連載 館長 vs 局長	「公共劇場」へ舵を切る その理念と経営の実際

第四十六回 一ヶ月が過ぎて

可児市文化創造センターala 事務局長 山本和美

異動して一ヶ月余り経過しました。今回は、あいさつについてと視察への対応についてお話したいと思います。先日、平成26年度アーラ・ユースシアター演ゲキッズクラブの開講式に出席しました。このユースシアターは、演劇を通して子どもたちの健全育成をめざすとともに、将来の鑑賞者や創造者を育てることをめざして始まったもので今年が5年目になるとのことです。参加する子どもたちも継続者が多くを占めています。この日は、館長の代理で挨拶せよということで、最初に紹介されて挨拶をしました。夜の7時から開始の開講式なので、私としては当然「皆さんこんばんは」ではじめました。子ども達も「こんばんは」と返してくれました。2番目に挨拶した講師の先生の挨拶は「皆さん、おはようございます」でした。子ども達も「おはようございます。」と返しています。「こんばんは」よりも元気よくです。このとき痛切に感じました。ここアーラでは挨拶はいつでも「おはようございます」なんだと。財団職員の勤務シフトは、A8:30~17:50 B10:30~19:15 C13:45~22:30の3つあって、朝8時30分から夜10時30分までをカバーしています。財団の事務室でも常に挨拶は「おはようございます」を使っています。長時間の稼働をカバーする勤務の中で、昼夜を問わずにスタッフが入れ替わるので挨拶は「おはようございます」なのかなとかってに思っていました。しかし、アーラの講座に通う子ども達も「おはようございます」を使っているので、「おはようございます」を使うことについて、もう少しちゃんとした意味があるのかなと思い調べてみました。

いろんな説があるようです。①「おはよう」「こんには」「こんばんは」のうち、「ございます」と付けて敬語にできるのが「おはよう」だけなので、目上の方にもできる挨拶だからという説。②「私よりもはやく出勤して働かれているようで、お疲れ様でございます」という相手をねぎらう気持ちから生まれたという説。③始まるその時間からが一日のスタートと考え、今日の仕事をこれから始めます。よろしくお願いしますということで「おはよう」となったという説。などがあるようです。また、こうした習慣がある業界は、芸能界や放送業界のほかに警備関係、ビルメンテナンス関係、看護師さんなどの医療関係など24時間稼働している業界や、アーラのように早番遅番がある業界の多くは、「おはようございます」を使うようです。

諸説の中で有力だと言われているのが、歌舞伎界で使われているあいさつが波及したという説です。歌舞伎の役者さんは、化粧とか衣装の準備に時間がかかるため、芝居が始まる時刻より、かなり早めに楽屋入したそうです。その際、芝居小屋で働いている裏方さんたちが役者さんたちに対して、いつも「お早うございますね」と声を掛けたそうです。これは 『出番までまだ時間があるのに、お早いお着きですね。ご苦労様です。』という意味です。従って、元々この言葉には 「挨拶」 というよりも、むしろ相手を大切にする「思いやり」の気持ちが強く含まれているようです。そして、この「お早うございますね」が、いつしか「おはようございます」に変化したと言われているということです。ということで「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」のうち、「ございます」と付けて敬語にできるのが「おはようございます」だけであり、特に 、相手のことを大切に思う気持ちが込められているということです。こういう起源があると思うと納得して使うことができるような気がします。ただし、慣れすぎてしまうと職場の外でも使ってしまいそうですが、昼夜に「おはようございます」といわれると外部の人にとってはやはり大きな違和感があると思います。上手に使い分けていきたいものです。

さて、もう一つの話題です。4月に2件の視察を受け入れました。アーラではここ5年間の平均で年間約40件前後、約350人の視察を受け入れています。アーラの運営全般について、アーラまち元気プロジェクトについて、建設の経緯・設計のコンセプトについてや施設の見学等々を調査目的に視察にみえます。対応としては、館長による運営方針の説明を中心として担当者が施設案内を行っています。今回の視察は、館長からアーラの運営方針やアーラへの思いについて視察者の皆さんとある意味同じ立場で話を聞くことができたので、新米事務局長にとっては非常に勉強になりました。

館長からは、就任以来のアーラ運営の基本は、「芸術の殿堂ではなく人々の様々な思い出が詰まっている人間の家を作ろうということであり、市民がいやすい場所をつくることです。演劇や音楽の愛好家にとって大事な場所になるより先に市民にとって大事な場所にするということです。」と事例を交えて説明がありました。 その後に、館内施設を案内していきます。主劇場に案内して、真っ暗な劇場がぱっと照明に照らされた時に各視察者から「ああー」「すばらしい」という感嘆の声が聞かれました。まだまだ新米ではありますが、なんども見ている劇場ですので、私にとってはあたりまえの光景ではありますが、初めてご覧になる方にとっては相当なインパクトがあるようです。視察者のお一人は「いくつかの劇場を視察で回ってきましたが、最高にすばらしいです。」とおっしゃっていました。他の著名な劇場に行ったことのない私は、この驚きの姿を見て、逆にアーラのすごさを認識しました。

今回の視察時に配付した資料の中に建設経緯や設計コンセプト等に関連して「(仮称)可児市文化センター建設基本構想・基本計画」という冊子がありました。平成9年の12月に作成されたものです。私も今回はじめて読みましたが、その3ページには 文化センターの必要性という見出しの文章があって、その最後の段落に「文化センターを作ることは『手段』であり『目的』ではありません。可児市に人々がいつまでも住み続けたいと願い、そこに住んでいることが誇りに思える、そのような人間らしい感性豊かな地域社会をつくるために、市民が協働して文化を創造することこそが重要です。市民がゆとりやうるおいを楽しみながら、多様で自由な活動を繰り広げることができる文化の拠点として文化センターを建設し、市民の文化創造エネルギーを「まち」全体で高めていくことを目指します。」と書いてあります。可児市文化創造センターは、こうした目指す目的を実現するための手段として産声を上げたようです。策定されてから16年経った今、アーラの姿を見ると、この理念は着々と実現し、さらに大きく発展しつつあるように感じられます。(異動して1カ月の感想です)今回の視察対応に同席することで多くの知識を得ることができました。5月の連休明けから平成26年度のアーラの事業が本格的に動き出します。新米事務局長ではありますが、アーラのさらなる飛躍になんとか寄与していきたいと思います。

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