、遊休財産額としていて、その額は一年分の公益目的事業費相当額を保有の上限としています。その考え方は、仮に法人の収入源がなくなった場合にでも一年程度は公益目的事業が実施できるよう、特段の使途の定めがない財産を保有することを認めるというものです。100%可児市の出資である財団はどれほど遊休財産を保持するのが適当かという課題です。それともう一つ、昨年末に可児市の監査委員が出資団体の監査ということで財団の2013年度決算を中心とした監査を行った時に、“国からたくさん補助金をもらいながら、経常収益黒字で法人税を国に支払わなければならないというのは、何か流れとしておかしくないか。補助金をもらっているなら税として国に還元するのではなく市民にもっと還元するべきではないか”という指摘をいただきました。法制度上の流れではありますが、たしかに指摘のとおりです。

民間企業であれば、経常収益が黒字になることが究極の目的となりますが、公益法人はそうではありません。設立目的(財団の目的は“市民の生活文化、芸術文化の振興と教育普及、交流・発展を目指した諸事業を行うとともに、芸術文化を通じた児童・青少年の健全育成と市民福祉の向上を図り、もって可児市のまちづくりに寄与する”です) を達成するための事業を遂行することが最大の命題です。財団のこれまでの予算を調べてみると、市役所の予算と同様に収入と支出が均衡させてあります。非営利団体であるので黒字にもできないし、財政基盤が不健全であるという烙印を押されないよう赤字予算も作れない、結果として収支均衡の予算を編成すべきという考えが根底にあるので当然の結果かもしれません。公益法人の財務運用にも同じような考え方で、「収支相償」(公益目的事業の収入が、公益目的事業の費用を超えないこと)、「遊休財産額保有制限」、「公益目的事業比率」(毎事業年度における公益目的事業比率が50%以上となるように公益目的事業を行わなければならない)の3種類の財務基準を毎年度クリアしていくことが義務付けられています。公益法人会計はまだまだ理解できない部分が多々ありますが、こうしたいくつかの基準などの縛りがある中で、これまでどおりの常識的な予算組でなく、公益財団法人としてのメリットを最大限生かした方策を検討して、より市民の皆さんに還元できるように考えていきたいと思います。






 

このページの上部へ