連載 館長 vs 局長	「公共劇場」へ舵を切る その理念と経営の実際

第四十八回 指定管理者制度について

可児市文化創造センターala 事務局長 山本和美

今回は、指定管理者制度について考えてみたいと思います。5月の中旬に県市町村研修センターで指定管理者制度の研修がありました。これまで、この制度については、聞きかじりで断片的な知識しかなかったので、今回の研修を受講して体系的に基本的部分を知ることができました。この制度については、このコーナーで、館長やこれまでの歴代事務局長が触れてきていますので、再度テーマに挙げるのはどうかとも考えましたが、私なりの考え方を少しでもお伝えできればと思います。 

“指定管理者とは何か”については前局長により、このコーナー第四十三回で詳細に説明されています。簡単に復習しますと、平成15年9月の地方自治法の一部改正により導入された制度です。それまで、市が設置する「公の施設」(公民館、文化施設、社会福祉施設、体育施設など)の管理は、市が直接行うか、市の出資法人などの公共的団体が行うかのいずれかに限定されていました。それをこの制度の導入により、民間事業者や各種法人など、幅広い団体の中から施設を管理する団体を指定し、施設の使用許可等の権限行使も含めて施設の管理運営を任せることができるようになりました。この制度導入の目的は、公の施設の管理について民間事業者の能力やノウハウを活用することで、多様化・複雑化する住民ニーズに的確に対応することが可能となり、【1】行政サービスの向上と【2】管理運営経費の削減を図る。ということになっています。ある意味、実に欲張った制度導入目的です。市では平成18年4月以降制度の導入を進め、平成26年4月現在、11の施設を指定管理者制度により管理運営しています。可児市文化創造センターは、平成18年度から公益財団法人可児市文化芸術振興財団が管理者に指定され1期5年間の指定期間で、現在2期目の途中ということになります。

制度が導入されて10年以上経過しています。可児市においても8年経過しています。この制度に対する評価は、特に文化施設の運営関係について館長、歴代事務局長ともに好意的ではありません。具体的には次のような問題を懸念しています。【1】短い指定期間では専門性がいる分野での計画的な職員育成ができない。【2】この制度は、雇用問題であり格差問題である。ワーキングプアの出現に加担するものでは。【3】経費削減ばかりが表に出て、本来それ以上に重要視されるべき市民サービスの向上について重きが置かれていない。【4】短い指定期間では、中長期の展望に立った創意工夫を行うことが困難。等々です。前述の研修会に参加していた県内各自治体の担当者の多くも「導入前と導入後に大きな違いがなかった。この制度導入によるメリットがよくわからない。」という感想を持っていました。ただ話をよく聞いてみると経費削減についての意見ばかりで、経費削減の可否が導入成功という結論へつながるようでした。私が知る限りでは、総じてこの制度への評判は良くないという状況です。肯定的な見解を見つけることが困難な状況です。特に、経費削減が強調されて、そのしわ寄せが人件費削減という形になっているように見受けられます。

指定管理者制度のマイナス要因が、アーラの現在の良好な運営状況を阻害しないよう、いっそのこと市の直営に戻したらどうかという意見を聞くことがあります。それは名案と言いたいところですが、そう簡単にできることでもないです。視点を変えて市役所の業務執行について状況を確認すると、職員数は、正職員が500余名そして非正規職員が450余名になっています。最近は、正職員をより創造的な業務に取り組ませるため、可能な事務事業はすべて見直して民間活力を導入していく方針だということです。今年7月から市民課窓口業務の一部(住民票交付業務など)を民間事業者に委託しています。公の施設のみならず市役所業務も同様の状況になりつつあります。財政事情が厳しい状況は、どこも同じであり、人件費抑制で経費削減を進める姿勢は、公の施設だけでなく市役所全体で進められています。さらに、直営にするには、財団スタッフを市職員とする必要がありますが、職員定数を増やすことは、非常に難しい状況にあるといえます。また、公務員には、人事異動があります。専門職で就職したとしても何年か経過すると当該部署を異動になります。専門性を維持するという意味では、これは阻害要因となる可能性が高いです。また、事務的な部分でも特に会計処理など、こちらの業界の常識に合わせた柔軟な運用が難しい面もあります。直営にするにはこうした問題をクリアする必要があります。

