第四十九回 チケット制度について/可児市文化創造センター

連載 館長 vs 局長	「公共劇場」へ舵を切る その理念と経営の実際

第四十九回 チケット制度について

可児市文化創造センターala 事務局長 山本和美

すでに多くの方がご承知の通り、アーラのチケット制度は、ユニークなものとなっています。前々事務局長がこのコーナー第3回第4回で「顧客サービスのいろいろ」というタイトルで紹介しています。なかでも私が特にユニークだと思ったのは、DAN-DANチケットです。当時の紹介は「公演日の2週間前から15%割引、当日の午前0時からなんと50%割引。となります。」とありますが、現在は―1週間前から20%割引、当日の午前0時から50%割引―となっています。素人の私が持っていた考えとは全くちがう発想で価格設定されていました。

私はチケットの定価は、当日券の価格であって、前売券は割引価格であると思っていました。しかし、アーラのチケット制度では前売券が定価でDAN-DANチケットやその他の割引制度によるチケットは割引価格ということになります。前売券割引の理由は、通常の利用者は数十日前から、極端な場合は数か月前から公演開催日に標準をあわせて(この期間が長いほどお客様は当日都合がつかなくなるリスクが大きくなる。)都合をつけ、都合がつかなくなるリスクを納得して前売券を買うので、感謝の意味を込めて割引くのかなと思っていました。たとえば、「<前売券>一般 2,000円/高校生以下 1,000円  <当日券>一般 2,500円/高校生以下 1,200円」とイベントポスターに表記があるものが私の思うパターンです。しかし、前売券と当日券の価格差について「*当日券のご購入は各チケット500円割り増しとなります。」とイベントポスターに表示している劇場もあります。こちらの定価は前売券ということです。こうなるとどれが本来の価格なのかわからなくなります。

先日の視察対応での館長の説明によると、当日券ハーフプライスはおそらく日本唯一であると思う。この制度を当初考えたのは、これまでの長い経験から劇場の客席が満席に近いほうが、お客さんの鑑賞価値は絶対に上がるということが根本にあるとのことです。前もってチケットを購入してくださったお客様の鑑賞環境をよりよくするために、公演当日近くからチケットを割引して客席ができるだけ満席になるよう努力するというものです。舞台は演者と観客によってできるということだと思います。たしかに、がらがらの客席と満席の客席では演者の演じる意欲が全く同じであるということはありえないかもしれません。

当日券ハーフプライスでもう一つ思ったのは、誰でもやっぱり安いほうがいいから、当日に半額になるなら当日券を買うお客様がすごく増えるんじゃないかということです。館長の説明では、ハーフプライスのチケット購入者は、多くても6~7%ぐらいで大きな問題ではないと考えているとのことでした。私のように安いほうがいいと考える方もいれば、価格は高くても、早くいい席を確保したいと思われる方も大勢みえるようです。事務局としては、当日券が多く売れると、開演間際になってアーラ窓口がチケット発券を受けるお客様で混雑しないか。そのための遅れ客が発生しないか等の心配をしております。しかし、4月からのアーラの公演では、当日券の売上率は若干想定を上回っていますが、幸い心配するような混雑は発生していません。

DAN-DANチケット導入は、当初の狙い通りの結果が出ているとのことです。さらに、結果として、高齢者の方から「年金生活なのでなかなか正規の価格ではチケットを購入できないが、公演当日50%割引になるのでコンサートに行きやすくなった」という意見をいただくようになりました。実際に6月のサマーコンサートのアンケートの意見欄にそうした意見が数件ありました。館長が目指すアーラの運営方針「芸術の殿堂ではなく人々の様々な思い出が詰まっている人間の家を作る」「個人の年齢若しくは性別又は個人を取り巻く社会的状況等にかかわりなく、全ての人々が、潤いと誇りを感じることのできる心豊かな生活を実現するための場とする」ことにも寄与することになったようです。

チケットの販売に関しては、事務局サイドの課題もあります。チケット割引制度が多岐にわたっているため、その分、一つの公演ごとのチケットの種類が相当な数になります。チケット発売システムで種類分のチケットのフォーマットを作成し、校正等して準備を整えて発行という形になります。種類が多くなればなるほど発行ミスの可能性も高くなります。売上集計についても種類ごとに集計して最終合計を出します。販売担当の顧客コミュニケーション室の担当者には種類が多い分相当負担がかかります。簡単に解決できる問題ではありませんが、これからもお客様に納得して買ってもらえる環境を整えるためには、質を落とさないで効率化を進めるという難しい命題に立ち向かっていくしかありません。なお、アーラの主催共催事業のすべてが、当日ハーフプライスになるわけではありません。チケットの価格帯によっては前売当日とも価格が変わらないものもあります。また、伝統的な前売券割引で当日券が高い設定になっている事業もあります。こうしたチケットはある意味シンプルで手間がかからないという発売側のメリットはありますが・・・・

最近の公立劇場ホールのチケットの割引価格設定について調べてみると、これまでの伝統である前売券のほうが安い設定にしてあるものもありますが、前売券当日券とも同額設定のものが思った以上に多くあります。割引制度としては、アーラのビッグコミュニケーションチケットのようにグループ割等の名前での割引制度やパッケージチケットのようなセット券を割引価格で販売しているところもあります。また、大学生を中心として25歳ぐらいまでの若者に対して料金設定や割引を充実しているところも多くあります。もう一つ多いなと感じるのは、会員制度です。アーラの会員制度は、どちらかというとインターネットチケット購入のユーザー登録的意味合いが大きくて無料設定ですが、有料の会員制度を設けて、会員割引価格で一般のお客と差別化している劇場ホールがこれも思った以上に多くあるように感じました。有料会員の場合は、価格の差別化とともにチケット発売日にも差をつけているところが多くあります。さらに有料会員にも差別化を図って、サポート会員や特別会員の制度をつくり、企業個人からの寄付を集める手法を実行している劇場もあるようです。有料の会員制度が優良な顧客の囲い込みに寄与するかどうか、チケット制度全体のバランスを考慮しながら検証する必要があるかもしれません。また、有料会員制度が寄付を集める手法として有効かどうかについても検証の価値があると感じました。

最後に、チケットの購入に関してお客様からの意見があるのは、窓口での購入とインターネットでの購入について時間差をつけてほしいという要望です。高齢の方はパソコンを使えない方が多いので、窓口に来て購入するが、並んで待っているうちにインターネット購入でどんどんいい席がなくなってしまうことがある、なんとかならないかというものです。窓口購入の人が並んで待っているうちに完売になってしまったというケースも実際にあったようです。現在アーラでは、チケット発売日朝9時からインターネット販売と窓口販売が同時に始まり、電話予約が1日遅れの翌日から受付となっています。インターネットによる販売は、より多くの方にアーラに足を運んでいただけるようお客様の利便性と窓口での混雑を解消するために導入されたものだと聞いています。できるだけ多くのお客様に満足していただけるよう現在の方式が設定されているとは思いますが、これからもさらに多くのお客様にご満足いただけるような販売システムになるよう改善を継続していければと思います。


 

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