第五十回 防火管理者について/可児市文化創造センター

連載 館長 vs 局長	「公共劇場」へ舵を切る その理念と経営の実際

第五十回 防火管理者について

可児市文化創造センターala 事務局長 山本和美

9月1日は、防災の日です。これは、1923年(大正12年)9月1日に関東大震災が発生した日であるとともに、暦の上では二百十日に当たり、台風が来襲する季節に入るというようなことから、政府、地方公共団体等関係諸機関をはじめ、広く国民が台風高潮、津波、地震等の災害についての認識を深め、 これに対処する心構えを準備するためにということで制定されたということです。毎年ですが、この時期に防災訓練を実施したというニュースを耳にします。可児市の場合は、ここ数年6月の第1日曜日に豪雨による水害を想定した水防訓練、9月の第1日曜日(今年は9月7日)に地震災害を想定した防災訓練を実施しています。そんな関係で9月分の今回は、アーラの防災について少し触れてみたいと思います。

先般私は、甲種の防火管理者再講習を受講してきました。防火管理者とは、アーラのように多数の人が利用する建物などの「火災による被害」を防止するため、防火管理に係る消防計画を作成し、防火管理上必要な業務(防火管理業務)を計画的に行う責任者をいいます。形としては、消防法に基づいて管理権限者(理事長)が有資格者である私を防火管理者に選任して防火管理業務を行わせるということになります。私は、20年ほど前に公民館と連絡所(地方自治法第155条に規定する出張所にあたるもの)が併設された施設に勤務したことがあります。その時に、この防火管理者の講習をうけてその資格は持っていましたが、その後は資格を要する部署や役職での勤務がなかったのでそのままになっていました。

今回アーラ勤務となって、アーラの防火管理者になるために再講習を受ける必要が生じてきました。前出の公民館は、当時年間来場者数が、アーラの8分の1ぐらいの4万人弱で平屋建ての施設でした。当時は、万が一火災が発生しても避難口は四方八方どこからでも逃げられるという感覚があったので不謹慎ではありますが、防火管理者といってもそれほど重責という感覚は持っておりませんでした。しかし、アーラのような1000席以上の劇場がある施設となると施設規模から考えただけで、万が一の場合の想定をすると身を引き締めざるを得ないという感覚です。実際に私が消防設備の点検をするというようなわけではないですが、防火管理の推進責任者としてその職務を遂行するとともに、アーラの職員、スタッフに指示をして火災発生を未然に防止し、万一火災が発生した場合には、その被害を最小限にとどめるための対策を講じないといけないという責任が課されています。

再講習では、過去における防火管理違反の事例についても紹介があって、違反があった場合の裁判での判決について説明がありました。Sデパート、ホテルN、スーパーN等々、防火管理体制の不備により死傷者がでた事例のほとんどで防火管理者は業務上過失致死傷罪となっていました。ある意味この説明を聞いただけでも、責任の重さに震え上がるという感じです。講習の最後に講師の消防士が自身が危機管理の講習を受けた時に習った4つの心得を披露されました。なるほどと納得できるものだったのでここに記載したいと思います。
(1)どこかで起きたことは、自分の身近でも必ず起きると覚悟して対策を考える。
(2)敵(リスク、危機)を知り、己(組織の実力)を知らば、百戦危うからず。
(3)最悪の事態を想定して準備し、空振りを覚悟で行動せよ
(4)普段やっていないことは、災害時には絶対できない
(3)はプロアクティブの原則というそうです。疑わしいときは行動する。空振りは許されるが見逃しはゆるされない。ということもプラスアルファーであるようです。台風接近時における事業実施可否の判断などは参考にする必要ありです。④は、日ごろの訓練の重要性を言っています。

アーラでは、消防法に基づいて作成した消防計画にしたがって年2回の避難訓練を実施しています。アーラが休みの日に、アーラに携わっている約70余人の職員、スタッフ(委託業務のスタッフ、レストランのスタッフやボランティアスタッフも含めて)が参加し、非常事態の想定をして消防署職員の指導を受けながら訓練を行います。私も6月に初めて体験しました。午前中にそれぞれ担当を変えて2回の避難訓練を行います。アーラは、交代勤務シフトなので全員がそろっているということがありません。そのため、いざという時に誰もがいろいろな担当ができるようにということで交代して実施しています。想定は、「地震発生後に、小劇場舞台上手で火災が発生。建物は一部損壊」というものです。私は1回目に小劇場エリアで車いすの観客の役、2回目に、事務室エリアの本部指揮役で訓練に参加しました。小劇場からの避難経路には階段部分があるので車いすの人は誰かに背負ってもらわないといけません。人に背負われて階段を下りるのは結構恐怖感を感じました。指揮役は、矢継ぎ早に支持を出していかなければなりません。大まかなシナリオはあるのですが、それでもうまく指示を出せませんでした。まさに「普段やってないことは、災害時には絶対できない。」ということを体感することができました。

この訓練は、毎回担当者がシナリオを作成して、その流れの中で実施してきています。ただ、実際の災害発生時にシナリオはありません。シナリオなしでの訓練も必要なのではという意見もあるようで、そうした訓練方法を担当者が研究しています。また、劇場に実際にお客様が入っている中で避難訓練を実施するという、避難訓練コンサートを開催する公共劇場も増えてきています。アーラでも近い将来に開催できるよう視察等に行って研究を進めています。より現実に近い状況で訓練を行うことで、災害時の避難状況をシュミレーションすることは、十分な備えをするという意味で重要であると考えています。

万が一可児市で大規模な災害が発生した場合、施設としてアーラは、2つの機能を持つことが予定されています。一つは、可児市災害ボランティアセンター、もう一つは可児警察署庁舎が被災して使えなくなった場合に警察署機能を移転させるというものです。アーラ規模の施設の消防計画は、どちらかというと火災への備えという意味合いが大きくなっています。大規模地震、風水害や事故など広範囲な危機を想定したマニュアルもこれから整備する必要があります。可児市の防災計画では、大規模災害が発災してから数時間後までを緊急初動期、発災から1日後までを災害応急第Ⅰ期、3日後までを災害応急第Ⅱ期、4日目以降を復旧・復興期と区分して各部署それぞれ何を行うか役割を定めています。発災後のアーラの施設機能も踏まえたうえで、アーラの職員がこうした各時期にどういった役割を遂行していくかを十分検討していく必要があります。

最後に、防火管理者の再講習でも話がありましたが、発災時にはまず何が何でも「自分の命と体を守る事が最優先である。」ということです。まず、自分の命があって、健全な身体があってこそ次に「観客」、「演者」、「関係者」などに対して「待機・避難・誘導」の指示などを直接、あるいは、アーラ職員やスタッフを通じて伝えられるからです。自身が傷つけば、治療もしくは救助救出を受ける身になります。命を失えばさらに元も子もありません。そのためにもまず、自身の身体を如何に安全確保するかが大切です。このことはすべてのアーラの職員、スタッフにも同じことが言えますので十分認識してもらいたいと思っています。



 

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