その他に何か方法はないかと考えたとき。たとえば、近隣地域または広域で特別地方公共団体である一部事務組合を設置して劇場・音楽堂の管理運営事務を共同処理していくというようことができると、直営方式が実現できるかもしれません。また、直営ではないですが劇場・音楽堂を管理運営するために自治体が出資している公益団体同士が合併して広域化し組織力を強化して、スキルやノウハウを高めていく方法等。どれも相当ハードルは高くて難しい思いつきです。結局、財政事情が厳しいということは全国的に言えることです。今後も改善されそうもない状況の中では、指定管理者制度が成立してきた経緯から考えると、この制度自体をなくして、かつての管理運営が直営を基本とした体制に戻ることはまずありえないと考えられます。そうなると指定管理者制度をいかにうまく使いこなしていくかという方向に持っていくしかありません。この制度の一番の問題は、市民サービスの向上という部分が経費削減の陰に隠れてしまっていることだと思います。この部分を前面に出していくには指定管理を出す側に当該施設の運営に関しての明確な目的・方針を出してもらう必要があります。指定する側の方針が曖昧なままで公募した管理者を指定すると結局その施設は、箱物という域から脱することができないのではないでしょうか。アーラの場合、建設計画の段階から市民参加という手法を取り入れて、市民の皆さんとともに成長してきたという経緯があります。これを根底から打ち崩すような方向性が出される可能性は小さいかもしれません。しかし、指定管理者業務の仕様書に市としての方針を仔細に記載してもらいたいと思います。指定を受ける側からはなかなか言えないことではありますが・・・。仮に公募による選定が行われても、細かな行政サービス向上の仕様が盛り込まれていれば、まともでない民間業者を排除することは可能だと思います。

指定管理者制度の中での非正規雇用の問題については、館長によりますと劇場・音楽堂関係の状況は相当にひどい状況になっているようです。ただ、この問題は、指定管理者制度の中だけで解決できる問題ではありません。支援制度、法律、セーフティーネットあらゆる分野の改善を進めていく必要があるのではないでしょうか。一度非正規雇用体制が出来上がってしまうと仮に指定管理者制度がなくなっても簡単に元に戻ることはないと思われます。もう一つ問題は、指定管理期間の問題です。傾向としては段々長めになってきているようですが、期間終了ごとに指定替えが行われるために、非正規雇用の問題や3年・5年で雇止めする者への人材育成の難しさ、長期計画のもとに中長期の展望に立った創意工夫や運営を行うことの難しさ等が挙げられています。管理する公の施設の種類・目的にもよって期間の長さが変わるのは当然ですが、劇場・音楽堂、特にアーラのように文化拠点としてまちづくりに寄与していこうとする施設であるならもっと長期間の管理期間であってもいいと思います。たとえば、アーラは、平成25年に文化庁から特別支援施設に採択されました。この採択は、公益財団法人可児市文化芸術振興財団が行うアーラの運営実績に対して行われました。期間は、平成25年から平成29年までの5年間です。しかし、財団の2期目の指定管理期間は、平成27年度までです。仮に次回の指定管理を財団が受けることができなかったらこの採択はどうなってしまうのでしょう。そうした矛盾が浮かび上がります。やはり5年間は短すぎるということではないでしょうか。

平成22年に総務省から出た『指定管理者制度の運用について』では、「指定管理者制度については、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときに活用できる制度であり、個々の施設に対し、指定管理者制度を導入するかしないかを含め、幅広く地方公共団体の自主性に委ねる制度となっていること。」とされています。指定期間の縛りはありません。地方自治体の自主性で決定することができるのです。極端な話、15年、20年の指定期間があってもいいということになります。各地方公共団体・指定する側がどう判断するかが今後のこの制度の行方を決めていくことになります。そうした中、可児市の指定管理者制度導入に関するガイドライン・マニュアルが4月に改訂されました。指定管理期間の設定については、市民サービスの継続性を踏まえ原則5年とし、例外として最大10年まで設定できることとされました。5年を超える指定管理期間を設定できる条件は、市の重点方針に深く関連する施設であり、指定管理事業が施設の管理運営のみならず、重点方針に関連する施設管理運営以外の事業も併せて委任することを前提とするということになりました。財団は、この条件をクリアできる可能性があります。来年度の指定期間満了に伴う次期指定管理者の指定時には、まず引き続き指定管理者となること、さらには指定期間10年になるよう、指定を出す側から指定を受ける側に出向しているという自分の立ち位置を最大限生かして働きかけていきたいと思います。

 

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